第23話 ここは女神様のおひざもと③

 救助者349人

 内 重症者23人 

 

 捕虜2238人


 重症者にはお手製のエクスポーションで回復させるが、戦場での恐怖までは回復できない。

 軽症者や無傷の人はこっそり町の広場や公園などに小分けして解き放っていく。

 

 空間収納内は時間が止まっているのでいきなり違う場所に来た感覚になるだろう。

 混乱する者もいたが、最終的にはアヤフローラ教国の国民らしく神の御加護ということで収まりそうだった。


 問題はこの捕まえすぎた捕虜達。一体どうしたものか。

 この世界にはそもそも捕虜に対する扱いについての約束事が建前上あるが、大体は拷問にかけ情報と取った後、奴隷になるか家畜の餌になるかだ。仮にそのまま敵国に返しても新たな戦力の補充になるだけになってしまう。


 だからこそ困っている。


 ガイドブックを開いてみても良くて奴隷という選択ぐらいかなと思った。


 今回の一件、最終的な責任はこれを指示した国のお偉いさんに取ってもらうと思っている。

 なので、まずは捕虜たちと平和的に話し合いをしてみようと試みた。

 


 空間収納内に入りると、時の止まったままの捕虜たちがズラリと並べられている。

 収納する瞬間の態勢をとったままなので、剣を振りかぶる者や松明で火をつけようとしているままで時が止められている。


 捕虜の武器防具アイテム類は全て没収。更に捕虜全員に対してをナナスキルを使い弱体化させる。


 ”弱体化 Cat0”

 ”一定範囲内に存在する敵のステータス値を全て1にします。敵のスキルや魔法は一時的に使用不可になります。適用は任意です。適用を取り消すとステータスは元に戻ります”


 ステータスオール1は弱すぎるので本当に気をつけないといけない。

 私のクシャミで死者が出る可能性すらある。


「HPぐらいはちょっと増やそかな」


 時間停止を解除し意識が戻ったように動き始めるが、予想通り大混乱。発狂し敵の罠だとか大魔法だとか適当な言葉が飛び交っている。比較的冷静に状況を判断しようとしているオジサマに声をかける。


「ここで一番偉い方はどなたかしら?」


「むむ、この中隊の隊長を任されているブハッサと申す。お嬢ちゃんどこから来た? 一体ここはどこなんだ?」


「私は、フローラ。アヤ・フローラと呼ばれていますわ。ここは私の庭ですの」


 本名を名のる気がなかったので神の名を拝借させてもらった。


「なんと!! 我々は神の怒りに触れてしまったのか。なんてことだ。ここの全指揮権を持っているのはダン大佐だ。お連れするのでここで待っていてくだされ」


「かしこまりましたわ」


 なんだか話が早そうだぞ。神の名を借りたのは効果的だったかもしれない。周りの兵士達も不思議そうな目でこちらを見ている。一応ドレスにも着替えてあるので見た目はただの貴族のお嬢様だ。


 人混みをかき分け、ブハッサと名のった男が偉そうな男を連れてくる。


「貴女がアヤフローラと名乗る者で間違いないか?」


「そうよ。あなたは?」


「この連隊総隊長 ダン大佐だ。いくつか質問をいいかな」


「どうぞ」


「ブハッサがあなたを神だと申しておる。それは真か?」


「知らないわ。私は私」


 神だと言って。はいそうですか、となるわけがない。


「ここはあなたの庭だそうだな。見渡す限り真っ白だが、どうやったら出ることができる?」


「もう二度と争いをしないと誓える方だけお帰りできるようにいたしましょう」


「誓えないとなるとどうなる?」


「永久にここに居たいならそうしてください」


「外に出て誓いを破ったどうなる?」


「まずあなたで試してみましょうか?」


 偉そうな顔つきから、いぶかし気な顔つきになる。


「ん、ん…… 遠慮しておこう」


「先見の明がおありのようですね。またここに来ます。他の皆様も外に出るかどうか考えておいてくださいね。あ、それと暴れてはダメですよ。あなた達すぐ死んでしまいますから」


 全員が外に出ることになっても弱体化を解かない限り戻ったところで戦力外だ。低いステータスでは当然。弱者の立場になったことを捕虜達への罰にしようと思った。


 空間収納から戻ると外は日が午後の昼下がりといったところか、ちょっと行き来しただけでも結構時間がズレてしまう。

 もしかしたらミーニャ達も戻ってきてるかもしれないと思い猫目亭に無事を伝えに行った。

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