新作・小片小説「モザイクワーク」

 朝、登校すると私の机が文字で黒く汚れていた。

 字体は様々。

 実行したのは一人だけじゃない、たくさんの子の癖で、数多の字が集まっている。


 書かれた悪口、人を傷つけることを目的とした罵詈雑言の数々……。

 知っていたけれど、私はやっぱり、いじめられている。


「…………ん?」


 だけど、少しだけ違和感があった。近くで見ればただの罵詈雑言で埋め尽くされた机だけど……、その違和感は、思えば教室に入った時に感じていたのだった。

 離れたところから見た机は、意識して見れば、別の文字にも見えて……?


 寄ってしまえばなんのことだか分からないけれど、遠く離れてから見れば、その文字の数々は新しい四文字を浮き上がらせた――まるでモザイクアートのように。



 ご め ん ね



 ――いや、手の込んだ仕掛けで謝るのなら、もうやらなければいいだけだよね……?


 きっと、無自覚にリーダーが不在で、全員が引き際を見失っていたのかもしれない。



 ………

 ……

 …



 別の日、また私の机が黒く汚れていた。


 今度は近くで見てもよく分かった。モザイクアートではなかったのだから。

 モザイクアートの時もそうだけど、作ろうと思ってすぐに作れるものではないだろう……こういうことが得意な子が、クラスにいるということだ……、知らない一面である。


「なんでQRコード……?」


 読み取れなかったので、誘導したいわけではないようだ。



 ―― 完 ――

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