第5話 魔族の菓子折り訪問
クリスが容赦なく魔族を殺してしまったので正直かなり引いてしまった。
顔はいいけどちょっと何も考えずに爆速で物事を処理し過ぎだと思う。
だからクリスに
「敵意のない魔族には話くらい聞いてあげてよ!」
と言ってみた。
するとクリスは
「何で?敵だよ?人間が魔族の口車に乗り、殺されるのをエレアは見たいの?魔族なんか皆人間の事を下等生物だと思って見下してるんだよ?」
と正論を言われる。
「そ、そうだけど…、じゃあもしクリスが魔族に産まれててすぐ殺されたら嫌でしょ?」
「……エレアは凄いこと考えるね…。……魔族に産まれてたら……確かに…僕なら勇者を憎むけど…」
「そ、そうよ?魔族にも家族も恋人もいると思うわ。種族が違うだけで」
「でも、人間にとって脅威である魔族の王はやはり倒さなくちゃならないから俺みたいな光に選ばれし者が生まれてくる。僕はさっさと事を終わらせたいだけなんだ」
とクリスは結局さっさと話を切り上げようとする。
「……もういいわ、クリスとは話が合わないみたいね。私の話はさっさと聞かず、都合の良いようにしたいんだわ」
と言うとクリスは困ったように
「ごめん…。僕…早くエレアと幸せな時間をたくさん作りたくて…」
とイケメン顔を曇らせる。
「クリス…。早く終わらせたいのはわかるけど…ほんの少しでいいから待って?魔族を庇う訳じゃないけど、もしかしたら本当に困ってる魔族や害のない魔族もいると思うの。人間と同じように」
「…エレア…なんて優しい心の持ち主だ!本当に好きだ!」
とクリスは爆速で私を抱きしめた!
だから話を聞け!
その時また、バンと部屋の扉が開き、クリスのお母さんのアンナさんが
「クリス!またまた大変よ!!村の入り口に魔族が来たんだけど…クリスと話がしたいって!!
村の攻撃は一切しないからって言うのよ!!」
とアンナさんが言う。
「え?そうなの?どうせ魔族だから嘘だと思うけど」
とクリスは言うので
「クリス!さっきの私の話を聞いてたの?
もういいわ、私も行く!クリス!魔族の人を殺さないでちゃんと最後まで話を聞いて判断してよ!!」
と言うとクリスは
「う…うん。わかったよ」
と言うと私を抱えて村の入り口まで爆速で瞬間移動の魔法をした。
*
急に光からクリスと私が現れたので魔族の人が驚いて少し下がった。
地面に降りるとクリスは
「何の用だ?魔族めが!5秒だけ聞いてやる!」
「クリス!!」
「……っち、わかった。とにかく早く話せ!!」
とクリスはようやく話を聞くことにしたようだ。
「あ、あの光の勇者様…ですよね」
「見ればわかるだろ!」
「クリス!!見ただけじゃわからないし間違ってたら魔族の人も失礼だと思ってるのよ!ちゃんと考えてよ!」
と言うと魔族の人が私に少しぺこりとした。
「は?何エレアを見てるんだ。目玉くり抜くぞ?」
だからやめてよ。
「ひい!すみません!あの!その!私どもは光の勇者様に全面協力をいたします事を誓います!!
この辺りの前魔王ロキシード様の管理下にいる私達魔族ですが、戦闘魔族はこないだ仇討ちに行き、勇者様に1人残らず殺されたと聞きました!」
ああ、こないだ村を襲いに来た魔族たちのことだわ。
「魔族だからな。僕の村を襲いに来たとか抜かすから殺した」
と平然とクリスは言う。
「は、はい!で、ですので私達下位の魔族はとにかく勇者様に敵意を持ちません!!配下に下りたいくらいです!
これ、心ばかりのお菓子です。うちの魔族の村で作っております!毒など入ってませんよ」
と菓子折りを渡す、腰の低い魔族。
一緒に来ていた仲間にもちろん安全だと菓子を食べてみせた。
「ほらクリス!いい魔族もいるじゃない?」
「……仲間と油断して殺すかもしれない。魔族だし」
警戒心強い!!
「あの本当に、私達勇者様につきます!他の魔王の居場所や弱点も洗いざらい喋りますから!」
とサラッと裏切り宣言をする魔族。
「……他の…魔族だと!?」
クリスは嫌な顔をした。
「?ええ。この地区の魔王ロキシード様は倒されましたが、他の国とかにも他の魔王様は沢山いますので。人間も国ごとに王様がいるでしょ?」
と言い、クリスは…
「なっ…、聞かなかった!僕は何も聞かなかった!!」
と耳を爆速で塞いだ。
クリス…、もうダメだよ。今度こそ旅支度するべきよ。
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