「最高」の責任を負うものとして
「その、申し訳ありません……」
久慈方さんは本部の中へ入るなり、開口一番に謝罪してくる。
立場上分かるが、そうペコペコとされるとこちらとしてもやり辛い。
恨むなら俺自身の運命を恨む他ない。
そんなことは分かりきっている。
「……何について謝ってんだか知らんが、気にすんな」
俺の言葉に、彼女はさらに表情を曇らせる。
俺は気分を変えるため、違う話題を切り出すことにした。
「なぁ、そう言えば新加ってどんな奴なんだ?」
「新加さん、ですか? とても優秀な方でしたね。元々、先々代の理事長の側近で、早くから後継者としての道を約束されていましたから」
「ふーん。優秀な奴ほど疑問を感じるモンなのかね」
「何だかそれだと、私が優秀じゃないみたいですね……。いや、反論の余地はないんですが」
しまった。地雷を踏んでしまった。
しかし正直なところ、彼女が理事長に抜擢された理由は分からない。
ただ陣海さんや貞永さんの様子を見る限り、人望はあるのだと思う。
俺もその点については疑うつもりはない。
それに最高責任者とは、文字通り最高の責任を負う者だ。
そういう観点で言えば、彼女は自ら率先して責任を取るつもりでいる。
果たして、実社会でそれだけの覚悟を持って仕事をしている上席の人間はどれだけいるか。
……いかん、また嫌なことを思い出しそうになった。
「あー、すまん。別にそういうことを言いたかったわけじゃないんだ。俺はアンタのことをボンクラだなんて思ってねぇよ。言っただろ、理想の上司だってよ」
「またそうやって揶揄う! でも……、ありがとうございます」
所詮は部外者の主観、気休めだ。
だが、そんな無責任な言葉にでも人は救われるのかもしれない。
「……まぁ何はともあれ、アイツらを探さねぇとな」
「彼らは予備端末を通して私たちの動向を探っているはずです。予備端末は理事長室で管理していますので、恐らくは……」
「分かった。急ごう」
それから俺たちは、予備端末が保管されているという理事長室へ向かった。
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