2-5
昨日とは違ってとても静かだった。
銃声の音も聞こえない。
聞こえるのはセミの鳴く声。
(昨日はセミの声なんてしなかったはずなのに。もしかしたら気づいていなかっただけかもしれないけど。)
それぐらい昨日のひみは頭の中がごちゃごちゃだった。
(少しは落ち着いたかな。まだまだわけがわからないことばっかだけど。)
みなこは特に周囲の様子を気にすることもなく歩いて行く。
ひみとけいはその後ろからついて行く。
けいはキョロキョロと辺りを見渡している。
「けい、大丈夫?」
「?大丈夫だよ。ひみこそ、少しは落ち着いた?」
「うん。なんか今は自分でも驚くくらい落ち着いてるんだよね。」
「それはよかった。」
前を歩くみなこが言った。
(かなり先を歩いているようだったけど、聞こえていたみたいだ。私ってそんなに声大きかったっけ。)
けいも少し驚いたようだった。
「2人は付き合ってるのかい?」
「いっ、いや、私たち幼馴染なんです。」
「そうか。失礼。」
「小さい頃から一緒にいるとお互い言葉を交わさずとも理解し合える。君たちはどうかな?」
「そうですね。だいたいは。」
はははっ、とけいも苦笑い。
「そうか。そろそろ最初の目的地に着くよ。」
みなこは立ち止まり、上を見上げた。
ん?
ひみとけいもみなこさんを見て立ち止まり、そして上を見上げた。
その時。
「なんだ。お前ら」
どこかからか声が聞こえる。
子供のように高い声だがどこか荒々しい声。
どすん。
「うわっ、なに?」
けいが叫んだ。
けいの上に何かが覆いかぶさっている。
人?
よく見るとそこにはフードを被った少年がいた。
そして今にもけいに噛みつきそうになっていた。
「タロ、やめなさい。」
その時みなこは言った。
「みなこさん。すぐ後ろに変な奴いるんだから気づかなきゃダメだよ。」
「変な奴じゃない。わたしたちの仲間だ。」
「えっ?」
タロと呼ばれた少年はけいの上から飛び退く。
「どう言うこと。こいつら僕らの味方?」
「そうだ。わたしたちの新たな仲間だ。」
「こんな奴が?」
タロと呼ばれた少年は私とけいを交互に見つめる。
「うそだ。」
「私が嘘をついていると?」
みなこの声のトーンが変わったその時少年はビクッと肩を揺らした。
「あ、あの。よろしく。僕タロって言います。」
少年はフードを取って手を差し伸べてきた。
フードを取った少年には猫のような耳がついていた。つけ耳だろうか。
「うん、よろしくね。」
ひみと握手した後、けいとも握手を交わした。
「そう言うことだ。こいつはタロ。わたしたちの仲間だ。ちょっと子供っぽいが仲良くしてやってくれ。」
みなこはニコッと笑った。
「そんで何しにここにきたの?」
「この子たちはこの世界のことをよく知らないようでな。街の案内をしていた。」
「案内って、こんなに危ないとこで出歩くなんて。ほんとに。みなこさんは危ない人だなー。それともそれとも、2人すごい強いとか?」
タロはふたりをキラキラした目で見てくる。
「いやいやいや。そんなことない。私たち全く強くないよ。」
2人で全力で否定した。
「えー。そうなんだ。気をつけてよ。2人とも。みなこさんだってそんなに強くないんだからね。」
そうなのか。
「あっ、ちょっと待って。言ってる側からあいつらが来ちゃったみたい。僕の後ろに隠れててね。」
タロの耳がぴょこんと動いた。
(もしかしてつけ耳じゃない?)
みなこがふたりの背中を押した。
「さぁさぁ、危ないから隠れとこうねー。」
ふたりは壊れかけのブロック塀に隠れて顔を出す。
重い足音が聞こえる。
武装した兵士が3人と、ロボット。
1人だけ明らかに大きさが違う。
(あれは。)
「あれはあいつらの兵器の一つさ。大丈夫。タロは強いからね。君たちも見て学んでくれよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます