スプレーシレート
エリー.ファー
スプレーシレート
「このままずっと、ここに居続けることで見える世界もあるでしょうね」
「間違いないね。何せ、世界は常に変わり続けているからね。むしろ、同じところに、昨日も、今日も、明日もいる、と言う方が難しいよ」
「学び続ければ成長はしますが、停滞にはむしろ努力が必要です」
「積み重ねるという考え方自体が、特に意味もなく素晴らしいと信じられている節があります」
「確かに、考えすぎている。信じすぎていると言えますね」
「同じ場所から見える景色にも、変化というものが存在し、その変化に気付くことのできる人間は、景色を見続けた者だけなのです」
「もしも、成長や進化に引きずられて生きる人間がいるとしたら、それは明らかな間違いであると言わざるを得ません」
「私には希望があります。しかし、希望がなかったとしても、生きていくことができます」
「肩書には、何があるのでしょうか」
「肩書を悪とみなす考え方が、全くもって理解できません」
「実力があった結果、その証明として肩書を得ることができるというだけです。何を勘違いしているのか分かりませんが、肩書を得る方法が正式なのであれば、何の間違いもしていないと言えるのではないでしょうか」
「全く、その通りです。肩書を得るための時間を費やしてこなかっただけなのに、その責任問題を社会に押し付けて言い訳をしているだけでしょう」
「怖いと思います」
「私は、そのような考え方が、世界の亀裂になっているのだと確信しています」
私の思想に何か間違いがあるとは思えません。
どうして、人は真理を疑うのでしょうか。
信じるべきだと思いませんか。
受け入れるべきだと思いませんか。
アルコールで、誤魔化しながら生きていくのが正解だとは思いませんか。
「幸福とはどんな形をしているのでしょうか」
「私にとっては、肩書であり、実力であり、才能であり、今現在の立場です」
「未来への希望でもありますか」
「はい、その通りです」
「たとえば、自分を幸福な状態にするために、他人を不幸にしようとする考え方は、大切だと思いますか」
「社会とは、往々にして、そのような側面を持っていると言えます」
「厳しい事実です」
「しかし、それ故に対策をたてることも容易ではないでしょうか。事実、ですからね」
「今の世界は、呪いによって支配されてしまっています。誰も助からないでしょうし、その支配されているという状態を心地よく感じている人が多いのが実情でしょう」
「どうしたら、世界は呪いから解放されますか」
「呪いはビジネスとなっています。いわゆる、余り考えようとしない人たちから、いかに搾取するかを念頭に置くのが主流となっているのです」
「そもそも、ビジネスとはそのようなものではありませんか」
「そう、です。しかし、だからといって、レベルが低いであるとか、質が悪いという評価に直結するわけではないということです」
「考えるべき、ということですか」
「いいえ。考えても無駄である、ということです。何故なら、私たちはリスクもリターンもすべて享受しなければ生きていけない身となってしまったからです」
「昔からそうでしょう」
「分かっているのなら、秘密にしておいてくださいね。約束ですよ」
スプレーシレート エリー.ファー @eri-far-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます