第6話 創造神(作者)と、最弱勇者
「おぉ、勇者よ! 死んでしまうとは情けない!」
なんで、このおっさんが………………ハッ! ま、まさか!
「ここは、天国か――」
「そんなわけ無いじゃろ」
記憶通りいけば、拳がとんでくる!
僕はスルリと身をひねってとんでくる拳を……とんでく……
「さっさと殴らんかい!」
「どうしたんじゃ急に……ワシは人をいたぶる趣味なんぞ無いんじゃが?」
……なぜだ? このおっさんが真面目な顔でこんなことを言うなんて…………ハッ! ま、まさか!
「おっさん、今すぐ病院に行こう! きっと軽い熱だから、今からでも間に合う」
そう言っておっさんの手をひ……熱くない、だと。
ま、まさか!
「ついにボケたのか……」
「そんなわけ無いじゃろ!」
「ウグッ!」
予想外の攻撃をよけることはできず、頭の奥で絶対に出てはいけない音が響く。
生温かい液体が頬をつたい、視界が少しずつ暗くなっていく。
「ガクリ……」
「……やべ」
★★★
「お、おぉ……ゆ、勇者よ…………し、死んでしまうとは情けない……」
「おい、おっさん! 人をいたぶる趣味なんかないって言ったよなぁ?」
「いや、初対面の人間に『ボケたのか』とか言われたら誰でも怒るじゃろ!」
……このおっさんふざけてるのか?
しかし、僕のことが分からなくなるほど重度のボケの可能性も――
「あるわけ無いじゃろ!」
この時僕は確信した。
体格、顔、職業だけでなく人の心を読めるどこまで一緒なのだ……おっさんはどちらの意味だとしても確実にボケて――
「ないわ! お主、たとえ頭の中でも考えていいことと、悪いことがあるぞ!」
「聖剣どうしようかな……たぶんハジマアリ街に置いてきたままだし……」
な、なんだろうか……おっさんから視線を感じる?
そんなわけないよね?
「……チラッ」
あぁ……完全にこっち見てるわ! いや、だけどねてるって可能性も……だよねぇ……ないよね……
「あ、あの……なにか用ですか?」
「いやいやいや『なにか用ですか?』じゃないじゃろ! 考えをさえぎられて無視するとかやばいんじゃが!」
〘やばいなぁ……どうやって終わらせよう? そもそも勇者の3回目の死がなければこんなに面倒くならなかったんだよな〙
この浮いてる女性誰?
……このおっさんはなんで跪いてるの?
「お、おい! 早くお主もこのポーズになるのじゃ」
……なんで? この人がなんだって言うのさ!
「そんなこと考えるでない! あのお方はワシら【エイスー教】の拝める
「はい、アウトー。今の発言は確実にアウトー」
〘いや? 別に問題はないけど?〙
「そうじゃ、何が問題だというのじゃ」
……いやいやいや、こいつら正気か?
「どう考えても、作者ってワードが出てる時点でだめだろ!」
〘「……どこが?〙」
……え? いや、作者とかどう考えてもメタワードの一つだろ。
〘あぁ〜それねぇ大丈夫だよ? 僕、作者だし〙
「って、アンタかよ! 作者が出てくるとか、ギャグ漫画でもない限り駄作だろ!」
あぁ〜もう終わった……まぁ、こいつが諦めるのも無理ないか、ブクマもポイントもゼロだし。
最終回もそろそろかな?
そんなふうに頭を抱えていた僕の脳裏に一つの考えが浮かぶ。
「それは、粉幸が男だということだ! 女の姿のやつがこの作品の作者ですとか言ってる方がおかしいんだ!」
〘こういうご時世だしさ? 性別関連の発言は炎上とか怖いしやめてくれない?〙
「ハハッ、大丈夫ですぞ創造神様! まず、炎上するまでの読者がおりませんしの」
おぉ〜あのおっさんいいこと言うなぁ〜。
〘いやいやいやそういう危ない発言やめて! そういうのが一番危なかったりするから! それに、今は人がいなくてもいつか増えるし!〙
「でも作者が出てる時点で駄作確定じゃしの……」
「いやぁ本当にそうだよね~」
〘あ、あぁ……な、なんか暑いなぁ〜、すっごいあついなぁ〜、そ、外でも確認してみようかな!〙
あ、こいつ逃げたな……
まぁ、暑いのは確かだし……ちょっと換気するるのもいいかもしれないな。
〘ねぇ、この街は建物を黒くする決まりでもあるの?〙
「何を言っとるんじゃ、この街の家はいたって普通の……」
おっさんは何かを理解したかのような顔をして動かなくなる。
どうやら思考を停止したらしい(?)
「え? どしたの?」
おっさんと扉の隙間から外をのぞ……………………………
誰かが放火でもしたのかな?
教会の周りの数軒だけでなく道も真っ黒に焦げていた。
そしてその真ん中に一人の幼女が倒れている。
勇者である僕は当然、彼女に駆け寄る。
「大丈夫で……君は!」
彼女のフードを外すとさっきのちびっこ賢者の顔が見える。
確か名前は…………ヨシダだな!
「大丈夫かヨシダ!」
「ヨシノだ!」
こ、これは拳がとんでくるパターンだな……いやぁ僕の頭はここまで理解できるようになってしまたのだな。
まぁ、そんなこんなで腕を体の前でクロスさせ防御の姿勢に入――
流石に遅くない?
そう思い、前を向くとヨシノはおぶってほしそうな目でこっちを見ている。
「じ、実は魔王との戦闘でMPを使い果たしちゃってもう喋ることしかできないんだ」
「そ、そうか! この火事もその戦闘で……」
大変だったんだろうなぁ……
僕があの時死なずにちゃんと戦ってい――
「いや、それは別件」
「お主は聖剣を持ち上げることもできんじゃろ」
お、おぉ……そうなのか
「じゃ、じゃあ火事は何故に?」 「お〜い」
「実は残り3のMPを振り絞って
「そのまま日が燃えひろがったと……」「お〜い」
「なぁなぁ聞こえとるかぁ? お〜い! 大丈夫かのぅ?」
よし、まずはこのおっさんを黙らせよう。
「なぁ、おっさん? どうしたのかな?」
「いやぁ実はのう、創造神様も帰ってしもうての……」
「……つまり?」
「暇じゃしつきあえ!」
まぁ、なんて素敵な笑みなんでしょう。
僕は人の笑顔でこんなにもムカついたことがないよ。
「それじゃあ、まずは僕のストレス発散につきあえ! くらえ、勇者ウルトラスーパーパーンチ」
僕のパンチが空を切る。
「んな! 消えただと」
「フッ、残念じゃったなそれは残像じゃ」
突然、足元から声がかかる。
急いで下を向くがヨシノ以外見当たらない。
「あだっ!」
声の方を向くと、土で汚れたおっさんが…………なぜか聖剣の入っている引き車にケツからハマっていた。
「どうしたん?」
「い、いやぁ実はパンチをよけようと後ろに下がったんじゃが…………何故か穴がほってあってのう、そのまま落ちた」
え? マジで?
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