サラリーマンと暗殺者の二重生活!?洗脳メイド真姫と秘密の社交クラブで繰り広げられる波乱の日々

夜野ウナギ

社交クラブの秘密

夕暮れ時、田中太郎は地味なサラリーマンとしての仕事を終え、一旦自宅に戻った。夜の仕事のために、簡単な食事を済ませ、スーツからタキシードに着替えた。


太郎は車で古い洋館へと向かった。彼の秘密の顔を持つ場所だ。洋館は夜になると、秘密組織の一員として運営する社交クラブに変わる。彼はその館の主であり、その名を「クラブ・ヴェルディ」と名づけた。ここで情報交換が行われ、ターゲットの暗殺も行われる場所だった。


「太郎様、おかえりなさい」と、玄関でメイドの杏子が迎えた。


「ありがとう、杏子。今夜はどのくらいのお客様が来ている?」


「お客様は30名ほどいらっしゃいます。ご予約のある方も含めて、これからさらに増えることでしょう」


館の中に入ると、シャンデリアが美しく輝き、高級感漂う音楽が流れる。多くの人々が賑やかに会話を楽しんでいる。


「真姫、今夜も素晴らしいドレスだね」と、太郎は最も人気のあるメイド、空閑真姫(くが・まき)に声をかけた。


「太郎様、お褒めいただきありがとうございます。お客様に喜んでいただけるよう、毎晩ドレスを厳選しています」

真姫は微笑んだ。


夜が更けると、クラブの裏の部屋で情報交換が始まった。各国から集まったスパイや政治家、企業の幹部など、さまざまな人々が密かに情報を売買している。


「太郎様、今夜のターゲットはあの男です」

真姫が報告し、遠くにいる男性を指さした。

「彼から必要な情報を聞き出し、その後、暗殺を遂行せよ」と太郎は命じた。


「かしこまりました、太郎様。任せてください」

真姫は冷静に応え、ターゲットとなる男性のもとへと歩み寄った。


真姫はターゲットの男性に微笑みかけながら、彼のテーブルへと座り、親密な雰囲気を作り上げる。彼女は必要な情報を巧みに引き出す術を持っていた。


やがて、真姫は情報を得ることに成功し、彼女の目の前でグラスに薬を盛った。そして、彼女はターゲットに乾杯を持ちかけ、彼に薬を飲ませる。


男性はすぐに倒れこんで、息絶えた。部屋の中は一瞬の静寂に包まれたが、すぐに賑やかさが戻り、まるで何も起こらなかったかのような雰囲気になった。


真姫は目の前の男性に淡々と見つめた。彼女は太郎の命令に従い、無感情で暗殺を遂行していた。しかし、彼女の心の中は苦しみと絶望で満ちていた。自分がこのような運命を生きることになるとは、彼女は思ってもいなかった。


太郎は部屋の隅で、真姫の様子を冷静に観察していた。彼はメイドたちを使い捨ての道具としか見ておらず、彼女たちの感情など気にも留めていなかった。


暗殺が終わり、太郎は真姫の元へと歩み寄り、言った。

「任務完了だね。お疲れ様。次の任務もよろしく頼むよ」


真姫は涙を堪えながら「はい、太郎様」と答えた。


その夜、真姫は自分の部屋で、自分の悲惨な運命に絶望して泣き崩れた。彼女はなぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか、どうして自分がこんな組織にいるのか、理解できなかった。


太郎は、真姫に対して冷たく、距離を置いていた。彼は組織の目的のためには、メイドたちを使い捨ての道具として扱うことに何のためらいもなかった。そんな彼の残酷さは、組織内で有名だった。


ある日、太郎は真姫を自分の部屋に呼び出した。


「真姫、前回の任務で手に入れた情報の整理が終わったか?」


真姫は目を伏せ、「はい、太郎様。すぐに報告書をお持ちいたします」と答えた。


太郎は彼女をじっと見つめ冷たく言い放った。


「今回も任務が終わったら、次のメイドを用意しておく。君にはもう用はない」


真姫の目に涙がにじんだが、彼女は懸命にそれを隠そうとした。彼女はこれまで何人もの仲間が同じように使い捨てられてきたのを見てきた。彼女自身も、いつその運命に立ち向かわねばならないことを覚悟していた。


「太郎様…私はまだ、お力になれると思います。どうか、私にもう一度チャンスをください」

真姫は必死に訴えた。


太郎は無表情で言った。

「組織のためには、新しいメイドが必要だ。君たちは消耗品だ。それが君たちの宿命だろう」


真姫は必死に涙をこらえ、言葉を絞り出した。

「太郎様…私はまだ、お力になれると思います。どうか、私にもう一度チャンスをください」


太郎は目を細め、考え込む素振りも見せずに言った。

「分かった。だが、次の任務はさらに過酷だ。失敗したら、君にも組織にも未来はない」


真姫は戸惑いながらも、感謝の言葉を述べた。

「ありがとうございます、太郎様。私は必ず、組織のために尽力いたします」


太郎は冷たく笑った。

「それができるかどうかは君次第だ。昨日、新たなメイドが任務に失敗し、組織を裏切った。君の次の任務は、彼女を始末することだ」


真姫の顔が青ざめた。始末任務はメイドたちにとって最も恐ろしいものであり、しかもその対象がかつての仲間であることに胸が痛んだ。だが、真姫は覚悟を決め、うつむいて言った。


