第7話

 「…五月雨、お前の母親には上から言っておくからこの部屋に泊まれ」

「……」

「くれぐれも、入隊式には遅れんなよ」

「……うん……」

ぼんやりと返事するツユ。

アキは溜息を吐いて、奥へと消えた。


 「ど〜したの〜?アキ〜」

「ミーナか」

「新入りちゃんのことぉ〜?」

「…五月雨、取引先の百合社長といざこざが出来た」

「えっ、其れ不味くなーい?」

ごくごくと炭酸ジュースを飲むミーナ。

「まぁ、家族としてのいざこざだからな」

「ふーん…」

アキ、ミーナは部屋が一緒である。

「下着姿で彷徨くな」

「…あはっ、なぁ〜に?アキ、意識してるの〜?」

にやりと笑うミーナ。ギラリ、と牙が輝く。

「は?くだらん事を言うな。寝ろ」

「痛っ!」

う〜、と頭を手で擦るミーナ。

「…ボスがツユにどれだけ期待してるのかが、五月雨は分かっていない」

「まぁ、仕方無いじゃん?ボスがずっとずーっと欲しがってたんだしぃ?」

むぅ、とミーナは頬を膨らます。

「其れにぃ、新入りちゃんはエージェントとして未熟だし?」

「珍しく辛口だな」

「当然じゃ〜ん?ボスのお気に入り、私狙ってたのになぁ…」

ポテトチップスを頬張りながらミーナは不満を口にする。

ぱり、とポテトチップスが割れる。

ニヤリと笑うミーナ。

「楽しみだなぁ、あの顔が絶望に染まるの♪」

くふふ、と口元を手で隠しミーナは笑う。

「…まぁ、一種の『洗練』だからな」

アキはポツリと呟いた。

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