私が捕まった理由 〈映画や小説ではなく本当の呪怨〉

佐藤 洋

第1話出会い

 2011年12月15日午後2時半過ぎ、俺は青森警察署に車を停め守衛の人に「子供を殺してしまいました」と言いその数時間後に捕まる。

それから遡る事10年前。


平成13年11月みずきと知り合う。

       俺23歳みずき19歳 西滝


 みずきとはナンパで知り合い、みずきは西滝にあるアパートに住んでいて、パソコンの専門学校に通いながら夜はスナックでアルバイトをしていた。

俺はその時定職に就かず派遣会社の日雇いの仕事をしていた。

 みずきが住むアパートに1度行っていてまた別の日に遊びに行く。

部屋に入る時みずきに「今日ちょっと居るけど気にしないで」と言われ何の事か分からず俺は驚いていた。話を聞くと玄関から入ってすぐの所にソファーが壁にくっ付けて置いてあり、そのソファーの上の壁から正座した状態のお婆さんの体の前半分だけが浮き出ていたという。

そして数分後には消えていったという話だった。

俺自身それまで霊というものを見た事も無かったが、漠然ときっと幽霊は居るものだと思っていたし、もとからそのような話に興味が有り、その話を聞いて恐いとか気持ち悪いと思う事は無かった。

それから色んな話をしてみずきが幼少時から霊が見えていて、見える事で困っている事が分かった。そしてその部屋でも色々あることを…。

 みずきが住むアパートがある一帯は住宅街だが静かで街灯が少なく、薄暗くて少し気味の悪い所だった。

それでもよく遊びに行くようになり、泊まって一緒に寝ているとみずきが金縛りになる回数が増えていった。名前を呼んで強く揺さぶると金縛りは解ける。金縛りにかかっている間は本当に苦しそうで、どんな感じなのか聞いてみると毎回夢の様なものを見ている様で、体が苦しくなり、見る内容も毎回違うようだった。

とても大きな桜の木が迫ってくる様な感じだったり、石が積み上げられた墓のようなものや、色白の髪の長い女が怨めしい目で睨んでくる事が何回もあるという。

それだけではなく、みずきにはともみという高校から仲の良い親友が居て、そのともみが部屋に遊びに来た時、リビングでみずきと話している時にふと寝室が気になり見てみると、白い着物を着たお婆さんが5、6人正座して座っているのを見たという。

そのともみは高校に入りみずきと仲良くなり、一緒に居るうちに霊感が身に付いたと。

本人曰くみずきから霊感が移ったと話していた。

そのアパートに引っ越して来た時、十戸以上ある部屋がみずき以外ほとんど入っておらず、初日は気味が悪いということでお父さんに泊まってもらい、その時なんとなく部屋の中を写真で撮ると凄くオーブが写っていたという事だった。(白い発光体)

 そんな感じで数ヶ月が過ぎ、はじめはお互い遊びで会っていたが、いつの間にか真剣に付き合うようになっていった。

そんなある日、俺が泊まりに行かない日にこんな事があったという。その日はいつもより少し気味の悪さを感じていた。

いつもの寝る時間になり布団に入る。眠りかけると金縛りに遭う。体は動かないが目だけは動かせる様だったが怖くて目は閉じたままだった。すると部屋の中で何かが動く音がして、またすぐに高い金属音の様な音がした。

いつもの金縛りより長く、音や雰囲気が違う為みずきは物凄く恐くなっていた。

すると「どん」と音がなったと同時に足元に何かが乗った感じがする。しっかりと重さを感じる。それが上に動いて来ている。

みずきは恐怖を感じお経を唱え始める。

 みずきは枕元にいつもお経を偲ばせていた。みずきのお婆ちゃんがみずきが霊感が強い事を心配し「何かあった時はお経を唱えたらいい」

と渡してくれたものだった。

覚えていた通りお経を唱えてみる。

足元に乗っていたものはもう胸の辺りまで来ていた。必死でお経を唱えていると重さがふっとなくなる。助かったと思い息を吐いていると突然目の前に女の顔が出て来て「そんなの効かない‼️」と言われ、みずきはそのまま気を失った様だった。

気が付くと大分時間が経っていたようでみずきは体中汗だくだった。

後から知った事だが、お経はその意味を理解して唱えてはじめて効力があると聞いた。

 みずきはスナックで働いていた為夜の女という雰囲気を持っていたが、それでも全く擦れた感じがなく、素直で優しく普段はおっとりとしているが時折見せる真の強さが有り、そんなみずきに俺は少しずつ惹かれていっていた。

 俺が部屋に遊びに行くようになり数ヶ月が経ち、このままでは駄目だと思い俺はパチンコ屋で働き始める。

それから少ししてみずきが突然引っ越す事を教えてきた。引っ越す理由は分からなかったが、衝撃の事実を教えられた。

 それはこのアパートに引っ越してすぐにみずきの親がある霊媒師に視て貰っていたということで、(その霊媒師は後に平成24年~26年くらいまで度々金曜のスマたち通称[金スマ]によく出ていた)名前は木村藤子と言い、その人の娘さんがみずきと同級生で、親同士の付き合いが昔からあった。

元々藤子のお母さんが地元で有名な霊媒師で藤子も親の力を引き継ぎ、その力を発揮する。

それはむつ市にサーカス団が来た時、3メートル以上ある大蛇が逃げ出してしまい、警察や町の人数百人総出で捜しても見付からず、藤子の存在を知っていた人が駄目元で藤子に聞くと「2日後の○時にここに行ってみて下さい」と言い、そこに行ってみると本当に大蛇が居たというのがニュースになり、それからはむつ市内では〈木村の神様〉と呼ばれる様になった。

そして今ではかなり有名な人である。

 その木村藤子にみずきの親が西滝のアパートを視て貰っていたという。アパートを視た藤子に「今すぐあのアパートは出た方がいい」と言われていたらしく、なんでもあの場所は昔小高い丘になっていて、そこにとても大きな桜の木があり、その木で自殺した女が地縛霊となり、色んなものを寄せ集め、霊感の強いみずきにいたずらをする筈だと。

そしてその桜の木のすぐ近くに墓もあると話していたという。

 その事を聞いても引っ越したばかりだった為みずきに話せずにいて、引っ越す事が決まった為教えてきた様だった。

俺はその話を聞き、金縛りで何度も見ていたという桜の木、髪の長い女、石の墓、全てが繋がり恐ろしくなった。




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