第4話

 「駄目だ…もっと、もっと、やらなきゃ…」

お母さんに捨てられる

どくどくどくと鳴る心臓。

どんどん溢れる血。

はーっ、はーっ、と息を荒くし呼吸するのは、百合だった。

「ツユ姉さんに知られたら…お母さん達にバレたら……」

百合はゾッとした。

ただでさえ父親に家族は捨てられ、再婚して出来た義父は中々帰って来ない。

義兄も一人暮らしだ。

「…何してるんだろ、私」

ハッ、と自嘲する百合。

「…消えたいな」

ぽたり

百合の頬を、涙が伝った。


 「ツユ姉さん、アキ、て人が来てるよ」

「むぐ、アキ?!ちょっと待ってもらって!」

急いでツユはパンを頬張り飲み込む。

牛乳で流し込み、バックを持って玄関に走った。

「行って来まーす!」

バタンッ。

「おせーよ」

「いきなり来るのが悪い!…お隣の人は?」

「初めまして、新入りちゃん!私はミーナ、ミーナ・ラナ。君の先輩だよ♡」

ストロベリーブロンドの髪を靡かせ、笑顔で自己紹介をするミーナ。

手には炭酸の缶ジュースを持っており、酔っ払いのようだった。

「重い」

「痛っ!…アキ!女の子には優しくしなさい!!」

「お前は男だろーが!!」

「えっ」

ツユは驚いた。

(男の子だったの…?!)

「こいつは少し訳アリでな。悪い奴じゃないから」

「そ、そうなんだ…」

「今日はとある組織と取り引きに行く」

真剣な話しになる、と感じたツユ。

ミーナも真面目な顔をしていた。

「五月雨 百合。この名前に聞き覚えは?」

ツユはまた驚いた。

何故ならば…

「妹、だけど…」

身内だからだ。

「この百合、て子…取引先の社長候補みたいな立場の子だよ」

「百合が?!」

ツユはギョッとした。

「…取り敢えず、行くぞ」


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