第8話 ショップ
※まえがき※
第7話と第8話の間に掲示板回が入っております。順番が入れ替わっている可能性もありますため、話数にご注意下さい。
去年からお世話になっている喫茶店でのアルバイトが終わり自宅へ帰って来た。そこまで時給が良い訳じゃないけど、可愛い女の子と仲良くなれるかもという不純な動機で選んだ。JKとか居るけど恋人になれないのは魅力が足りないからですかね?
ボクのお友達であり隣人のホッシーから例の掲示板のURLが送られてきた。アングラなサイトなのかと思ったけど至って普通の掲示板だったようだ。
はやる気持ちを抑えて大学のレポート課題を処理したりご飯を食べたりお風呂に入ったり、やる事を全部やってから自由時間の開始です。
【都市伝説?】今夜も夢で逢いましょう2【不思議なダンジョン?】
329:夢見る名無し冒険者
ぐぇぇぇ、モンスターハウスでやられたー
330:夢見る名無し冒険者
あのダンジョンかなりエグイよな
一日一回しか挑戦出来ないのが何よりも辛い
331:夢見る名無し冒険者
初級冒険者カード拾って帰ろうと思ったて階段上ったのにモンハウでやられた
332:夢見る名無し冒険者
行きはよいよい帰りは怖いってやつです
ちなみに、中級冒険者カード拾ったら脱出カード使えないからな
初級ダンジョンじゃ意味ない情報だけど一応
333:夢見る名無し冒険者
今更だけどこのゲームって個人差が激しくない?
おれのギルマス皺皺なおじいちゃんだし、ダンジョン食糧がレーションなんだけど
しかもショップの店員がおばちゃんだぞ!?
334:夢見る名無し冒険者
ちゃんと美女をイメージしなかったお前が悪い
うちのギルマスは美人だから最高!
JKがショップの店員さんだけど、ついつい買い過ぎちゃうよね!
335:夢見る名無し冒険者
中級冒険者になると赤いゲートに入れるだけ?
336:夢見る名無し冒険者
兄貴の話によるとBARが追加されるらしい
ここでも選択ミスるなよ。兄貴は行きつけの風俗嬢をイメージしたらしい
337:夢見る名無し冒険者
兄貴……
338:夢見る名無し冒険者
サキュバスちゃんに逢いたいです
339:夢見る名無し冒険者
確かに冒険者ギルドに酒場あったけどオープンしてなかったな
お酒飲めるのかな
340:夢見る名無し冒険者
兄貴の話だと一人だけ仲間を雇えるらしい
341:夢見る名無し冒険者
すげー!
342:夢見る名無し冒険者
一気にヌルゲーになりそうだな
343:夢見る名無し冒険者
仲間はオートプレイだから意思疎通も出来ないしすぐやられるから微妙っていてた
・
・
・
軽く流し読みしてみたけど色んな情報が出ていた。
「やっぱりギルマスは選べたのか!? っていうかコレみんなボクと同じ現象だよね……」
バイトの休憩中にちょっと読んだけど、ギルマスが言っていたようにボクより先にギルドに辿り着いた人がいたようだ。その結果、どうやらボクは選択を誤ってしまった事が判明した。どうしてボクはあの時ギルマスを可愛い女の子で想像しなかったのだろうか。
でもショップの店員さんが選べるのは朗報です。まだショップが解放されてないけど、エチエチなお姉さんを想像して過ごそうと思う。
それにしても結構前からこの現象はあるようだ。密かに賑わっているらしいけど、こんな情報どこでホッシーは知ったのだろうか。もしかしてホッシーも冒険者か!?
全部読み切れてないけど、兄貴と呼ばれる冒険者がサキュバスの館でエチエチな体験をしてるっぽい。ボクも頑張って中級冒険者カードをゲットしようと思います。
ネタバレになりそうなところは読み飛ばしておいた。
「さて、そろそろ寝ようかな。そもそもまた冒険者ギルドに行けるか分からないし……」
これが異世界転移とかだったら装備とかも用意するけど、夢の世界では裸でも効果は同じっぽいからね。だから今日も昨日と同じスウェット、靴下を履いてると寝付けないので素足です。
でも待てよ。もしショップのお姉さんが初心な文学少女だったらどうだろう。裸で寝たら公然わいせつが合法的に出来ちゃうような……天才か? でもボクの愛棒を見た女の子から『小っちゃい』『かわいい~』とか『恥ずかしがり屋さんなんだね?』とか言われたら困るから止めよう。
歯も磨いたし、待ってろよダンジョンー!
◇
「おう、来たか。今日からショップを使わせてやる」
「っ!?」
昨晩と同じ冒険者ギルドに来る事が出来ました。そして開口一番ショップの通知です。ギルマスの話を聞いた瞬間、ボクは目を閉じた。ここで変な事を考えたら全てが終わる気がしたのだ。
掲示板の話によればここでボクの運命が決まる。落ち着けユウタ、既に想像していたじゃないか。ボクを甘やかせてくれるお姉さんでおなしゃす!
