第16話 VS竜


「凄いご馳走だ」


「長年生きていると、結局は美食にいってしまう。宝よりもなによりも食、そうなってしまいますな」


歓迎と言われて、どんな物か考えていたが…凄いご馳走だ。


竜とかはてっきり、牛とか丸のみしていそうだと思っていたけど、違うようだ。


「竜と言えば色々な物を『丸飲みしてそうだ』そう思ったのだろう…違うからな」


「そうそう、高位の竜は皆、美食家だからな」


しっかりと調味料を使かった本物の御馳走を堪能した。


「美味い、美味い…本当に美味い」


「それは良かった、お口に召したようで…」


竜の御馳走は凄い。


中華の様な味付けから、西洋風まで…まるで前の世界の料理に近い。


これは、この世界では滅多に食べられないな。


「ギルモア様、本当にこの人間、強いんですか?」


「それも解らないのか…間違いなく強い!竜王様でも勝てないかも知れぬ…」


「それは冗談でしょうが、そこ迄言うなら、ちょっと戦ってみないか?」


正直言えば、この体になってから真面に戦った事が無いんだよな。


相手は竜だし…本気を出せるかも知れない。


「別に構わないけど?」


「あああっ、すみません、手加減をお願いしますね…頼みますから」


なんで此処迄竜が恐れるんだ。


「気を付けます…」


「はははっ、何を言っているんですか? 人間に負ける竜がいるとでも?」


「全力で来てください! 僕ら高位竜なので…」


三人についていき、外に出た。


この場所は竜が住む岩場だ、かなり暴れても問題ないだろう。


「「それじゃ行きますよ…竜化――っ」」


人間の姿が大きな竜に変わっていく…


「我が名は黒竜…高位の竜だ」


「あははっ驚いただろう? これが僕の姿だ、僕の名は青竜だ」


俺はなんて名乗れば良いのだろうか?


「俺の名は悟…いや『孫悟空』だ」


「さぁ、どっからでも掛って来るが良い」


「きなよ」


「如意棒!」


「ぶわぁはははは、なんだその棒」


「そんな小さな棒で殴るのか? どうぞ~」


相手は竜…本気で殴っても大丈夫だよな…


「伸びろ、如意棒…行くぞ」


「ぶわはははっ、伸びるのか、どうぞ~」


俺は思いっきり伸びた如意棒でお腹の部分を殴った。


その瞬間、黒竜は真っ二つになり上半身と下半身に千切れ上半身は木々を薙ぎ払い大きな岩山にぶつかり止まった。



「ごめん、まさか此処迄弱いと思わなかった」


良く考えたら如意棒の重さって8トン。


たしか工事現場でビルを破壊している鉄球が1トンだっけ。


それを緩やかに振り子のように振るだけでビルは壊れる。


孫悟空が本気で振れば…こうなるよな。


「お前、卑怯だぞ…そんな神具を使うなんて、男なら素手で来なよ、素手で…」


「ゴメン、悪かった…素手でやるから」


俺は如意棒をしまって空手の正拳突きの要領で殴った。



「武器に頼らなきゃお前など…ぐふぁぁぁぁーーっ」


良く考えたら8トンの大きさの武器を自由にふる怪力。


どう考えても…尋常じゃない。


まぁこうなるな…


青竜のお腹に大きな風穴が空いていた。


「ああっ…ゴメン…」


流石に竜でもこれは下手したら死ぬ…な。


不味い、歓迎してくれた人?を殺してしまう…不味い。


「良い薬じゃ…あわてないで大丈夫です…この位で死にはしません…これでも竜ですからな…まぁこの回復には数か月は掛かりそうですが」


そう言うと、竜化したギルモアは黒竜の上半身を持ってきていた。


◆◆◆


「なんだか、すいません」


今現在、黒竜と青竜は包帯を巻いて横たわって寝ている。


その横でギルモアと俺は茶をすすっている。


「いえ、良い薬です。これでもこの二人は竜の中でも名家の生まれでして、自分の力を過信しておりました。早いうちに敗北をしり儂個人として良かったと思います…何しろ儂が倒しても『ギルモア様は別格』と自分達の未熟さを認めんので困っておりました」


「だが、竜は強いからそれで良いんじゃないの?」


恐らく食物連鎖のトップ、問題はないと思うが、違うのか。


「例外を知るのも良い事です。上位竜の殆どは生涯敗北を知らずに生きていき慢心していきます。その結果、碌でもない存在になる…これも良い経験です」


「そう言って貰えると助かる」


「それで…竜の王族とはどう言う関りあいが…知らぬ相手とは言え気になります」


俺は玉龍の話を多少アレンジして話した。


「馬を食われたから…馬になって貰った…しかも別世界とはいえ竜王の息子…王子に…」



「ええっ、良く世話もしたし、友達の様に仲良くしていましたよ…(西遊記の話だけど)」


《余程怖かったのだろう…気高い竜、その中でも白竜は凄くプライドが高い。そのままの姿でも背に人等載せない…それが馬に姿を変えてまで載せる…いや、この存在感ならあり得るのか》


「それは、また凄い話ですね、私からこの世界の竜王様にも話をしておきますから…竜は仲間…友達、それを忘れないでくだされ」


「そうだね、これだけ歓迎してくれたんだ、キモに命じておくよ」


「ありがとうございます」


「それじゃ、また今度遊びにきます」


「…歓迎いたします」


俺はギルモアに見送られながら洞窟をあとにした。


しかし、竜相手にこれじゃ、もう戦闘なんて出来ないんじゃないかな。





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