第10話 家出娘 家に帰る①
空間収納内に入ると既視感に襲われる。
(ここは……)
転生神の空間と似ていているからだ。光源もないのに白く明るく、暑くも寒くもない。
振り返るとモンスターが瀬然と並べられている。ナタの森で収納しまくったモンスター達だ。改めて見てみると恐ろしい数がいる。
全て死んでいてその直後に時間を止めてあるので、どのモンスターも死にたてピチピチだ。
隠れる事はできたのだが、グランジの様子を確かめる事ができない。そろそろ大丈夫かなと思っても、収納から出た時に見つかっては意味がない。
(この中で時間停止の魔法が使えているなら、空間転移魔法も使えるはず)
ここなら魔法使用の際に出る光や音に気を遣わず使用できるので、収納空間と自室の空間を繋げることができると踏んだ。自室と裏口を空間転移魔法で繋げていたので、その魔力を頼りにこの収納空間と強引に繋げようと考えたのだ。
まずは自身の魔力を探る。
が、全く感じ取れない。この空間収納の外側を感じ取れないのだ。
これだと移動先の座標を把握できない。
仕方がないので空間収納を突き破るがごとく魔力を飛ばしてみるが、まるで手ごたえがない。空間収納の外側が世界に繋がっていないのかもしれない。
要は空間が違うのだ。
出入りは使用者のスキルで繋げられるが、それ以外の力では内側から抜け出せないのだろう。
(まるで牢獄みたい)
それでも、簡単に諦めることはしない。私のステータスの数値で高いのは魔力と精神と知恵。魔法はイメージが大切。例のウォータージェットのことが載っているページにも書いてあった。
ならば魔力で次元の壁に孔を開けるしかない。そのためには魔法適性のない属性でも頑張るしかない。
両手を合わせるギリギリのところで止め、その内側に魔力を圧縮させていく。
使用する属性は重力。
そして圧縮させた魔力をさらに小さく小さくしていく。すると輝いていた魔力が次第に暗くなり砂粒よりも小さな黒い点を完成させた。
空間に孔を開けたのだ。
その先がどこに繋がっているのかはすぐにはわからなかったが、その先で転移先に残してある自分の魔力をとらえることができた。
「やった!」
空間を超える空間転移魔法をなんとか繋げることができたのだが、想像以上の魔力を消費し酷い魔力疲れが起きてしまいその場に倒れてしまった。
ステータスを開くと行動不能になっていたのだ。
このままでは帰れない。ほとんど空になるまで魔力を使ったのは初めてのことで、魔力疲れがここまで苦しいものだということも初めて知った。
(ここは安全だし、暫く横になるか……)
回復手段にそこに転がるピチピチなモンスター達を使えないか考えていた。
誰にも見られないこの場所だからこそスキルのアブソーブを思う存分発揮できる。
今まで主に吸収の能力しか使う事がなかったが、変換と付与をまだちゃんと試せていなかった。
まずは手前にあったゴブリンから試してみる。HPは吸収されて0になっているが肉体ごとスキルに吸収させる。
ゴブリンの体が一瞬で消え、魔力エネルギーへ変換、そして自らに付与させる。
(2か)
ステータスで回復分を確認したところMPが2しか回復していなかった。
ゴブリンだからと言うこともあるかもしれないが変換効率の低さを実感した。
それでも素材はまだまだたくさんあるのでまとめてどんどん消化していったのだ。
3000体以上いたモンスターのほとんどが魔力へと変換され自分に付与していく、事前に吸収しておいたHP分のエネルギーもついでに変換させ合計で10000程度はMPが回復できた。
疲れもかなり和らぎ、歩く分には問題ない。
残したモンスターは、意外に美味しかったホーンラビットを30匹と、元から1匹しかゲットできなかったプラチナスライムというモンスターだ。
このプラチナスライムを鑑定したところグリーンスライムの特異個体の中でもかなりレアであり討伐難易度は上級モンスターに匹敵するほどらしい。
理由は所持しているスキルが魔法耐性Cと物理耐性Cでさらに耐性スキル強化を持っていることで、魔法と物理攻撃が一切通用しないモンスターになっていることにある。
その上スピードがスライムとは思えないほど速く、見つけてもアッという間に逃げてしまうからだ。
討伐するには特殊な溶解液を浴びさせる方法しか今のところ発見されておらず、討伐できたとしてもほとんど溶かしてしまうので素材が残りづらいのが欠点になる。
それでも素材自体は優秀で、防具にすれば魔法攻撃と物理攻撃を大きく軽減でき、剣などの武器に加工すれば魔法を切る事ができるレアやユニーク以上のアイテムを作る事ができるそうだ。
なのでこのプラチナスライムが一番強そうなので、冒険者としての資質を示すには十分だろうと思いこれだけ残したのだ。
「それじゃー我が家に帰りますか」
頑張って繋げた空間転移魔法。そのかいもあって自室まで一歩の短い短い帰路についたのだ。
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