第4話 お題 明るくて傍若無人なギャル

「若さというものは、それだけで人を魅力的に見せるものです」


 天使の笑みを浮かべて上役ビッグベンはこう告げた。

 モザイク顔のくせに。


「……時に無鉄砲、時に傍若無人、時に天衣無縫、それらは若さのもつ魅力といっていいでしょう」


 それから目の奥に悪魔の炎をちらつかせて続けた。

 モザイク顔だからな。


「ですが、そこに自己顕示欲が絡みつくのも若さです。自己を必要以上に目立たせるため、奇抜な行動に出てしまう」


 ああ、それはなんか分かる気がする。

 なんとなく自分にも思い当たるふしがある。

 思い出したくもない学生時代の黒い歴史。

 頭がどうかしていた、としか思えない愚行の数々。


 盗んだバイクではないが、中国のように原付きバイクに4人乗りしてみたり、

 夜の校舎の窓ガラスは壊して回っていないが、屋上から人間製の聖水を撒き散らしたり、

 大昔に流行った「十代の教祖」の音楽の歌詞を揶揄する、高二病患者だった時代を思い出す。


「今回は特に気を付けてくださいね。若い女性はなにかと面倒なものですからね」


 黒歴史の数々を思い出していたわたしはハッと意識を戻し、ゴクリと唾を飲み込みつつ、小さくうなずく。

 今回の相手はいわゆるギャルらしい。

 子供ではないけど大人でもない、一番厄介な年ごろだ。


「分かっているとは思いますが、相手は未成年だということをくれぐれも忘れずに」


 色恋沙汰になるとは思えないが、そもそもコミュケーションをとれる自信がない。 

 歳の近い人間が周りにいないせいか、女子生徒というだけでもつい身構えてしまう。

 それでなくとも最近の若人の考えていることなんてさっぱり分からないのに。

 最近はケイとも過ごしているが、もっと幼く素直な男の子だし。


 かくしてわたしは憂鬱をずるずると引きずりながら、今日も顧客のもとに足を運ぶのだった。





 →→→ 回答へ続く!

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