第30話 お祭りと魔女
何とか得体のしれないきぐるみと別れることができたのだが、ミストが町のお祭り騒ぎに乗じ始めていた。
「レイン、見て! これ可愛い」
「得体の知れない奴から得体のしれない物貰ってんじゃないないわよ」
「これすごく可愛い!」
「可愛いのは分かってる。そうじゃないのその中身よ」
「中モフモフ」
「あなたね、その中魔石入ってるわよ」
「知ってる。そのおかげでねこたんとお話できる」
「何よそれ、魔道具なの?」
「ミスト様に万が一の事があってはなりませんのでノマギがお預かりさせていただきます」
「嫌! ミストが貰ったの!」
「しかし、どんな仕掛けが施されているか分かりません」
「仕掛けなんてない。ねこたんそんなことしない」
「ですが……」
「諦めなノノジ。私らが警戒しとけばいいだけだし。そもそも魔道具程度で傷なんか付けれれないよ」
「ノマギでございます。しかたありませんね」
「あ!」
2人の心配をよそにまた走り出すミスト。向かう先は何やら人だかりができていた。
猫のきぐるみから聞いた話で、ここがカスケードの町だという事は分かっていた。
ミストの調査の最終目的地でもありレインの目的地でもあった。お祭りを楽しんでいる場合ではないと焦るノマギ。
レインもミスト達と同様に空間の歪について調べようとしていた。
祭りの雰囲気のおかげで余所者が町を徘徊してても怪しまれない、絶好の機会でもあった。
しかし、ミストにとって調査よりも初めてのお祭りに興奮が抑えられていなかった。人だかりがあれば駆け寄り、首をツッコみ、わけの分からないものを買って次の屋台へと移動する。ミストにとって初めてのお祭りがワクワクしないわけがない。
そんな我儘をミストの過去を知る2人は少しぐらいはと見守っていた。
ミストはとある貴族の妾の子であり、母親はミストを育てることなく教会前に捨てて行った。
6歳のときに教会にある書物を全て暗記していることが分かり、天才の片鱗を見せる。あわてたシスターがステータス検査を受けさせ、高い魔力もある事が判明し7歳の時に特例を受け魔法学院に入学。
9歳で普通の魔導士の指導では足りなくなり、学院長が直々に教えると言う事態になった。
学院長が教えられる全ての事を3年で吸収し12歳で卒業。
国家魔導士への道へ進んだのだが、そこで待っていたのは妬みや僻み。
しかし、実力でねじ伏せ六大魔導士へと推されていったのである。ここでやっとレインなどの対等な相手と会うことが出来た。
毎日大人しく勉強することが当たり前で遊ぶことを知らないミストが、子供らしくはしゃぐ姿を2人は止められなかった。
「私は仕事じゃないしお酒でも飲もっかなー」
「ここらのお酒など高が知れています。大魔導士様ともあろう御方が安酒など」
「私はね全てのお酒を平等に愛すると決めているんだ。値段で愛は変わらないんだよオノジ君!」
「ノマギでござます。しかしそれだと、私はどうしたら……」
「君は仕事だろ? しっかり頑張んなさい。じゃ、ちょっと飲んでくるねー」
ミストの事を見ていないといけないノマジはグッと耐え。この仕事が終わったらいい酒を飲むと誓ったのである。
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