題名が長いのはちょっと…(ある文芸部員の独り言)

@aozora

第1話 書き出しってちょっとモヤる

俺の名前は高橋良平、どこにでもいる平凡男子だ。

今日から俺も高校生、目標は初彼女get!!

中学時代のダサ眼鏡も、美人店員さんお勧めのオサレなものにクラスチェンジ。

髪も美容院で茶髪に染めてバッチリカット。美容師のお姉さんも「とってもカッコいいですよ♥️」って言ってくれたし、もしかしなくても惚れられちゃった?

ザ・高校生デビュー、

俺の青春はこれからだぜ♪



_____________


「先輩~、一章の書き出しってこんな感じでいかがっすか~。」

「うーん、何かありがちっちゃありがちだけど、高橋はラノベ書くの初めてなんだし、まずはどんな形でも一本仕上げてみるのを目標にしたら良いんじゃないか?」

先輩はノートパソコンの画面を見ながら、そうアドバイスをくれた。


「それもそっすね。ま、気負わずにやってみます。」

俺は、再び画面とのにらめっこを開始する。


「所で先輩。」

「なんだね、後輩。」

読みかけの新作ラノベから顔をあげた先輩に、前から気になっていた事を聞いてみた。


「前から気になっていたんですけど、ラノベの主人公って、なんでみんな独り語りで自己紹介してるんですか?」


「ん?なんでそんな事聞くんだ?」

先輩はさも当たり前の事を聞かれたからか、きょとんとした顔をしている。


「いや、普段頭の中でも自分の事名前で呼ぶ事って無いですよね。

いくら読者に紹介するからって

"俺の名前は高橋良平"(キリッ)って、ナルシストでも末期の奴ですよ。」

少なくとも俺の周りには居ないタイプだ。


「確かに。今まで読者の視点から物書きとして考えていたが、言われてみればかなりヤバイ奴だな。」

"なるほど、重度の厨二病か?"と、腕組みをする先輩。


「あと、平凡な男子って何ですか?

どこにでもいる高校生とか言いながら、複数の女性と絡むって、そんな奴見たこと無いですよ。」

いや、マジふざけんな?

今の俺は、全国男子高校生の代弁者だ。


「どうどう、ちょっと落ち着け。

その辺は読者に訴え掛けなければならん都合上、媚びてると言われても否定はせんがな。」


少しエキサイトしてしまったようだ。水筒のむぎ茶を飲んでクールダウン。

よし、俺は冷静だ。


「それを言ったら高橋。主人公の名前が"高橋良平"って、お前も中々のナルシスト具合じゃないか?」

ペットボトルのお茶を口にしてから、こちらをニヤニヤ顔で見る先輩。

う、なんかムカつく。


「あ、それは書き出しに悩んでいた時に先輩が、"自分の願望を投影させると書きやすいぞ。"ってアドバイスくれたんで、参考にしてみました。」


「お、おぅ。それは何と言うか、光栄かな?うん。」

顔を反らし急にわたわたし出すって、どうしました?先輩も難しいお年頃ですか?


「何すか?先輩、照れてます?」


「うっ、うるさい。ソコは気付かない振りをするのが配慮ってもんだぞ。

そんなんだからお前は彼女が出来んのだ!」

ストレートな問いかけに、思わぬ反撃。止めて、その一言は後輩殺しよ。


「痛いところを突きますね。結構気にしてるんで、勘弁して下さい。」

心のダメージに比例して仕事を放棄する表情筋。そう言えば、最近お婆ちゃんの墓参り行ってなかったな~。


「お前、顔がマジだぞ。表情失くすの止めろ。怖いわ。」


ビビる先輩を放置して、"帰りコンビニ寄ってくか"と、この後の予定を考えるのであった。

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