第12話 孫悟空だ

あの後、もう一つの常時討伐の相手、オークに出会ったのだが、かなり友好的だった。


此処でも俺は魔王扱いで崇められた。


最初に出会った瞬間。


何故だか頭の中に『兄貴』という言葉が浮かび涙が出てきた。


当然、俺は畜産の経験は無いし、三匹の子豚じゃない。


少なくともこの世界の魔物は敵では無い気がする。


ギルドに向かい8体分の報酬を貰った。


「8体ですか? まぁ普通ですね! てっきりうりゃぁぁぁぁーーとか言って無双してくると思っていました」


「まぁボチボチと頑張るよ」


「まぁ、本当はその方が良いんですよ! それで大怪我する人も多いですからね!それでは銀貨8枚(約8万円)です。どうぞお受け取り下さい。」


「ありがとう」


お礼を言ってギルドをあとにした。


◆◆◆


今迄とは違いお金はあるから、少し高級な宿屋に泊まった。


暖かい湯…お風呂に浸かった。


日本に居れば、当たり前の様に入れるお風呂。


それが異世界ではある程度高級な宿屋にしかない。


ゴブリンから貰ったお金は約金貨500枚(約5千万)あった。


これで暫くは生活に困らない。


良い気持ちだ。


やはり水とお湯じゃ全然違う。


気持ち良い…


俺のこの体の正体…冷静に考えたら…解った。


猿顔のセクシーな姿。


豚に似た魔物オークを見た瞬間に『兄貴』と呼ぶ妖怪の姿が浮かんだ。


耳の中にあるこの棒。


そして魔物が『魔王』と勘違いする存在。


あの方が仏様だとするなら、そこに仏教を併せて考える必要がある。


そう考えたら…この体は『孫悟空』だ。


しかし…実際の所…この体はどれ位凄いのだろう?


孫悟空の体であれば、間違いなくチートだ。


だが、そのレベルが解らない。


西遊記をはじめとする孫悟空の物語や逸話。


何処までが本物なのだろうか?


確か、花果山の頂に一塊の石があり。この石が割れて卵から生まれる様に石猿として生まれた。


水簾洞の主で沢山の猿の王、美猴王として生活。


命の儚さを憂い、不老不死を求めて旅をし、須菩堤祖師という仙人に弟子入りをし幾つもの仙術を学び孫悟空の名前を貰う。



筋斗雲という雲に乗る術や変化の術を学ぶが傲慢さから花果山に帰らされる。


花果山を荒らしていた混世魔王を退治。


竜宮に出向いて如意棒を無理やり奪うように手に入れた。


これって竜宮城の柱だったんだよな。


牛魔王を含む6大魔王の義兄弟だった。



まだ、真面な伝説でもこれだけある。


更に凄い話だと…


寿命が来て死んだ時、『そんなわけあるか』と怒り閻魔帳を持ってこさせ、自分の名前を塗りつぶした挙句、閻魔様を含む冥界十王をぶん殴った。


天界の不老不死の源、仙桃を食べ尽くした。仙丹も大量に頬張り食べた。


どちらが正しいか解らないが、どちらの説から考えても不老不死だ。



天帝は悟空やその仲間を倒す為に10万の兵を使って取り押さえた。


八卦炉に入れて溶かそうとしたがそれですら生き延び…恐れた天帝がお釈迦様に頼んで500年五行山に封印された。


西遊記の話が始まる前で確かこんな感じだった。


まぁうろ覚えだから間違っているかも知れないが…こんな所だ。



問題は何処まで本当かだ。



これが全部本当ならとんでもない話だ。


元の体が石猿で固いから、殆どの武器が通じない。


仙丹を大量に食べたから無敵の体になっていたんだよな。


剣も斧も通じなかった。


天界の住民が使った武器ですら頭に直撃を受けてもフラフラしただけ…恐らく聖剣や魔王の攻撃でも効かない気がする。


二郎真君が勇者や魔王以下とは考えにくい。



それに牛魔王を含む6大魔王と義兄弟ならこの世界では『魔王』なのかも知れない。


八卦炉で溶けないならドラゴンブレスも効かない気がする。


もし、全部が伝説のままなら…


不老不死。

ほぼ無敵。


その強さは神並み。


そうなる。


ただ、これは一番強い話だ。


妖怪相手に負ける話もあるから…検証してみる必要があるな。


まぁ…取り敢えず今日は寝よう。


今の俺はどんな美女の誘惑より…布団の誘惑の方が魅力的だ。












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