第6話 悪魔が金をむしり取れと囁いた

 宥子ひろこ異世界サイエスに送り出し、私は執筆と新たな武器の制作、サイエスでも着て違和感の無さそうな服を制作に励む今日この頃。

 新しい武器は手榴弾だ。お手軽空き缶手榴弾の威力は火薬を調節してそこそこ威力が出るようにしている。こうして宥子ひろこが帰ってくるまで武器作成や衣装を作りながら時間を過ごした。

 宥子ひろこは一週間で帰ってくるって言ったが、待てど暮らせど一週間経っても帰って来ない。

 生死の心配はしてないが、サイエスで何か問題でも起こしたのだろうか?

「同じ食事だと飽きる」

 食卓を見てウンザリとした。

 予定通りに帰宅しないので、こうやって私が二人分のご飯を食べる羽目になるんだ。

 帰宅する気配が無いので私は真珠専門店の御木本みきもとへ足を運んだ。予算は100万を予定している。真珠のネックレスとイヤリング、指輪を購入する予定だ。異世界では養殖の技術が無いだろうし、そうなると粒が揃っている真珠は珍しいのではないだろうか?

 

 タクシーに乗り神戸の御木本みきもと本店へ足を踏み入れる。勿論、服装はフォーマルドレスを着ている。服装によって客を差別する店員がいるとは思わないが、良い接客を受けたいしね。

 「いらっしゃいませ。」

 綺麗にお辞儀して出迎えてくれる店員に

 「予算は100万でネックレス、イヤリング、指輪のセットをお願いします。」

要望を伝える。

 「畏まりました。こちらで少々お待ちください。」

 高級そうなソファーに案内された。待ってる間にハーブティを持って来てくれてセレブを満喫した気分になる。10分程待っていたら店員さんがやってきた。

 「お待たせしました。こちらになります。」

 3セットほど持って来てくれた商品を見る。

 一つ目はほんのりベージュ色の美しい真珠。二つ目は純白の色合いが美しい真珠。三つ目は黒真珠だった。

 「どれも綺麗ね。」

 黒真珠はサイエスで人気があるか分からないので無難にベージュか白にしようと思う。 

 「お客様は肌が白いので黒真珠も映えると思いますよ。」

 黒真珠を勧める店員に

 「今日は黒真珠を買う予定はないんだよね。白かベージュでと思ってるんだけど、どっちが人気があるかな?」

白とベージュを選んで貰う。私には決めきれないからね。私の言葉に店員さんが

 「当店で人気なのは白の真珠ですね。冠婚葬祭で上品に着飾ってくれます。」

白の真珠セットを提案した。

 「じゃあ、その真珠のセットをお願いします。」

 お会計を済ませる。

 98万3千216円と約100万近い金額を使ったので残りの貯金残高が心配になる。宥子ひろこにはがっつりとお金を稼いで貰わないと!

 買い物をして時間を潰して家に帰ると宥子ひろこが帰宅してた。

 「お帰りー」

 「ただいま。てかこの馬鹿姉!!何が一週間くらいだ。もう十二日だ! 三日前に作った二人分の夕飯が無駄になったじゃないの。翌日、私のお腹に消えたけど! 二日続けて同じもの食べさせられるのは勘弁してよねっ」

