第4-3話 後編
◇しまむらキャンプ用品店
真琴は早速、調書に書かれていたサバイバルナイフについて、レシートのコピーを見せながら聞いた。
「こちらのサバイバルナイフなんですけど、買った人のこととか覚えてませんか?」
「いやぁ、覚えてないね。一応監視カメラも見るかい?」
「是非、お願いします」
真琴と珠希は、早速監視カメラの映像を見た。
「この映像は警察には提出しましたか?」
「えぇ、しました。だけど、ほら見てください。
この時刻にサバイバルナイフを買った男性は、フードをかぶっていたカメラに顔が映ってないでしょう」
「確かにそうですね」
「しかも、運悪くこの男性の背格好だと、小林さんとそっくりだ。
他にサバイバルナイフの購入者を知る方法とかないですか?」
「一応、ありますよ。当店ではサバイバルナイフのシリアル番号とお客様情報を共有させて、サバイバルナイフの無料研ぎ直しのサービスをしているんです。
警察にも見せたんですけど、偽名みたいであまり役に立たないみたいでしたけど…」
主人は、パソコンでデータを見せてくれた。
確かに、事件に使われたサバイバルナイフが5/10の午後7時に購入されている。
「確かに、記録されていますね」
「問題は、アイドルのライブを終えた小林さんが、ナイフを買って、現場の公園に向かって犯行を行わなかった証拠があればいいんだけど…」
「そうなんだよね…」
「5/10ねぇ…そういえば、5/10といえば…こんなのあったけど」
店主は奥から使い終わったポスターを持ってきた。
それは、まさに逆転の一手だった。
◇東京地方検察庁
真琴と珠希は、担当検事である田村と向き合っていた。
「それで、この事件で吹田が怪しいことは分かりました。
ですが、それだけでは不起訴にはできませんよ」
「分かっております。この写真をご覧ください」
珠希は1枚の写真を提出する。
「この写真は、中野さんが吹田さんから金を強請っている現場の写真です。
退院の当日に撮られたものです」
この写真は、真琴が探偵に依頼して取らせたものだ。
その探偵も桐生法律事務所と深い付き合いのある事務所で、格安で引き受けてくれた。
「今回の事件は、中野さんが吹田さんの違法カジノの出入りを知り、強請を行ったのに端を発します。
強請られることに危機を感じた吹田さんは、中野さんを殺害しようとサバイバルナイフを購入し、誰もいない公園に呼び出し腹を刺します。
吹田さんの指紋がなかったのは、手袋をしていたからでしょう。
しかし、丁度トイレに寄った小林さんが近くにいるのを察知したのでしょう。
1回だけ刺して、逃げてしまった。
その後、小林さんが中野さんを発見した。
小林さんに救われた中野さんでしたが、今回の事件の犯人である吹田さんが捕まれば、強請のことをばれて、アイドル声優仕事に支障が出てしまう。
そう焦った中野さんは、偶然にも吹田さんと背格好の似ていた小林さんに冤罪をかけた
以上、弁護人からの推理です」
「なるほど…面白い。だが、中野さんが嘘をついていない可能性もある。
あくまでも状況証拠に過ぎない」
「では、こちらの地図をご覧ください」
真琴は、アイドルのライブ会場とキャンプ用品店、現場の公園の3つが載っている地図を示した。
「警察・検察の主張では、午後6:30にライブを終えた小林さんが、タクシーに乗りキャンプ用品店に向かってサバイバルナイフを購入した。サバイバルナイフは、シリアル番号で管理されており、現物一点しかないものとする。そして、その後タクシーか電車を使い現場の公園に向かい、午後8:00に着いたと。
間違いないですか?」
「間違いない」
「おかしいですよね…」
「何がおかしい、キャンプ用品店から公園まで、1時間で余裕でつけるぞ」
「いや、そっちは問題ないんです。問題は、ライブ会場から、キャンプ用品店に向かうときです。
こちらをごらんください」
珠希は、1枚のポスターを出す。
「ご覧のように5/10の午後6:00~午後8:00は、祭りで交通規制がされており、一番近い道・およびキャンプ用品店付近が規制されており、タクシーを使った場合、どう運転しても、また電車や自家用車などの別の手段を用いても、ライブ会場から30分でキャンプ用品店に行き、このシリアル番号のサバイバルナイフを購入することは、絶対に不可能なんです」
「なるほど…ここまで完璧に無実を証明されてしまえば、これは再捜査が必要ですね」
田村は悔しそうに、でもなにか吹っ切れたように笑って、書類を受け取った。
◇真琴のマンション
「まこちゃん見て、事件のこと載っているよ
やっぱり、犯人は吹田武久だったみたい
推理も全部当たっていたね。
今日、小林さん釈放だってね
流石はまこちゃん」
「まぁ、いつも通り仕事をしたまでさ」
真琴はクールにコーヒーを飲むが、
「そういうわりには、嬉しそうだね。ニヤニヤしているよ」
「そういう珠希もニヤニヤ、いやぁもう破顔していて、にっこりしているな」
「うん、だってこうやってまこちゃんと事件解決するの楽しいんだもん」
「そうか、まぁ…僕も楽しいよ。
おっと、もうこんな時間だ。釈放に立ちあうんだろう!行くぞ」
そういって、コーヒーを飲み終え、スーツを着て釈放の立ち合いに向かった。
動揺しないようにしていた真琴だったが、顔を赤らめて恥ずかしそうだった。
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