第2話 甘い夜と甘い話

「オレ、R社の谷社長とこの間飲んでさ。改めて確信したんだけど、次に伸びる分野はGenerative AIだと思う」


私にとって雲の上のような存在の谷社長と直接話すことができる山口さんは、東京に出てきたばかり私には、とても輝いてみえた。


山口さんは、在学中に起業をして、5年後に、人材系大手に事業を売却。今は色んなスタートアップに投資をしている、いわゆるエンジェル投資家だ。私が所属する起業家サークルのメンバーの中にも、山口さんに投資してもらっている人もいるらしい。


・・・・・・


「山口さんってすごいね。あこがれるなぁ」と思わず私がつぶやくと、


「すごいけど、結構派手な生活してるみたいだから、気を付けたほうがいいよ。最近Twitterでも炎上していた、一気飲みで女性が亡くなった場にも山口さんがいたっていう噂だし」と数少ない女子メンバーのひとりが声を潜める。


そういえば、ある男子メンバーは、山口さんに、とあるクラブのVIP席に連れて行ってもらったこともあると言っていた。


「経営者は、人脈が勝負だから」これが山口さんの口癖らしい。


・・・・・・


「キミは、どんな事業で起業しようと思ってるの?」


そろそろコンパもお開きというタイミングで、隣に山口さんが座って話しかけてきた。なぜか距離が近い。

さっきまで一ミリたりとも考えてもいなかった言葉が出てきた自分に驚きながら、さらに山口さんに自分のからだを寄せる。


「実は、私、Generative AIの分野で起業しようと思って準備してるんです。」






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