私達の境界線
maro
第1話
学校から帰宅して、部屋で一人きりになるといつも考えてしまう。
私は、こんな毎日を過ごしていて良いのだろうかと。
何か、大切なことを忘れているような、世界と自分との間に、形容しがたい妙な違和感を感じる。
いっそのこと、この世界から大きく離れて、心から信じられる何かと繋がることが出来るような、そんな世界を見つける旅へ出たい。
気が付くと、いつも意味の分からない現実逃避ばかりしている。
「もうやめた……」
心の疲労も、結局は脳という肉体の疲労なのだから、睡眠で物理的に休息すれば、きっと楽になるに違いない。
そう自分に言い聞かせて、私はベッドへと潜り込んだ。
――屋内だというのに、サラサラと心地良い風が顔に当たっている。
窓を開けて寝た記憶はないはずだったけど……。
まぶたの外側からでも分かる陽の光の眩しさで、少しづつ意識がはっきりしてきた。
ゆっくり目を開くと、眩しい光が真正面から目に飛び込んでくる。
それはまるで、壁一面が窓になってしまったかのようで――い、いや……違う。そ、そうじゃない……!!
壁が……壁自体が無いのだ。
目の前にぽっかりと大きな穴が空いていて、そこから向こう側の景色が丸見えになってしまっているのだ。
「な、なに、これ……?」
驚いて周りを見回すと、目の前に開いた大きな穴以外は、全て壁に囲まれている狭い箱のような空間の中に、私はうずくまるような姿勢で収まっていた。
穴の向こう側を改めて良く見ると、民家の庭先のような景色が広がっている。
この場に留まることに耐えられなくなった私は、這いずるようにして穴の外へと進んだ。
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