転生先試験会場の日常

椨莱 麻

プロローグ 前編

某年日本。

毎年、死者が過去最多数を記録し、この世の日本では人口の減少が問題視されていた。

一方あの世の日本では、増加し続ける死者の対応に追われていた。


死んだ人間の行く末は、大きく分けて3つ。


1つ目は、罰を受けること。

この世の法律に合わせて規則は変わっているものの、犯罪者はもれなく地獄で罰を受ける。

この世で生きている間に犯罪が発覚していなくとも、浄玻璃の鏡で犯罪歴が発覚すれば地獄行きは確定である。


2つ目は、地獄への就職すること。

この世でブラック企業勤めを長く経験した仕事中毒者は、もれなく地獄への就職を希望する。

常に人手不足の地獄ではそう言った声は大変ありがたいので、だいたいの仕事人間は希望先へ就職することができる。

地獄に勤め始めた仕事中毒者を健常者に戻すケアを行うことも地獄に勤める者の仕事ではあるが、今の地獄にそのような余裕はなく、年々仕事中毒者が増えている。


3つ目は、転生すること。

転生希望者は後を絶たない。

特に転生するために死んだという自殺者は、近年増え続けている。

しかし転生は誰にでもできることではない。

犯罪歴があれば、即地獄行き。

犯罪歴がなくとも、性格的に危ういと判断されれば転生は保留となる。


元々は、あの世の管理課が転生先の斡旋を行っていた。

しかし、あの世の労働者よりも死者が上回る現状に嫌気を差したあの世の管理課が閻魔大王に直談判。

その結果、あの世に転生先試験会場が設立された。

激務が予測される転生先試験会場へは、仕事中毒者が転職を希望してくれ、ある程度の人員は確保できた。

しかし主任を希望する者はいない。

そんな中、白羽の矢が立ったのは、あの世に無許可で占いの館を建てた巫女・天探女あまのさぐめであった。

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