第1話

『行ってきます』

誰もいない家に毎朝言い続けてはや二年。

母は早々に癌で亡くなり、

父は単身赴任で俺を置いていった。

慣れてしまった自分も恐ろしいが、

もうそんなことは考えない。

ただ、歩を進める。


___


秋菜高に入学した時は両親共に元気だったのに。

そんなことを考えつつ教室に向かい、

席に着こうとする。しかし誰かが俺の机に座っている。

あんなやつ、俺は知らない。

記憶力が良い方だと自負していたが、そんなことは無かったらしい。

『誰?君』

だんまりとする女はため息をつく。

『何?あんた私が見えるの?』

意味不明な事を言う女。

恐らく同年代だと思われる程白い肌と一般的にモテるであろう容姿。

そのステータスがあるからこそこんなデカい態度を取れるのだろう。

『会話する気がないならさっさと退いてくれないかな。

 邪魔なんだけど』

イラつきながら口早に話す。

女はニヤリと笑って、

『私は……そうね、名前は無いわ』

『あ、そう。じゃ退いて』

ドヤ顔で言った女は信じられないという目でこちらを見る。

『え?名前が無いって当たり前みたいな対応やめて?

 ってゆーか私結構美少女だと思うんだけどなんでそんな冷たいの?』

『俺は得体の知れない何かとしか認識してないから。

 んでさっさと退いてくれないかな』

女は渋々退き、

教室を出て行った。

『(なんだあいつ)』

とにかく意味がわからない奴だった。

まぁ精々隠キャを惚れさせようとしたんだろうけど、

俺には二次元の彼女がいるから興味がわかなかった。

スマホを見る。

HRまであと7分程ある。

教室でゲームはできない為、俺の彼女には会えない。

しかし廊下に出ようにもドア付近で女達が会話しているので

出ようにも出られない。

『はぁ………』

ため息を吐く。

『ため息なんてついてどうしたの?智樹君』

『いや、なんでも』

ん?圧倒的違和感。何故俺に話しかけた?

『な、…』気付いたら既に女は消えていた。

声からして宇津月だろうか。

三次元から話しかけられるとは、今日は不吉な日なのかも知れない。

そう思いつつ机に腕を組み、睡眠を貪ることにした。

『みーずじーまー?』という声で目が覚めた。

誰だと思って目をこする。

『なんでしょうか』

欠伸をしながら答える。

『お前今HR中ってことをわかった上で寝ていたんだよなぁ?』

まずい。寝過ごしたか。

『い、いえ』

という弱々しい声を遮って、

『先生、今HR中ってことをわかった上で説教しているんですか?』

と女が言う。さっきの声と同じだ。

『わ、わかっている。おい、水島。

 出欠とってんだから次からは寝るなよ。』

『はい』

とりあえずは助かったが、違和感がすごい。

俺は隠キャなのでクラスから除け者扱いされてきたのだ。

助け舟を出すのは明らかにおかしい。


___


『さっきはありがとう』

とりあえず礼はしなければならない。

HRが終わったところで俺は宇津月に礼を言った。

宇津月はツンとした顔で

『あなたが進行の邪魔をしていたから担任に促しただけです。

 わかったらさっさと失せてくれませんかね?』

『あぁ。わかった』

まぁこんなことだろうと思っていた。

まぁ良い。辛いことを言われたら彼女に慰めてもらおう。

そう思いつつ廊下に出ようとしたら担任に呼び止められそうになった。

げ。と思っていたら

笛俣に呼び止められた。

『ちょっとツラ貸してくんね?』

何。今日俺寝ただけじゃん。何も悪い事してないだろ。

内心笛俣に何かしたかと考えたが、何も思い当たらず、

諦めた。数秒の思考の後、

『別にいいけど』

と答えた。

『そ。じゃアタシに着いてきて』

そう言い笛俣は早足で歩く。

俺はその後をつけた。



_________



今後ともマイペースに進めて参ります。

まだまだ私も未熟ですのでご期待に添えない可能性があります。

先の長い話になりますので、ご容赦ください。


第0話に笛俣麻璃ふえまたおりの内容を追加しました。

お手数ですが詳細をお求めの方はご覧ください。

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