第36話 仕返し


正直いって今の俺は…最高だ。


魔物の達の所に行けば幾らでもお金が貰えるし収入には事欠かない。


自分好みの女性とも出会い結ばれた。


一応は冒険者としての地位もあるし…本当に揉めたら『武力解決すれば良い』


女神に恨みはあるが…あの女神が俺を異世界転移に巻き込まなければ…こんな幸せは手に入らなかった。


さて此処からどうするか…


◆◆◆


色々考えた俺は一旦王都から離れ地煞七十二変化で昔どこかの本で見た悍ましい姿の身長400メートルの化け物に変化した。


更に身外身の術を使い20にその数を増やし王都へと飛び立った。


「俺の名前は大魔神パズス…お前等が異世界から他の世界の人間を呼ぶのであれば…魔族側がそれを行っていないのは不公平だと感じた…よって我とその仲間は異世界より舞い降りたのだ…これより粛正をする…我は逃げる者は追わぬ…死にたく無ければ逃げるが良い」



「ば、化け物だぁぁぁぁーーー」


「この世の終わりだーーー」


俺は王都の門を思いっきり破壊した。


これは脅しだ…だから街も出来るだけ壊さずに突き進む。


尤も300メートルの巨人20人が歩き進むのだから…それでもあちこちで被害は出る。


人や建物を極力避けながら王城へと向かった。


「そちらから攻撃をしなければこちらからは王城に着くまで攻撃はしない…但し攻撃が加われば反撃する」


流石に、この大きさの魔族?は恐ろしいらしく逃げ惑うばかりで誰も攻撃を仕掛けて来なかった。


王城へはあっけなく着いた。


「さて…此処に居る存在は…明確な敵だ…異世界から来たと言う『勇者』たちを含め掛ってくるが良い…戦いたく無ければ逃げれば良い…逃げた者を追う事はしない」


それを宣言すると…俺は王城を壊し始めた。


「騎士団長どうしますかーーーっ」


「馬鹿、この大きさの相手と戦う事なんかできない…俺は俺は、クソっ王に連絡して来る…お前達は退避だーーっ」


「退避――退避だぁぁぁぁーーーっ」


一斉に兵士や騎士が逃げ出す。


これで良い…


次々に城を壊していくと…見つかった。


レンガ造りの間…俺達が召喚された場所だ。


良く見ると魔方陣がある…此処を破壊した。


それから…


しかし逃げ惑うばかりでなかなか出て来ない。


蟻塚を壊す要領で破壊していく。


居た…同級生だ。


指で摘まみ上げた。


「異世界から来た者よ…死ぬが良い」


「たたたた、助けて、お願いだから助けて、私はただ巻き込まれただけ…魔族となんか戦いたくないんだから…お願い」


まぁ急に300メートルの高さに吊り上げられたんだ…まぁ怖いよな。


顔は涙で濡れ…鼻水を垂らし…足をばたつかせている。


暴れたら落ちるって…可哀そうだが仕方がない。


「お前の言い分は聞いた、これから異世界人を連れて来い…本当に巻き込まれたというのであれば、命は取らない…もし、お前が言った事が嘘なら、手足を切り取り…一生オークの苗床生活だ…さぁ呼んで来い…逃げたら人生が終わるからな」


「ひぃ…解った、すぐに連れてくる…だから、だから殺さないでーーーっ」


俺はそのまま、篠原さん(吊り下げた女生徒)を降ろした。


篠原さんは余程怖かったか、おろしたと同時に奥へ走っていった。


そして暫くして…クラスの全員が此処に現れた。


全員、間違いなく居る。


だが、敢えて知らない振りをして、言う…


「この中の誰が勇者だーーーっ」


周りに押し出さられる様にして大樹が前に出てきた。


「あっあっ…俺ですが、巻き込まれただけなんだーーーっ」


「戦う気が無い…そう言う事で良いのか? それとも今 此処で戦うか? 」


随分掌がクルクル変わるものだな…


「戦えない…」


「そうか?! だが、お前達は魔族と戦う切り札として此処に召喚された筈だ、そして我らが敵女神イシュタスに異世界に行く事を了承して…その上で、この国の王族から説明を受け戦う事を選んだ筈だ…知っているぞ! それが巻き込まれただけ…ふざけるなーーっ」


「待ってくれ…我々は、本当に…」


五所先生か…


「嘘をついても無駄だ…密偵が全部聞いていた」


嫌…俺が直接この耳で聞いた。


「そんな…」


「まぁ良い…償えば許してやる! お前達は演習という名目で、魔物を狩ったそうだな! 巻き込まれた…それを信頼したとして…お前らが前居た世界では『騙されて人を殺しても罰されないのか?』どうなんだ、殺人を何件も犯しても罪に問われないのか?」


「問われます」


「そうか、ならば償って貰おう…魔族を殺す指示を出したのは『この国の王と王女』なのだろう? その二人を殺して首を持って来れば、話は終わり…出来なければこの場でお前等を殺す…此奴は人質だ」


俺は聖女の塔子を指で摘まみ上げた。


「いやぁぁぁぁぁーーーー助けて…助けて大樹――っ大河、聖人――っ」


此奴は三人と仲が良い…動くだろう。


「待て…本当に王と王女を殺して首を持ってくれば塔子は返してくれるんだよな?」


「約束しろ」


「…絶対ですよね…」


「ああっ約束しよう」


まず3人が走り出し、他の生徒も動き出した。


なかなか慕われているな…このクソ女。


表向き良い奴を気取っていたからな…裏では結構酷い奴だが…


まぁ良い…


「待て、お前達、王族を殺したら大変な事になる…話しあうんだーーっ」


五所先生が何を言っても止まらない。


俺はお城を追い出されて死にかけた…


俺を殺そうとしたんだ…


殺されても文句いうな…


◆◆◆


「離せ、離すんじゃーー儂を誰だと思っている」


「離しなさい私はこの国の王女です…許しませんよーーーっ」


王と王女だ…異世界人(元日本人)はもう騎士より強くなっていたんだな…騎士が奥で倒れていたのが見えた。


「約束だ、二人を連れてきた、さぁ返せ」


「約束は首だ…生きているではないか?」


「解った…今すぐ跳ねる」


「やっ止めるんだーーーーっ」


五所先生が煩いが…もう止まらない。


先生は王族を殺したら、この先大変な事になる…きっとそれが解っているんだろう…多分、先生の思った様になる。


大樹と大河が剣を抜き、そのまま二人の首を跳ねた。


「約束だ…今後魔族や魔物を狩らなければ、お前達に俺達は手を出さない…だが…手を出したら…殺すからな」


「「「「「「「「「「解った」」」」」」」」」」


ほぼ全員が約束をしたので俺は、王城を後にした。


◆◆◆


これで良い…


あの時、追い出された俺は、仏様のおかげで生きる事が出来た。


もしあの時…助けて貰えなければ、俺はあのまま死んでいた。


それを知っていてこの国の王と王女は俺を追いだした。


殺されても仕方ないだろう。


同級生には…これは救いなのだ。


浅い付き合いとは顔見知りではある…


恐らく、このまま行けば魔族と戦い…近い将来死ぬ。


だから…『魔族は怖くて勝てない』そして王国と縁を切らせるにはこれしか無かった。


今後、どうやって生きていくか迄は知らない。


だが、騙されて死ぬよりはマシな筈だ。


だが、『魔物も魔族も殺せなければ』冒険者になれないし…王族を殺害してしまった異世界人…


あとの事は…まぁ自分達でどうにかするだろう。






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