女装がバレたら、モテ期襲来!?

葉っぱふみフミ

第1話 スカートとの出会い

―――スカート履きたい!


 朝日健太郎はいつのころからか、そう思っていた。スカート履いてみたいと思った、一番古い記憶は小学生のころまでさかのぼる。

 クラスの女子が着ていた黒のミニ丈プリーツスカートを見て、可愛いと思うと同時に自分も着てみたいと思ってしまった。

 でも、男子の自分がスカートを履くことはできないと分かっていて、友達にも母にも相談できないままの状態が続いていた。


 中学時代はセーラー服に、高校時代は女子制服のプリーツスカートに憧れながら過ごした。彼女ができたら着せてもらおうと考えたりもしたが、まず彼女自体ができなかったので、その妄想は叶うことはなかった。


 スカートを履きたいという願望は妄想の中だけにとどめておいて、現実では普通の男子高校生としての生活を送っていた。


 ◇ ◇ ◇


 大学生になった健太郎は、地元をはなれ一人暮らしを始めていた。校則に縛られた高校時代と違う自由を満喫しながら大学生活を送っていた。


 大学生活にも慣れてきた11月の朝、健太郎は目覚まし時計のアラームで起きるとその寒さに思わず、布団に戻りたくなってしまった。

 しかし学校の時間は迫っており二度寝をしている余裕はない。しぶしぶ朝ごはんを作りながら、そろそろ暖房器具、何か買わないと思った。

 賃貸の部屋にはエアコンはついているが、それに頼ると電気代が高そうだ。そうだ、ストーブにしよう。それだとお湯も沸かせるし、おでんなど煮込み料理も作れて一石二鳥だ。


 その日、大学の授業が終わると帰り道にあるリサイクルショップに寄ることにした。ストーブなんて使えればいいので、中古で十分だ。というか、新品を買う余裕はない。


 お店に入りいくつか見て回った後、手ごろな値段のストーブをみつけることができた。それを両手で持ちレジへと向かう途中、「セール品」と書かれパイプハンガーにかけてあるスカートが目に入った。

 大学に入ってからは慣れない一人暮らしの生活に追われて、スカートを履きたい願望は忘れていた。一人暮らしだからこそスカートを買えば、誰の目も気にせずスカートを履ける。


 平日の昼下がりということもあり店内には人はまばらだ。誰もこちらを見ていないことを確認して、スカートを手に取った。

 グレーのスカートで、裾ついてあるレースが可愛い。ウェストはゴムだから、多分サイズも大丈夫だろう。値段はセール品ということもあって、格安。

 欲しくなってしまい、ストーブと一緒にレジに持っていくことにした。


 男がスカートを買うなんて不審がられないかなと心配していたが、杞憂だった。やる気のないアルバイトの店員が、事務的にバーコードを読み取り値段を告げた。会計を済ませると、すばやくスカートを鞄の中に入れ、ストーブを抱えて店を出た。


 家に戻るとすぐに鞄からスカートを取り出した。子供の時から憧れていたスカートが、今自分の手にあると思うとそれだけで興奮してしまう。

 ズボンを脱いで、スカートを履いてみた。ズボンにはない裏地があって、それが妙に気持ちいい。外気が入ってきてスース―する感じもするが、太ももが直接触れ合って生暖かい感触が伝わってくる。

 

 憧れのスカートを履けた嬉しさと、男子なのにスカートを履いている背徳感がまじりあって、このまま着ていたいような、すぐに脱ぎたいような変な気持ちになってくる。

 心臓の鼓動も速くなってきて、なぜか下半身も興奮し始めた。結局、自己処理をするために初めてのスカートは15分足らずで終わってしまった。


 ◇ ◇ ◇


 初めてスカートを手にしてからは、すっかりその世界にはまってしまった。バイト代が入るたびに、リサイクルショップへ行ってスカートを買った。

 プリーツやシフォン、ロングやタイトなどスカートは種類が豊富で、持っていないタイプのスカートをみると欲しくなってしまう。


 最初はスカートを履いていることだけで満足していたが、次第にトップスも欲しくなってきて買うようになった。

 女性とのサイズ表記の違いで、小さかったり大きかったりすることもあったが、次第に自分のサイズが分かってくるようになった。


 クローゼットは男物よりも女物が占めるようになってきた。彼女ができて見られたらどうしようと思ったこともあったが、まずそれ以前に彼女自体できることがなかった。


 どうやら俺はモテないようだ。大学3年の時に悟った。こちらが好きになっても、相手は好きになってもらえない。そのたびに傷つく。

 もういいや、そう思っていつしか彼女を作ろうと思わなくなってしまった。女装していれば、彼女のいない寂しさも紛らわせることができた。

 女の子に着替えて鏡をみれば、理想の女の子が映っている。それだけで十分だった。

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