第15話 オセロ勝負

レギオン王が闇の精霊王を探しに行って数日。


私とクリスはまだ館にいた。村に戻るわけにもいかないし。仕方なくクリスと一緒に待っている感じ。


クリスはと言うと、私のことを相変わらずコソコソと見張っているようだ。以前みたいに鎖で縛りつける事は無くなったけど…、森にキノコを採りに行く時とか後ろからめっちゃ視線を感じる!


私が間違えて毒草を摘もうとしたら爆速で移動して手を掴まれた!!


「こっ、こここ!これは毒草だ!!危なっかしい!!本当に君は薬草との見分けもつかないんだな!!


流石偽エレア!」

と言っている。


「失礼ね!確かにあなたの理想のエレアじゃないけど、私も一応違うエレアとして頑張ってるの!偽ですみませんでした!」

と手を払うとクリスは少し悲しそうな顔をした。


クリスの理想とするエレアはきっと私と違い完璧な幼馴染のエレアなのね。本編前編でチラッとしか出てこず、書かれなかった完璧理想のエレア。私はたぶん貴方の理想には完全になれないしなるつもりもない。


姿はエレアでも心はクリスが言う『穢らわしい』ってヤツなんだわ。


私…そんなに乙女じゃないし。前世の私は美人でも美少女でもない冴えない女だった。鏡を見るのが嫌なくらいの。

ぶっちゃけると教室でいつもぼっちの暗い感じの女でクラスの皆からは別にどうでもいい存在だ。誰も私に話しかけないし楽ではあったけど暇だったな。


いつものように昼食を食べ終わり、庭の花の手入れでもしようかなと思ってたら…なんかクリスが扉のところからチラチラこちらを見ていた。


「何?何か用?」

とさっき喧嘩したから機嫌悪く言うと、クリスは意を決してこちらに来てバンと机に木で作ったマスを置いた。



「何これ?将棋の台?」

と聞くと


「違う!そんなジジイみたいなことするか!オセロだ!!」

と黒く塗った平らな石と白い平らな石のコマを置いた。


「知ってるだろオセロ!言っとくけど暇だから相手になってやろうと思ってな!」

と言い出した。


「はあ…」


「僕はこう見えて得意なんだよ!オセロ!!」

と言う。


「うん…それで?」


「勝負したい!!」

とクリスは言う。


「えーと…、何で!?」


「ひ、暇だから!!」

とクリスはなんか必死だ。


「お前が勝ったらまたサインでも書いてやろう!」

とクリスは言う。


「え?2枚もいらないし…」

と言うとショックを受けたようだ。


「さ、さっき偽エレアとか言って怒ったんだよな!?…か、勝ったら謝罪してやる…」

とクリスは言う。


「ふーん…。いいよ。じゃあ勝ったら土下座してもらう」

と私は強く出た。


「よ、よし!!僕が勝ったらどうする!?」


「どうするって…勝った人が決めるんじゃないの?」

と言うとそれもそうだとクリスは言い、考え…

真っ赤になり


「かか、勝ったら!僕が勝ったら!たまには君が夕食を作ると言うのは…どうだ!?」

となんか簡単なことを言い出した。


「そんなのでいいの?いいよ別に」

と言うとクリスは昔みたいに喜んでそして腕を捲った。


「じゃあ…始めるぞ!」

とクリスが先陣を切った!


私だって小さい頃はよく家族とオセロしていつも勝ってたから、それなりにいけるだろうと思った。


しかしコマを裏返すとクリスは爆速で置いて角を取られた!


くっ!

と思って負けじと攻防を続けた。


そしてしばらくして勝負はついた…。


「嘘でしょ…何これ?」

私のコマは黒で真ん中にポツンとあり、周りは全部白という恐ろしい盤面だった。逆にそれなら全部白にされた方がまだ良かったけどなんか怖いなと思った。


「ふ…勝ちは勝ちだ!」

とクリスは勝利に酔いしれ、前髪をなんか…ファサッとした。


「…わかった。なら夕飯作ってくるよ…」

と仕方なくキッチンに行って私は料理を始めたのだった。


しばらくして料理は完成した。見た目は普通のオムレツだ。

エプロン姿の私を見てクリスが頭から煙を出し、突っ立っていてお皿を何枚か割った!!


「クリス!何してんの!?」

ハッとしてクリスは無言でかけらを爆速で集めたが、よく見ると指先が真っ赤でダラダラと血が出ていた。


私は駆け寄り


「大変!!今癒すね!!」

と癒しの力をクリスに使った。

クリスは近づいた私を見て赤くなっていた。


次の瞬間私はいきなり足を払われ身体は宙に浮き上がったが、クリスが頭や腰を打たないように支えられつつも爆速お姫様抱っこされた!!







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