第53話 はんぶんこ2
53話 はんぶんこ2
パフェを注文し、待つこと数分。
「お待たせ致しました。こちら、桃の果実パフェになります」
「わぁ! 見ろ晴翔、めっちゃ美味そう!!」
「だな。しかも想像してたより結構でかい、し……」
ででどんっ、と値段の割にビッグサイズで現れたそれを見つめていると、俺の脳内に電流が走った。
とても美味しそうなパフェだ。白いクリームとピンク色のシロップ、そして満天の桃。きっと中にもゴロゴロと入っているのだろうが、なんとパフェの上部には小さな桃を半分に切ってそのまま乗せたのであろう果実の塊まで。本当、凄いな。
(凄く……お尻だな……)
いや、これは俺は悪くないと思うんだよな。桃が悪いだろ、流石に。
半分に切った桃をそのまま使ってるもんだから、真ん中にある割れ目とそれを境界線として左右に広がる丸みがなんとも芸術的にお尻を彫刻している。なんだよ、最高か? もはやこれお尻パフェだろ。かぶりつくどころかしゃぶりつくぞ?
「……お前写真撮るの禁止な」
「へ、変なことなんて考えてないですけど。ええ、決して」
「じゃあ上の桃、最初に一口で食っていいか?」
「はぁ!? おま、こんな芸術品をーーーーあっ」
「ほんとブレないな、そういうところ」
あっれぇ? さっきまで砂糖オーラドバドバでラブコメヒロインの顔してたくせに、気づけば呆れ顔になってるんですけど。おかしいな、さっきまでは直視できなかったのに、今の表情は見覚えがありすぎてもはや安心するまである。あ、決して俺にそういう女子からドン引きされた顔が好きとかいう性癖があるわけではなく。
「ま、別にいいけどさ。はいチーズ」
「へ? ちょ、いきなり?」
「ド変態が桃パフェに発情してる写真完成〜。夜瑠と大和のいるグループに送ってやろっと」
「ばか、やめろ!? ただでさえいつもなじられまくってるのに!!」
「へへ、嘘だよ。この写真は私だけのもんだからな」
カチャカチャ、とパフェスプーンを取り出しながら。葵はどこか嬉しそうに言う。
桃パフェに発情してるて。凄いレッテルを貼られてしまったもんだな……いやまあ、あれをお尻に見立ててしまった時点で発情と言い切れなくもないのかもしれないけども。
「……って、あれ? 葵さん? 俺の分のスプーンは取ってくれないんですか?」
「ん? いらないだろ」
「いりますけど……? あ、おま。何隠してんだよ」
「桃に発情するド変態にスプーンはあげませーん」
な、なんだと。スプーン無しでどうやって食えと。まさか俺だけ口か? 多分凄い絵面になるうえ周りからも葵まで変な目で見られると思うから絶対にやめた方がいいと思うけどな。いやマジで。
「パフェ、欲しいか?」
「もちろん。え、まさかここまで来てお預け?」
「ん〜や。スプーンはあげないけどいっぱい食べていいぞ。ただしーーーー」
「? っっつ!?」
「はい、あ〜んっ♡」
ニヤり、と小悪魔のような表情を浮かべた葵は、細長いパフェスプーンの先端でパフェを掬い、俺の前に差し出す。
「スプーンもはんぶんこ、な」
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