第22話 クリスモテモテ

 私がうつらうつらとしているとコンコンとノックがされた。


 どうやら女の子達が心配して朝食を持ってきてくれた。


「あ、ありがとう」


「ううん、私トリシア。あなた、聖女様?」


「えっと、まあ……い、一応?」

 と答えるとトリシアは


「ふうん?すっごく素朴なんですね?聖女様……。もっと美人かと思った」

 今は仮面を取っており、素顔を女の子達に見られている。


 確かに私の顔は普通に可愛いというくらいだけど美人ではない。アノンによりこの街に集められた女は皆美女や美少女が多く、とにかく今までアノンと関係を持っていた子達は顔の良いクリスが寝込んでいるのを見てボオっと頬を染めて寝込みを襲うのを狙っているのだ。


 いや、クリス死にそうになってる場合じゃないよ!?あんた狙われてるわよ!?


 と言いたいがクリスは未だに眠ったままだ。安定したものの、まだ回復しきってない。



 なので女の子達は代わる代わる食事や下の世話をしようと入ってきて私もろくに休めなかった。いや、もう別に私がクリスの面倒見る必要はないし、クリスが寝込みを襲われようとどうでも良いけど一応人としての良心から仕方なく守ってやってる……。


「面倒だから早く起きなさいよ」

 と呟く。


 そこへ、レギオン王とオシリア様がやってきた。


『クリスの容体は少し安定した様じゃの。後1週間は完全回復はかかるじゃろうが』


「そんなに!?」


『ええ、あれほどの力を使いましたからね』


「あの、聞きたかったんですが、あの封印て解ける事ないんですか?」


『クリスが生きてるうちは大丈夫じゃな』


「えっ!?それってクリスが死んだら無効になるの?」


『そうじゃな…。まあ、その時はまた新しい勇者を女神様が連れて来られるじゃろうな』


『ええ。クリスがおじいちゃんになったら新しい勇者を呼ばないといけませんね』



『というか、そんな事できるのはエレアとクリスの子供くらいしか無理なんじゃないかの!?』

 とレギオンが焚き付けた。


「ちょっと!勝手にそんなこと!!」


「うがっ!」

 とその時クリスがうめいた!!


「クリス!?」


「……エレア…子供…」

 いや、聞いてたんかーーい!!


『と、とにかく一時的に邪神復活は免れ世界は守られた。エレア、クリスよくやった!!』


『ええ!クリスが元気になったら宴ね!!』

 とオシリア様も嬉しそうに言う。


『しかし流石クリス。花やらプレゼントやらいつの間にか部屋にたくさんあるのう』


 女の子達が置いていったものだ。一応街を救った勇者そのものだしね。まあ、寝込みを襲おうとギラギラする女の子達が多いけど。



『とりあえずエレアも少し休みなさい?ほらあなたのために女神界からエレア人形を持ってきたの』

 とオシリア様が私そっくりな人形を連れてきて


『エレアの髪の毛をこの子に食べさせたら動く仕組みなの』


「へえ」


『とりあえず認識阻害の魔道具の指輪をつけ、エレアも休みなさい』

 と隣のベッドを指差すオシリア様。

 私はじゃあそうさせてもらうかと髪の毛を人形に食べさせて横になると、クリスが顔だけこちらに向けて目を少し開けて見つめていた。


 いや、寝ろよ!こっち見んな!って思ったけど動けないらしいし人形に看病や女の子の対応を任せて私は少し眠った。



 しかし真夜中。ドンドンと音がして私は目覚めた。


「何?」

 すると私の人形が扉に椅子やらを置いて塞いでいる。廊下から


「ちょっと開けなさいよ!!」

「いい男の独り占めは良くないわよ!!」

「あたしとクリス様なら相性ピッタリのはずよ!」

「アノン様が居なくなって溜まってるの!!」

「クリス様をよこしなさい!!」

 と女の子達の飢えた声が聞こえた!!

 アノンとやりまくりおかしくなっちゃったの!!?


「手伝ってください!!」

 と私の人形が涙目だ!!


「あ、う、うん」


 ととりあえずテーブルも移動して扉を押さえる。


「クリス……モテて大変ですね」

 と人形すら同情してきた。


「どうしよう、後1週間保つの?これ?」

 すると外から


「ここを開けないともうご飯持ってこないわよ!!」

 と脅迫された!!酷っっ!


「こ、この街を救ったのにそれはちょっと酷いですよ!!」

 と私が言うと


「しょうがないじゃない!!私達アノン様がかけた魅了で1日1回やらないと気がすまないのよ!!だからいい男は今クリス様しかこの街にしか居ないじゃないの!!」


「そうよ、我慢できない子は歩いて他の街を目指したり、女の子同士でやってる始末よ!!早く助けて!」

 と女の子達の訴えが聞こえた!!


 ひ、ひええええ!


「そんなことになってるなら早く言ってよ!!」

 と私は扉を開けて女の子達に聖魔法を使い、魅了解除をかけ始めた。



 すると、女の子達は正気に戻り、ようやく騒動は少し治ったのだった。

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