Liberator. Have a good one’s.

黒ーん

Thankyou for a PV.

Part Ⅰ

Part.Ⅰ 1000PV LAGAVULIN16年

 ――ストーンヒル 事務所 バーカウンター――


 いつも通りに何気無い仕事を終え夕食を済ませたストーンヒルのメンバーたちは、いつものようにバーカウンターに集まり歓談していた。ただその日、少しだけいつもと違っていたのは、バーテンを務めるバレル・プランダーが、いつも以上に上機嫌だったということだろうか。


「どうしたのですかニヤニヤして。そんな顔をしていては子供が泣きだしますよ」

「フッ、今日だけはなにを言っても許してやる」

「珍しいことで。いつもなら、そんな些細なことでもめくじらを立てるのに」

「人の顔を侮辱しておいて、それを些細なことなんて言ってるんじゃねぇよ!」

「ま、まぁまぁ。それよりバレルさん、なにか良いことでもあったんですか?」

「良くぞ聞いてくれたな。だが雫、良いことがあったなんてもんじゃない。今日はな、凄く良いことがあったのさ」

「勿体ぶらずになにがあったのか話したらどうなのです?」

「せっかちな奴だ……。良いか、聞いて驚くなよ? なんと、俺たちの話が、1000PVを達成したんだよ!」

「せ、1000PV ⁉ 凄い! それは本当ですか⁉」

「……全く、世の中には暇な人間もいるものですね」

「照れるなよ。声が上ずっているぞ?」

「……んんッ! あー、ではその、そういうことならお祝いをするべきではないのですか?」

「まぁ、今日くらいは奮発してやっても良い。なにせ、1000PVだからな」


 バレルは厳重に錠が掛けられた戸棚から一本の酒瓶を取り出すと、それをまるで繊細な宝物でも扱うかのように、慎重に二人の前へ置く。


「……そんな、まさか……こんな物が、あるなんて……」

「ラガ……ヴリン、ですか?」

「ラガヴーリンって読むのさ。言っておくがイミテーションでも再現複製品でもない、三百年前の代物だぞ」

「再現複製品ではない本物⁉ あ、開けるつもりなのですか⁉ そんな貴重な物を⁉」

「シャロ、酒って言うのは飲む為にあるんだぜ。セラーに並べて満足するのは金持ちにやらせておけば良い。そうだろう?」

「……きょ、今日だけは、貴方が雇い主で良かったと思ってやっても良いですわ」

「素直じゃない奴だ」


 そう言うとバレルは酒瓶のフィルムを剥がし、慎重な手付きでコルクを固定し酒瓶を捻る。ポンッ、と瓶の震える音を伴いながらコルクが抜かれると、そこからえも言えぬ芳醇な香りが鼻腔をくすぐった。


「……凄いな……」

「……えぇ……」


 それだけ言うと、バレルは奥の戸棚からいつものロックグラスではなく小ぶりなチューリップの花にも似たグラスを三つ取り出して、少量をそこへ注ぐ。バレルとシャロの二人は思い思いにそれの香りを嗅いだり色を確かめた後、口付けをするようにグラスを口元へと運んだ。


 目を瞑り、三百と十六年余りの時を紐解くように口で酒を転がすと、静かにそれを飲み下す。


「……言葉に、なりませんわ……」


 そう口にしたシャロの目からは、静かに二すじの涙が溢れていた。


「知らないのかシャロ、こういうときはな、旨いの一言があれば良いんだよ。それ以外は無粋ってもんだぜ」

「……そうですね。本当に、その通りですわ」

「だが、こいつは格別の味だな」

「えぇ。まさに1000PVの味ですわ」

「そいつは違いない」


 ニヒルに笑うバレルと少しだけ口元を緩めるシャロ。言葉は無くとも、二人には愉楽と称賛の気持ちで溢れていた。が――。


「あ、の……すみません……これ、凄くまじゅい、です……。土っぽくて、なんか、消毒液の匂いって、言うか……」


 二人を余所に、一人だけ渋い顔をする雫。その後も笑い声の絶えないストーンヒルの夜は、いつも通りに過ぎて行った。

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