天候の魔女と神眼の王子
月影 星葉
プロローグ
雨が降っている。
でも、地下深いここまで雨は届かない。石畳に打ちつける雨の音だけが、上の天気を知らせる唯一の手掛かりだった。
そんな薄暗がりの空間を、全速力で駆ける少年がいた。
「おらぁ、待ちやがれ!!」
それを追うのはいかにも強そうな屈強な男たち。各々武器を手にし、ひ弱そうな一人の少年を五人がかりで追っていた。
最初は少年が持ち前の素早さでうまく男たちを撒いていたが、それでも所詮は子供と大人。段々と距離を詰められ、少年が逃げ込んだところは行き止まり。
「やっと追いついた、、、もう逃がしはしねぇからな、、、フハハハハっ!!!」
男たちは勝利を確信したのか、ゆっくりと距離を詰めてくる。
(もうこれで終わりか、、、できればもう一度、あの人に会いたかったのだけれど、、、)
男たちが持っていた武器を振り上げる。少年が全てを諦めて目を閉じる。武器が風を切る音に、少年がつぶっていた目を更にぎゅっと閉じた時、ふいに吹いてきた風に、男たちはふと身動きを止めた。
「おい、どういうことだよ、こんなことって、、、」
「ああ、起こりえないはずだ、、、ここに、いや、この階に霧がたちこめることなんて、、、まさか、“天候の魔女”が、、、?うわぁっ!!!」
男の一人が上げた奇声に、少年が閉じていた目をうっすらと開けると、今まですぐそばにいたあの男たちの姿が無い。否、周囲に濃くたちこめた霧が、男たちの姿を見えなくさせていた。
ここではありえない状況に目を見張って立ち尽くしていると、霧の中から、しわがれたような、でも瑞々しい若さが残る女の人の声が聞こえた。
「大丈夫かね、少年。」
他の人の声を聞くことで、追われていた緊張が解けたのか、急に意識が混濁してくるのを感じる。
中々返事をしない彼を気遣う声と、何故か聞こえてきた雷鳴を最後に、少年の意識は途切れた。
天候の魔女と神眼の王子 月影 星葉 @H-Tsukikage
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