天才軍師令嬢の軍略無双 ~ゲーム世界に《意識だけ》転生した私、前世のゲーム知識で世界最強の国家を作ります~
葵すもも
第1章 【天才軍師令嬢×最強軍師女子高生】
§001 出会い
「――アーデルヴァルト・フォン・エディンビアラの名において宣言する。この場を以て、ウィズリーゼ・エーレンベルクの国家軍師の任を解き、同時に貴様との婚約も破棄すると」
「そんな……」
誰もが予想をしなかった状況に、一瞬にして静まり返る会議室内。
そんな無慈悲な宣言を発したのは、いかにも王族然とした風貌の金髪の青年。
相対するは、目に涙を溜め、必死に唇を噛みしめる、蒼天の如き水色の髪を持つ少女。
そんな二人を見て、私は思わず叫んでしまった。
どうせ私の声など聞こえるはずがないと思って。
――『は? 何言ってるのこのバカ王子! ここでウィズを追放したら、何千、何万もの人が死ぬんだからね!』――
「バ、バカ王子……?」
しかし、水色の髪の少女には私の声が確かに届いていた。
『え? ……私の声が聞こえるの?』
これが私、早乙女クルミと、後に歴史に名を刻むことになる天才軍師令嬢、ウィズリーゼ・エーレンベルクとの出会いだった。
――意識だけが転生したこの世界で、私が貴方を見つけられたことは、まさに運命だと思う。
***
私、早乙女クルミは『軍略』というものに魅せられていた。
軍略とは、戦争における意思決定のこと。
『作戦』とか『戦略』といった言葉にも置き換えることができる。
このような軍略を司る者は一般的に『軍師』と呼ばれ、代表的な軍師を挙げるとすれば、諸葛孔明や黒田官兵衛など、誰もが一度は耳にしたことのあるほどの歴史的な偉人が多い。
それなら私も大層な人間なのかと思いきや、大変申し訳ないことに、私は戦争を知らない国で生まれた、ごくごく普通の女子高生だ。
普段は近くの公立高校に通い、放課後は近所のファミレスでアルバイトをして、夜はYouTubeを見ながら友達と電話をする。
自分で言うのもなんだけど、性格は割と明るく楽観的な方だし、友達も多い方だったと思う。
まあ、彼氏はいなかったけど。笑
そんな華の女子高生生活を送っていた私が、なぜ『軍略』に魅せられるようになったかというと、それはとあるスマホゲームがきっかけだ。
その名も『キングダム・クロニクル・オンライン』。
略して『KCO』。
KCOは仮想現実世界を舞台とした領地占領型シミュレーションで、リリースから1ヶ月で1000万ダウンロードを突破した、今最も熱いスマホゲームだ。
KCOの世界では、プレイヤーは一人の兵士として架空世界『ミズガイア』に降り立ち、様々な国家の軍に所属して敵国の領地を占領しながら世界統一を目指す。
KCOの本質は自身の装備を強化して兵同士の強さを競い合わせるところにあるのだが、私が興味を持ったのは全く別の点だった。
私がKCOに魅了されたのは――兵をどのように導き、マネジメントし、知謀を用いて相手をいかに出し抜けるかという軍略の幅広さだ。
KCOがスマホゲームである以上、重課金者は圧倒的に有利だ。
お金さえあれば、ガチャもたくさん回せるし、強力な装備を揃えることもできる。
ただ、私は女子高生で自由に使えるお金も少ない。
というか、スマホゲームに課金できるお金なんて本当にアルバイトで稼げる範囲内だけだ。
そこで私は考えた。
どうすれば課金せずに、このゲームでのし上がることができるかを。
そして、私は気付いた。
――前線で戦える力がないのであれば、後方から指揮をする者になればいいのだ――と。
そこで私は早速、軍略書で名高い『孫子』を購入して兵法の基礎を学び、それだけでは飽き足らず、歴史的に有名な軍略書と呼ばれるものを手当たり次第に読み漁り、加えて、組織マネジメント論とかリーダーシップ論とか組織をいかにうまく回すかのハウツー本にも手を出した。
もちろん全てを理解するに至ったわけではないけど、大抵の軍略書ならそらんじて言えるくらいには通読したし、そんな努力の甲斐もあってか、私は自身の所属する国家の『軍師』に任命された。
そうして、私は更に深く深くKCOの世界に没頭していった。
私はKCOをやっている時が、この上なく楽しかった。
ゲームの中の皆は私を頼ってくれる。
戦争中は私に意見を求めてくれるし、普段はくだらない雑談にも付き合ってくれる。
尊敬もしてくれるし、いじってもくれるし、チヤホヤもしてくれる。
それに自分の考案した軍略が見事にはまって戦争に勝利できた時なんかは本当にめちゃめちゃ嬉しかった。
これらがある種の優越感や自己肯定感につながって、私はもうリアルの生活には戻れなくなっていた。
所詮はゲームだろと思うかもしれないけど、私にとってはKCOこそが本当の世界であり、KCOこそが私の生きる場所だった。
そうして、迎えたKCOで開催される世界大会。
私達の国家は栄えある『第一回KCO世界大会』で――世界統一を成し遂げたのだ。
そう。ただの女子高生で、無課金で、本当の戦争など知らない私が、世界最強の国家の『最強軍師』という称号を手に入れたのだ。
その日のゲーム内のチャットはお祭り騒ぎ。
緊張から解放された私も少し羽目を外しすぎてしまって、歓喜の宴は、深夜から小鳥がピヨピヨと鳴き出す時間まで続いた。
そんな、全てに満たされ、全てを手に入れた徹夜明けの通学中――私はトラックに敷かれて死んだ。
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