第15話 白馬と竜


「この依頼受けませんか?!」


冒険者ギルドに顔を出すとギルドの腹黒受けつけ嬢のサリーちゃんが笑顔で2枚の依頼書を出してきた。


「どれどれ」


『森に古代竜クラスの魔物が暴れた後があり調査求む』


『王城にて聖剣を含む聖なる武器が何者かに破壊された』


これ駄目じゃん。


両方とも俺だ。


「俺は王城から追い出された人間だから、王家の依頼は余り受けたくないな」


「そうですよね、ですが両方とも引き受け手がいなくて困っているんですよ」


確実に迷宮入りだな。


「此処だけの話、俺はこの国を恨んでいる…だから悪い」


「まぁ、最初の悟様の状態を知っていますから、無理は言えませんね…解りました、諦めます」


「悪いな」


「それで、悟様は今日はどう言ったご用件でしょうか?見た感じ討伐の依頼を終わらせてきたように見えませんが…」


「いや、実は竜について知りたくてな」


「ぷぷぷっ笑えますねーーっ!やっぱり異世界人ですねーーっ…それ言っちゃいます?! 竜はそこら辺の魔物とは別格ですよ? 亜竜と言われるワイバーンですら街の1つ位簡単に潰すんですよ? 倒せたらAランクって言われているんですよ!これはあくまで亜竜。本物の竜と言われるのは、その上の竜、地竜以上ですが、これはもう、異世界人の中でも選ばれた勇者とかじゃ無ければ倒せません! 一般人が倒すならA級ランクが5人以上必要になります…自己責任の世界ですがやりますか?」


やはりこの世界でも竜は凄いらしい…


「いや、討伐なんて考えて無いから、だけどどんな存在か気になってな…この辺りで一番強い竜の住処を教えて欲しい」


「ああっ、そういう事ですね!この世界の人間なら見たくはない恐怖の象徴が竜ですが…何故か異世界人にとっては憧れがあるみたいですね。この世の何処かに竜の国があり、そこには竜の王族が居るようですが…そこにいる竜が暴れたら世界が滅ぶと言われています。我々が見る事が可能な竜は古代竜エニシェントドラゴンのギルモア様です…凄く温厚な竜ですが…怒らせると国が亡ぶと言われていますので、絶対に戦ったりしないで下さいね」


「魔王や勇者より強そうだな…」


この世界で一番強いのは魔王じゃ無くて竜、そう言う事か?


「当たり前じゃないですか! 神々の次に強く気高いのは竜の王族と言われています…ギルモア様はその竜の王族に次ぐ実力者です」


「凄いな」


「ええっ、それじゃ銀貨3枚です」


「3枚?」


「良いですか? ギルドで情報を得るにはお金が必要なんですよ! ギルモア様の住処の情報は銀貨3枚になります」


「…お願いする」


俺はサリーちゃんに銀貨3枚を払いギルモアの住処を教えて貰った。


◆◆◆


「筋斗雲」


街からでて筋斗雲を呼んだ。


古代竜のギルモアが住んでいる場所は普通の人間が歩いて向かうと2週間は掛かる。


だが、流石は筋斗雲、1時間も掛からずに近くまで来た。


この辺りが…凄い翼竜…いやワイバーンか…


魔物や魔族と違う…第三の存在、竜…


俺は如意棒を構えた…が…


あれっ何故かワイバーンは俺と目を合わせると「クワァァァ」と声をあげて、急いで引き返していった。


一体、なんだって言うんだよ。


◆◆◆


ギルモアの住む洞窟にまでくると1人の老人と2人の若い男が居た。


「竜じゃない?!」


「無礼者!我らに向かって竜で無いだと!」


「貴様、死にたいの…」


「黙れ…」


「「ギルモア様?!」」


「黙れと言ったのじゃ! 相手の技量も読めぬヒヨッコが! この方は…竜の王族と縁がある方じゃよ…はっきり言えば、それだけじゃ無い…力量も儂より上じゃ」


竜の王族と縁がある?


「「ひぃ」」


「久々の客人じゃ…茶でも馳走しよう、さぁどうぞ」


これが、古代竜ギルモアなのか?


見た感じは温和な老人にしか見えない。


だが、自分が孫悟空になったせいか、その凄さが解る。


「ご馳走になります」


「その前に、姿を見せた方が良いのかのぉ~竜化」


目の前の老人が、山ほどあるドラゴンに変わった。


恐らく、この体になる前なら、驚き、絶望し腰を抜かすかも知れないが…今の俺にはどうってことは無い。


「嘘だろう…只の人がギルモア様の気に押されない」


「何故だ、気を抜けば我らとて恐怖するこの状態のなか笑っているだと」


何を言っているのか解らない。


だが、俺は空想上の生き物、ドラゴンが見られて満足だ。


しかし…凄いな。


他の魔物を見た時にも驚いたが『竜』はやっぱり別格だ。


綺麗な黒い鱗の西洋風の竜。


思わず見惚れてしまった。


「竜とは凄く美しいものなのですね…」


「儂など到底及ばぬ竜の王と縁を持つ者が何を言われますか! しかもその分だと、その竜の王族とは師弟関係、もしくは兄弟関係にあったのではないですかな? 」


頭の中に白馬の映像が浮かび上がった。


『悟空、ついていきます』


三蔵法師が乗っていた馬は竜王の息子の変化した姿。


そうか…玉龍。


竜が変化したものだ。


確か、孫悟空は馬の扱いが上手く、兄貴分だったのに世話は殆どやっていた…そんな話も聞いたことがある。


「確かに、俺は竜の王族とは縁があったようだ」


「でしょうな…竜とは縁を大切にする者なのです…未熟な二人は気がつかないようでしたが、竜の王族と暮らした痕跡が貴方にはあります…そうと決まったら茶など水臭い…歓迎しますから、さぁさどうぞ!」


俺は言われるままにギルモアについて洞窟に入っていった。







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