「はい、太郎様。その任務、引き受けます」


太郎は満足げにうなずいた。真姫はその場を後にし、自分の部屋に戻った。ドアを閉めると、彼女はとうとう泣き崩れてしまった。彼女の悲痛な叫びが部屋に響き渡り、彼女の心の痛みを物語っていた。


翌日。真姫の顔には濃い傷が残り、左腕にはギプスをつけていた。彼女は息を切らせながら、太郎の前に報告に来た。


「太郎様、始末任務…終わりました。彼女はもう、組織には迷惑をかけません」


太郎は目の前の真姫を冷たい目で見つめた。

「ふん、それで済むと思うのか? 君はあの仲間を始末したが、組織には大きなダメージが残った。責任はどう取るつもりだ?」


真姫は悲しみに押しつぶされそうになりながら、頭を下げた。

「申し訳ありません、太郎様。私がもっと早く彼女に気づいていれば…」


太郎は高笑いし、真姫をさらになじった。

「君が早く気づいていたら、こんなことにはならなかったのにね。まあ、仕方がない。組織のためには、君のような器用貧乏なメイドが必要なんだから」


真姫は涙を流しながら、謝罪の言葉を繰り返した。

「本当に、申し訳ありません。これからも組織のために尽力いたします」


太郎は真姫を一瞥し、舌打ちしながら言った。

「次の任務だ。組織に敵対する政治家がいる。彼を暗殺しろ。ことの成功と引き換えに、君の罪は軽減されるかもしれない」


真姫は目を見開いて、驚きの声をあげた。

「しかし、太郎様…私の身体はまだ…」


太郎は遮るように言った。

「言い訳は聞きたくない。君が組織に貢献できるかどうかは、これからの行動で示せ。さあ、行け」


真姫は悲しみに満ちた目で太郎を見つめたが、彼は冷酷なまま微動だにしなかった。真姫は覚悟を決め、とうとう言った。


「はい、太郎様。その任務、引き受けます」


太郎は真姫の姿が遠ざかるまで、何も言わずに見送った。

彼女が視界から消えると、太郎はふっと息をついた。


「このままでは真姫も壊れてしまうかもしれないが…仕方がない。組織のために役立つうちは、使い続けるしかない」


真姫は泣きながらも、次の始末任務に向かった。彼女は傷だらけの身体に鞭打ち、組織のために命がけで戦い続けることを決意した。


一方で、太郎は彼女に与えた過酷な任務を知りながら、自分の部屋に戻った。彼はシャワーを浴びて、冷たい水で感情を抑え込んだ。鏡に映る自分の無表情な顔を見つめながら、目の奥に隠れた感情を確かめた。


彼は部屋の奥にある書類を取り出し、次の作戦の計画を立て始めた。真姫がいなくなった部屋は静かで、ただ時計の針が刻む音だけが聞こえる。彼は知らず知らずのうちに、真姫のことを考えていた。


その後、太郎は夜通しで作戦計画を練り上げた。彼の冷酷な指示は組織のために、どれだけの犠牲を払っても成果を上げることが最優先だった。だが、自分が命じた作戦がメイドたちの運命をどのように狂わせているか、太郎は心のどこかで感じていた。


次の朝、太郎は真姫の報告を待ちながら、手に持ったコーヒーをすすった。彼の表情は変わらず、冷酷なままだったが、彼の指先がわずかに震えていたことに、彼自身も気づかなかった。

太郎の元に報告が届いたのは、その日の午後だった。真姫は顔に疲労と苦痛が浮かんでいるが、無事に任務を終えたことを報告した。


「任務完了です、田中様」

真姫は、息を切らしながら言った。


太郎は無表情で彼女を見つめ、言った。

「結果は良かったが、次回からはもっとスムーズにやってもらいたい。報告書は明日までに提出しろ」


真姫は何も言わず、ただ頷いた。その目には涙が浮かんでいたが、彼女は必死でそれを隠していた。太郎は真姫のその姿に目を逸らし、コーヒーを一気に飲み干した。


太郎はその言葉に目を通すたび、自分の心が悪意に満ちていくのを感じた。彼は真姫の苦しむ様子を想像しながら、口元がゆがむほどの笑みを浮かべた。


「こんなに苦しんだって、報告書に書かれているだけだ。現場でどれだけ泣き喚いていただろうか」


太郎は独り言のように呟いた。


彼は真姫の苦悩が楽しく、それが彼女に与えられた運命であると確信していた。彼女が次の任務でも、これ以上の苦痛を味わうことになるだろうことを知りながら、彼はその日が来ることを楽しみにしていた。


夜が更けるにつれ、太郎の心はますます冷たくなっていく。彼は自分が真姫の運命を支配していることに満足し、いつか彼女が自分の前で泣き崩れる姿を想像しながら、彼は悪意に満ちた笑顔を浮かべていた。

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