ダンジョンが出来たのでご飯に困らなくなりました

゚針卍

一章

第1話 プロローグ

 寒い……。

 家の外に出されてから何時間だったんだろう。


 私は寒さで赤くかじかんだ手に、白い息を当てる。しかし、それは一向に意味をなさない。


 (もう、ご飯何日食べてないのかな……)


 体は痩せ細り、頬は痩けてる。これを見るだけで普段から食事を貰えてないことが分かる。


 (あぁ、何だか眠くなってきたなぁ……)


 寒さで意識が朦朧もうろうとしてく中、自分の前方が明るく光っていることに気づく。


 私は落ちそうになる瞼を無理やり開けて前方を見た。そこには言葉で説明するのが難しいが、簡単に言うなら丸い光が蛍の光のようにゆらゆらと揺れていた。


 きっと夜も遅い。これは夢なんだろうと思う。

 光はまるで誘うようにゆらゆらと揺れて、玄関から外に出ていく。

 この時私は、ついて行かないといけない。そう思った。


 寒さで凍える身体を無理やり起こし、倒れそうになりながらも必死で光を追う。

 何分歩いたんだろう。きっと子供の足じゃ、そんなに遠くには行けていないとは思う。

 光を追い続けてしばらくすると、洞穴のような場所に辿り着いた。


 光は穴の中に入っていく。

 この時私は、こんな穴なんてあったか?とか、ここに入って危険じゃないのか?だとか、そんな事なまるで1ミリも考えていなかった。


 ゆっくり、倒れないように足を前に出して、自分も穴に入っていく。

 穴に足を踏み入れると、頭の中になにか音が鳴った気がした。

 それに驚いた私は、ここで初めて転んでしまう。


「いったぁい……」


 既に立ち上がる力など、幼い体には残されていない。

 そのまま、泣きそうになるのを我慢して横になっていると、ズズズ……ズズズ……と何かを引きずるような音が小さく聞こえる。


 私は音が鳴る方に目を向けると、そこには子供の顔くらいの大きさの青いゼリー状の物が


 私はそれが何なのか全く理解ができなかった。だが、何故か分からないけれど、それを見ているとお腹がすいた気がする。


 これは元々の飢餓なのか、この青いゼリーが原因なのか分からない。

 だが、次の瞬間私は――――。




 ――――ピピピピピピピピピピ。


 勢いよく降ろされる手。

 その不快な騒音は、それにより音を止める。


 (夢か……でも、なんか懐かしい気がしたなぁ)


 私は穂満 恵ほみつ めぐみ

 髪は黒髪、肌は白色、そして身長は150cmの小柄なレディだ。

 胸のサイズはって?その質問は命をベットにしてるんだろうなぁ?


 こんな私だけど今年で9月で19歳になる。つまり、2022年の法改正に合わせるなら成人しているということだ。

 そして、今日は高校を卒業して2日目。探索者免許講習を受けれる日になった。


 ベッドから身体を起こし、背を伸ばす。


 (やっと、探索者になれる!)


 目も冷めてきて、気合いが入り直す。ベッドから降りて洗面所に向かい、顔を洗う。腰まで伸びた髪をかして薄く化粧をする。


 その後は、昨日の夜にはセットしてあった炊飯器から2まるまるお米をよそい、適当に冷蔵庫からおかずになりそうなものや常備菜を並べていく。


 きっと目の前の食卓には何人で食べるんだろう、といった数の食事が並んでいるが、これは割と平常運転だ。


「いただきます!」


 そう掛け声をしてからご飯を食べ始める。30分もすればそのおおよそは食べ終わり、おそらくあと5分もせず完食するであろう。


 きっと、幼少期に食べさせて貰えなかった反動に今食べれてしまっていると、私は思っている。

 でも、仕方ないのだ。だってご飯ってこんなに美味しい!


 いくらでも食べれる。実際、9割ほど食べ終わっているが腹七分目――と言うよりも満たされたことがない。


「ごちそうさまでした!」


 朝食を食べ終わったら、食器を洗い、現在の時刻は九時を少し過ぎるかのあたり。今から家を出れば10時前には探索者協会にはたどり着く。


 今日は座学と聞いているので少しオシャレしていこう。そんな気持ちで黒目の赤いミニスカート、上はすこし風が冷たい春に合わせて薄着の白のブラウスにこちらも黒のポンチョを羽織る。いわゆるロリータファッションと言うやつだ。


 靴は歩きやすさで赤いローファーにして、外に出る。

 朝日が気持ちのいい光を浴びせてくれる。


 私の名前は穂満 恵ほみつ めぐみ。夢はダンジョン配信者になって美味しいご飯をいっぱい食べて、みんなを笑顔にすることだ。

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