第12話 親友への電話

12話 親友への電話



「もしもし?」


『夜瑠! 聞いてくれよ夜瑠!! 晴翔が! 晴翔がァァッッ!!』


「おお、落ち着いて落ち着いてぇ。どしたぁ……?」


 午後三時を少し回った頃。私は大和とショッピングモールに来ていた。


 ちょうど欲しいコスメと見に行きたい服屋さんがあったので、荷物持ち係(ご飯を奢ったし上手くその口実も作れたから)として大和を連れ回していたんだけど。フードコートで休憩がてらアイスを食べていたところに葵から電話が。


「白坂さんか?」


「そ。晴翔との件の報告だと思う」


 まあこの声色を聞けばどうなったのか大方予想はつくけども。一応聞いてあげるか。


 私は大和に離席すると合図してその場を離れると、女子トイレ前のベンチに腰掛ける。大和が聞いていると分かれば話しにくくなる内容だろうから、私からの親友としての配慮だ。


『告白、後々やり直させて欲しいって……! 私の全てを好きになってからもう一度ってよ!?』


「はえ〜、よかったじゃん。じゃああとはお尻以外の部分を好きになってもらうだけってわけね」


 それ、マイナスがゼロに戻っただけな気もするけど。まあ本人が嬉しそうならいっか。


 どの道遠回りにはなっちゃったけど晴翔が葵のことを好きになるのなんてそう時間はかからない気がするし。むしろ私や大和目線から見ればなんで今までそうなるなかったのかが不思議なくらいで。全く、幼なじみというのはこれだから……。


『へへ、えへへへっ。どおしよ夜瑠、ニヤニヤが止まんねぇ! 晴翔がお尻以外のところもちゃんと見てくれるって宣言してくれたんだ……私のことを、一人の女として!!』


「ったく、相変わらず晴翔のことになると乙女だなぁ。あのド変態君のどこがそんなにいいんだか」


『夜瑠には分かんねぇだろうなぁ〜。アイツの良さを一番分かってるのは幼なじみである私だけ。そう! 昔からずっと一緒だった私だけなんだからよ!!』


「はいはい。そうですか〜」


 テンション高いなぁ。晴翔をフッちゃったこと相当後悔してたみたいだし、良かった良かった。セッティングしてあげた甲斐があったってものだ。……まあ私は正直邪魔が入らないようにしてあげただけで、ほとんど当人たちで解決してしまったのだけれど。


「ま、仲直りできたのならひとまず安心だよ。ここからはひたすらアタックするだけなんでしょ?」


『アタッ!? お、おぅ。もちろん……わ、私の魅力を分からせて悩殺してやる!!』


 あ、駄目だこの子。なんか凄く嫌な予感がする。こう、空回りしそうというか。気合の入れる場所を間違えそうというか。


 ……まあ、それはそれで多分見ていて面白いと思うしいっか。本当に困りそうな時は助けてあげればいいし。


「じゃあ一旦切るね〜。今外にいるから。また明日〜」


『お〜う!! 夜瑠も頑張るんだぞ!!』


「へ? 私……?」


『赤松のことだよっ! 夜瑠は私と違って女の子として最高に可愛いんだからな!』


「は、はぁっ!? ちょ、待っ!! 私と大和は別にそんなんじゃ────っ!!」


 ツー、ツーっ。


 電話が途切れる。葵め、一方的に電話を切るなんて。


 何が頑張るんだぞ、だ。私は本当に違う。別に葵と違って恋焦がれるとかそういうの、全く……。


「何勘違いしてんだか。ったく……」


 ないない。私は恋愛とかそういうの、全然興味ないし。こういうのは見る専なんだから。


「は〜ぁ。って、大和待たせちゃってる。戻ろ」




 私は、葵と晴翔の恋愛話を聞いてニヤニヤ助言をするくらいがちょうどいいし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る