第5話 タダより高いものはない

「よし、君に1000万円を預けるよ。」


「ありがとうございます。必ず成功してみせます。」


「じゃあ、まだサービスも何もないから、企業価値を2000万円と見積もって、50%の株式をもらうね。

初任給で2000万円の年収を稼ぐ人はいないと思うから、キミは逸材だよ。」


・・・・・・


山口さんにショートメッセージを送ると、すぐに返信がきて、翌週には会うことができた。

「Chat GPTを活用した、カウンセリング・サービス」というメンタルヘルスをテーマにした新サービスを、慣れないパワーポイントを使って説明し、我ながら頑張ったと思う。だからこそ、1000万円出資してもらえると言われ、自分の夢が肯定されたことへの喜びからか、夢ごこちになった。


「ありがとうございます!色々準備して、まだご連絡します。」


まだ法人も立ち上げていないし、サービスもない。

でも、1000万円の出資が決まった。

1000万円という、自分の人生において見たこともない金額に、身体が震える。


あまりの嬉しさに、同郷の仲間のちょっとした裏切りも、もはや過去のもの、という気持ちになる。


・・・・・・


次の日意気揚々と起業家サークルに向かう。

まだ契約書を結んだわけでもないから、大きな声で話すべきではないと思いながらも、あまりの嬉しさに、誰かに話したい気持ちになる。


前回のこともあるから、同期に話すのは得策ではない。


だから、すでに起業しているセンパイに相談するていで、自慢したいという気持ちが0だったわけではない。


「それ、だまされてるんじゃない?いまどき、1000万円で50%株式を渡すのは詐欺に近いよ。」







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