「あらあら~、随分と可愛い男の子ね。うふふ、こっちにどうぞ~」
「っ!?」
ギルマスのゴツイ声と違う甘い女性の声が聞こえた。ボクは声の方に顔を向け、グワーッっと目を見開いた。
「ゴクリ……」
思わず生唾を飲み込んでしまった。そこに居たのは間違いなく美女だった。ゴリゴリマッチョなハゲ親父でも無ければオネエさんでもない、芸能人と言われてもおかしくない美人なお姉さんが居たのです。
「どうしたのそんなに見つめちゃって? ほら、説明してあげるからどうぞ~」
「はーい!」
ボクはルンルン気分でお姉さんに近づいた。ああ、やっぱり綺麗だ。
セミロングな茶髪を三つ編みにして胸元に垂らしているお姉さん、少し垂れ目なのも妙に色っぽい。
セーターにエプロンというショップ店員の装備をしているが、何よりもそのこんもりと膨れ上がった胸が凄い。胸元で腕を組んで寄せて上げてボクを魅了してくる。もしかして狙ってやっているのか!? 童貞には効果的ですよ。
「あらあら、そんなおっぱいばっかり見ちゃダメよ~? 女の子はそういう視線に敏感なんだからね~」
「ひーん、ごめんなさいー」
どうやら胸を見ていたのはバレていたようだ。でも許して欲しい、女性と付き合った事もない童貞には刺激が強すぎたのだ。目に力を入れて胸元を見ないように頑張ります。
「うふふ、良いのよ。私の事は
「ユウタって呼んで下さい、夏子さん」
「ユウタ君ね。じゃあ簡単に説明するわね~。まずは――」
この美人なお姉さんは夏子さんというらしい。彼氏とか居るのかな? っていうか結婚してるのかな? 左手の薬指には指輪が無かったから独身さんですね? いや、この色気は人妻な可能性も捨てきれない。もしや未亡人ですか!?
くっ、きっとボクと夏子さんなら良いおねショタが出来るはずだ。童貞だけど頑張ってショタを演じるので、ワンナイトラブで良いのでお願いしますー!
「――という感じね。どう、分かったかしら~?」
「うぇっ!? あっと、そのあの……」
ヤバい、全然聞いてなかった。セーターを押し上げる魅惑の胸元に集中しててサッパリでした。だって今まで会った女性の中でナンバーワンですよ? 逆に見ない方が失礼な気がしたのだ。
「あらあら~、もしかして聞いてなかったのかしら~?」
「そ、そそそ、そんな事ないですよー。バッチリですー!」
「う~ん、本当かしらぁ? じゃあテストしてあげるわね。全問正解したら良い事してあげる♪」
「良い事? ……ボク頑張ります!」
夏子さんがこれ見よがしにムニュムニュっと胸元を強調して来た。つまりそういう事ですね?
遂にボクも童貞を卒業する時が来たようだ。サキュバスの館を狙うよりゴールは近いところにあったのだ。ふぅ……愛棒、頑張ろうぜ?
「第一問、私のお店では販売しか行っていない。〇と×、どっちかしら~?」
くっ、最初から難問だ。〇が正解だと思うけど、ラノベだと買取カウンターが別にあるのが一般的だったような気がする。
でも冒険者ギルドに買取カウンターらしきモノは見当たらない。つまり……。
「×ですー!」
「うふふ、正解よ~。持ち帰ったアイテムはギルドマスターに預けるか、私が買い取ってあげるから頑張ってね~」
「分かりましたー!」
なるほど、これは勉強になるな。最初からしっかりと聞いておけと言われるかもしれないけど、ボクの童貞卒業がおまけで付いて来るからこれが正解だったのだろう。
「第二問、ダンジョンには何個までアイテムを持ち込めるでしょうか~?」
「うぇっ!? 〇×じゃないの~」
まさかの数字当てクイズだった。落ち着けユウタ、まだ慌てる時間じゃない。今朝の事を思い出すんだ。ボクはあの絶望的な確率である暗証番号を当てたじゃないか。
普通に考えてマジックバッグに入るだけいけそうだけど……あれ、そもそもマジックバッグに何個までアイテムが入るんだろう?
「どうしたのユウタ君、答えは何かしら~?」
「くっ……」
夏子さんがわざとらしく胸元をムニュムニュしてボクを誘惑してくる。いや、まてよ。これは夏子さんなりのサービスなのだ。
良く見ろユウタ、あの魅惑のスライムは何個ある? それが答えだ。
「分かりました、正解は2個ですー」
「うふふ……残念でした~。正解は4個よ。何も持たずに行く時、食糧だけは必ずサービスしてあげるから頑張って稼いで来てね。ふふ、残念だけどご褒美は無しね~」
「はうぅ、分かりましたぁ……」
ボクは肩を落としてギルマスのところへ向かった。まさか夏子さんがひっかけ問題を出して来るなんて思ってもみなかったのだ。
「おう、そう気を落とすな。頑張って冒険してりゃ良い事もあるさ」
「……」
マッチョに励まされても嬉しくなかった。
「じゃあ行ってきますねー」
「頑張って来い!」
やはりボクにはサキュバスの館を狙う以外に道はないようだ。
さっさと初級冒険者カード拾って来ようとゲートへ向かったところ、後ろから声を掛けられた。
「ちょっと待ってユウタ君、これあげるわ」
「夏子さん、これは?」
手渡されたアイテムを見るとファンタジーゲームで見たことがあるようなガラス瓶だった。所謂ポーションボトルってやつですね。でも中身はピンク色の液体だった。
どうやらダンジョンの中でしか判別が出来ないらしく、手に持っても効能が調べられなかった。
キョトンとしていたら夏子さんの顔が近づきボクの耳元に口を寄せた。ふわっと甘い香りがボクの鼻を突き抜け脳を犯した。もしかして夏子さん、サキュバスですか?
「……これはラブリーポーション、1階のモンスターと遭遇したら飲んでみて。ギルドマスターには内緒だからね? 応援してるから頑張ってね♡」
「は、はいっ!!!」
ああ、やっぱり夏子さんは最高だ。むさくるしいギルドに華が出来た。ボクは夏子さん推しで頑張りますよ。いっぱい稼いで夏子さんに貢ごうと思う。
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