第8話 バーで働く


その日、閉店まで私はこの店にいた。


この店のお客さんは静かだった。騒ぐような人はいない。

大人の店だったので安心した。


閉店後、マスターはロッカーに案内してくれた。

制服が2着あったが男物だったので、私には無理だった。


「朋美ちゃん、黒いパンツと白いシャツ何か持ってる?」


「はい。持っています。」


「ならそれでお願い。エプロンはあるから。」


良かった、買わなくて済んだ。


それと、もう一人の従業員はバーテンダーの櫻井さくらい君。無口なメガネの男性・・・

26歳だという。

ずっと語らずカウンターの中でカクテルやその他のお酒を作っていた人だ。

私は挨拶をした。


「嶋村 朋美です。明日からお世話になりますので、よろしくお願いします。」


「櫻井です。」


それだけ言ってペコッと頭を下げた。素っ気ない人だった。



次の日、17:00に私はお店に着いた。

ロッカー室で着替えを済ませて、マスターと仕事内容を打ち合わせした。


「お店の開店は18:00からなので、その前に17:30からは店内の掃除。開店してからは、つまみとかの準備と洗い物。閉店は23:30だけど、朋美ちゃんは22:30で上がっていいよ。」


「マスター、私閉店までいてもいいですけど・・・」


「ホント、助かる~最後の片づけあるから店出るのは24:00になるけどいい? 」


「家近いから大丈夫です。ここから5分くらいだから。」


家の場所を説明した。


「僕の家に帰る途中だから、毎日送るよ。」


「大丈夫ですよ。」


「だめだよ、若い女の子をそんな時間に一人で歩かせるわけにはいかない。だから送っていくよ。それが条件。どう? いい? 」


「わかりました。お願いします。」


マスターはもう50代位。とくに心配することないよね。


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