第18話 実家のコピーエーナ①

 コピーエーナはオリジナルのエーナと別れてから、カスケード家の三女として励み磨きをかけていた。父親やロットに冒険者を諦めたのかと訊かれたことがあったが、「もう未練はありませんわ」と返していた。


 それならば一度教会へ行こうと薦められたのだが、何かを疑われている感じがしたので丁寧にお断りをしておいた。

 

 しかし大人しくしている事にも一週間で飽きはじめうずうずしてくる。


 私の存在価値はオリジナルの為、家族の為ここにいるのは理解しているが、それでも何かできないかと思考を巡らせる。記憶はオリジナルの記憶を引き継いでいるようだ。なのでガイドブックに書いてあった職業のきぐるみ士について思い出し、そして思いつく。


(中に入ってる人がいなくても大丈夫な気がする)


 ナナスキル発動 スキルフリーを使用する。


 ”現在この世界で確認されているスキルを自由に取得できます。

 発動条件があるスキルは条件は無効化され効果のみ強制的に発動することも可能です。”


 スキル、マリオネット、千里眼、裁縫の達人を取得。


 ”スキルアップ・スキルダウン Cat0” 

 ”対象のスキルレベルを任意のスキルレベルに変更できます”


 によりマリオネット、千里眼、をSSS+に変更


 ラルンテにぬいぐるみを作ってみたいとお願いしたら、裁縫に興味を持ってもらえたと思ったらしく大量の布と綿を用意してもらえた。

 ラルンテは教えたがっていたが、どんなものを作るのかをあまり言いたくなかったので1人で作ると言い張った。


 大きさは私と同じぐらいで、見た目は大きな猫のぬいぐるみだ。柄は白黒のハチワレっぽくしてみた。スキルマリオネットで二足歩行させてみるとこれまた可愛い。このままだと本当にただのぬいぐるみなので戦闘できる程度に補強してみることにした。


 まず胴体の中央に私自身の魔力だけで作った疑似魔石を埋め込む。これで遠隔で動かしながら魔法も少々使える優れものになった。


 布表面を守るように魔法障壁を常時展開させるので何もしなくても三日で疑似魔石は蒸発してしまうかもしれない。それでもこのぬいぐるみ、猫君1号が日常に刺激を与えてくれると信じていた。


 日が沈み夜になるのを待つ。窓の外には誰もいないことを確認するとぬいぐるみを放り投げる。私はベットに横になり千里眼とマリオネットを発動させる。千里眼の視点を猫君1号に合わせる。そしてマリオネットで歩かせるとまるでゲームだ。


 リアルワールドをゲーム感覚で楽しめる。ある程度操作に慣れるため庭をでて町の外まで移動する。視点は自由に変えられるので上空からの視点に変えれば周囲を見渡すことができるのもいい。人と出会わないようにするのにも役に立つ。


 町を出ると、はぐれゴブリンを見つけたので戦闘を試してみる。さすがのゴブリンも見たことない物体に驚き、じりじりと後ずさりしながら警戒している。

 逃げられては面倒なので一気に近づき殴りかかる。中身は綿だが、表面は魔法障壁で強化されているおかげで硬い拳になるので1発OKとなった。

 ゴブリンをそのままにもしておけないので空間収納を試しに使ったら問題なくしまえたので猫君1号を十分に運用をしていけると確信が持てた。


 後は家の裏口まで移動させ、そこからは自分で回収に向かうだけ。

 家の中で大きなぬいぐるみを持ち歩く姿をメイドに見られたが、


「あら可愛いですね」


 とか


「お気に入りですか?」


 などと言われるだけで怪しまれていない事から十分な成果だと言えるかもしれない。


「これで私も操りきぐるみ士として冒険者デビューだわ!」


 次の日は昼には習い事が終わりそれからは自由時間となったので、庭で読書と見せかけ視点は猫君1号をメインとしていた。


 昼の町をきぐるみが歩いていると、大人たちからは妙な視線を向けられ、こども達は好奇心を向け寄ってくる。こどもが寄ってきたときだけは魔法障壁を一時的に解除してふわふわのぬいぐるみで包んであげるのだ。


「おい、なんか喋れよ」


「誰が入ってるんだ?出て来いよ」


「チャック無いな。破ればいいのか」


 中には、乱暴な子供もいるが、そんな子にはちょっとお仕置きをしてきぐるみ士の力を分からせるしかない。


 ただ喋る事ができたら便利だなとは思ったので改善をしようと思う。


 翌日には会話の機能は魔石を2個埋め込むことで解決できた。振動を受け取ったり、発したりできればいいのだからそこまで複雑には成らずに済んだ。 ちょっと声質が変化してしまうが十分聞き取れる。


 そのおかげもあってか、子供達との和気あいあいのふれ合いをしていたらいつしかガキ大将的ポジションへと昇格していた。

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