 ダイニングで寛いでいる宥子ひろこの頭にアイアンクローをかける。

 「痛っ!い、痛いってばぁあああ!!離せブスっ!」

 ギャーギャーと喚く宥子ひろこ

 「嫌がらせ飯にすんぞ!」

脅しをかけた。

 「遅れたのは、色々事情があるんだよ。不可抗力だぞ、妹よ!嫌がらせ飯って頑張ってる姉ちゃんを労わってくれよ!」

 バシバシと私の背中を叩く宥子ひろこの頭をベシっと叩いて私もソファーに座る。

 今度は宥子ひろこの腰を圧し折ってやる。

 「何があったか話すから、リビングに移動しよう。ご飯も食べたいし」

 食事、食事と言いながらリビングに移動する宥子ひろこに対し、

 「お茶漬で良い?」

と告げたら、この世の終わりかってぐらいな表情かおをされた。

 解せぬ。

 「私は、夕飯まだなんだよ。お腹にたまるものが食べたい」

 そんなこと知らねーわ。今何時だと思ってるんだ、このあんぽんたんは。 

 私は、時計を指さして言った。

 「今何時だと思ってんの?15時だよ。まだ夕飯作ってないし。冷凍のから揚げチンしてあげるがから、それで我慢しな。」

と告げるも、不満顔で渋々それを受け入れた。

 「はぁい」

 もし駄々を捏ねたら飯抜きにしたろうと思ったんだけど、こういう所は察しが良いんだよね。

 「シャワー浴びてくるわ」

 言い終えると、宥子ひろこはそそくさと風呂場へ逃げた。

 「その間に用意しとくよ。10分以内に上がって来てね」

 「了解」

 宥子ひろこは、ショルダーバッグをソファーに置いて風呂場へ向かった。

 私は、ショルダーバックをソファーの隅に置き直そうとして手を掛けたら、中から可愛い物体が顔を出した。

 「ん、ギャーーーーーーーーーーーナニコレ、超可愛いんですけどっ!!! 名前あるのかな? 何かもちもちしているし、しかも桜色だからサクラちゃんね!!」

 私がサクラを掌に載せて頬ずりていると、シャワーを浴びていた筈の宥子ひろこが血相を変えて飛んで来た。

 「……さっきの悲鳴は何?」

 「いやぁ、あまりにも可愛くって。これスライム? 何かピンクで可愛いんですけど!」

 蛇達にも劣らないツルツル感、そして弾力のあるもちもち感が堪りません。

 あぁ、超気持ち良い。恍惚とした表情かおでサクラちゃんに頬擦りする私を不審者を見るような目で見る宥子ひろこ

 失礼な奴である。

 「ヒールベビースライムって種族だよ。今日、菓子パン食べているとき出て来て餌付けしたら契約テイムさせられた。」 

 その時の光景を思い出したのか、宥子ひろこはガックリと肩を落としている。

 「へー、甘いの好きなんだね。じゃあ、クッキーとか食べるかな?」

 宥子ひろこのご飯よりも、サクラにお菓子を与える方が優先順位が高い。

 「妹よ、私のから揚げは?後お茶。」

と無粋な声が掛かった。

 「自分で用意しろよ。私は、サクラちゃんにご飯あげるので手が離せないのだよ。」

と返せば、文句という名の抗議を受けた。

 宥子ひろこをマルっと無視スルーして、私はサクラにメロメロしている。

 「ビールは?」

 宥子ひろこからビールの催促をされ、私は眉間に皺を寄せる。

 私は、ビールを飲まない。しかもビールは値上げしているので食卓に出したくない。飲みたいなら自分の小遣いで飲め。

 「ああ、高いから発泡酒で我慢して」

 「ビール買えるくらいのお金はあるでしょう?」

 「あるけど、異世界で活動していくんだから装備にお金かかるじゃん。節約出来るところはしないと!だから、今後は発泡酒ね。」

 異論は認めないと笑顔のプレッシャーをかければ、

 「うぃっす」

と良い子のお返事を返してきた。

 うむ、素直で宜しい。

 駄々を捏ねた分だけ、飯が質素になるのをちゃんと理解出来たんだな。

 学習は、大事である。

 「サクラを契約テイムした時に、サクラの感情が流れ込んできたんだけど。赤白ちゃんと紅白ちゃんからは、何も感じないんだよねぇ」

 宥子ひろこはゲージの中を見つめるが、二匹とも住処に籠って出てこない。

 何となくだが、サクラを契約テイムしたせいで二匹が拗ねたんじゃなかろうか。

「嫌われてるんじゃないの?」

 私も、ここ数日は無視されているんだ。

 お前も同じ気持ち味わっとけ、とばかりに宥子ひろこを放置。

 私は、サクラにせっせとクッキーを与えている。

 サクラも美味しいのか、時折身体を震わせながら食べていた。

 超萌えである。

 正義は我が手に有り!!

 可愛いは正義!

 一通り食べ終えて片付けも済ませた宥子ひろこが、

「そろそろサクラを返してくれない?ひと眠りしたらサイエスに出かけるから」

と無慈悲な事を言ったので、思わずチッと舌打ちしてしまった。

 宥子ひろこは、聞こえているはずなのに聞こえない振りをしている。

 渡さない選択肢もあったのだが、サクラを困らせるのは本意ではないので、仕方なく、仕方なく!サクラを宥子ひろこに渡した。

 蛇達に挨拶しても相手にされなかった宥子ひろこは、哀愁を漂わせ自室に戻っていった。

 宥子ひろこが寝入った後、私は宥子ひろこが持って行く物を準備をした。

 弾や火炎瓶、プラスチック爆弾が積み込まれたダンボール箱と、一週間分の食事とおやつの入った紙袋。

 首からかけるパスケースに、サイエスで換金できそうなゴミという名の雑誌付録の数々を用意してから、私もひと眠りすることにした。




 私が目を覚まして、仮眠を取ってから半日は経過していた。

 しかし、宥子ひろこは起きてこなかった。

 あいつは何やってんだか。サイエスで安定してお金を稼がせるためには手に職を付けなければならない。といっても宥子ひろこは物作りが得意とはいえない。理科の実験が好きで将来は薬を開発したいとか夢を持ってた頃があったっけな。化粧品を自作させてサイエスで販売させるのも良いかもしれない。シャンプーやリンスーは市販品で十分だろうけど、化粧品はYuor Tubeの動画で作り方を確認出来るからね。

 いっこうに起きない宥子ひろこの部屋のドアを開けて

 「何時まで寝てるんじゃボケーーーーーーーーーーーィ!!」

ベットに駆け寄り、宥子ひろこの腰に向かってダイブする。

 「グギャッ………」

と蛙を潰したような声が聞こえたが無視スルーだ。

 「いい加減起きろ! いつまで寝てるつもりだ!!」

 「ギィヤーァッ!!……起きた、起きました!私の上から退いてくれ!!!」

 宥子ひろこの腹の上に乗って強制的に起こしたが、こうでもしないと二度寝を決め込むので、多少手荒に起こすのは仕方がない。

 犠牲は腰だけで済むのだから、安い物だろう。後でポーションでも飲んでろ。

 「おはよう。サクラちゃん出しな」

 スッと手を差し出したら、何を思ったのかお手をしてきやがった。

 無言で頭を鷲掴みにすれば、宥子ひろこは声にならない悲鳴を上げた。

 「お寝ぼけさんかな? サクラちゃんを出しな……」

 容赦なく掴んだ頭をギリギリと締め上げる。

 すると、宥子ひろこはサッとサクラを私に差し出してきた。

 サクラを見て、思わずデレっとした顔になる。

 「ご飯出来てるから早く来なよ」

 私は、身支度を整えてさっさと飯食えとばかりにリビング行きを促した。

 私は一足先にご飯を食べ、蛇達の世話をしている。

 私は、リビングに移動してこれからの事を考える。

 宥子ひろこに渡す物資、サイエスの情報収集。

 この二つは、最優先事項だ。

 化粧水作りでスキルが生えればラッキー、ポイントでスキルを取得させる方法もありだ。

 その前に、宥子ひろこのステータスを確認しなくては。

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