第3話 宥子のステータスと久々の帰還


 「ただいまー」

 間の抜けた宥子ひろこの声にひょっこりと玄関を覗くと全身真っ赤にした宥子ひろこが立っていた。

 痛がっている素振りはないので返り血だろうが、ホラーである。

 「お帰りぃーって何その恰好わっ!!」

 洗濯するの大変じゃないか!染み抜きで血は綺麗に取れるだろうか?そんな事を考えてると宥子ひろこ

 「ボス戦してきた。」

爆弾発言をかました。

 「お、お前レベル1じゃなかったのか?」

 何でボス戦なんてしてくるんだよ~!と宥子ひろこを見ればヘラヘラと笑っている。

 「何かロックオンされたべ。」

 超やべーとのたまう宥子ひろこの頭を思いっきり叩く。

 「そういう問題じゃないんだよ!!てか、その服!血塗れにしやがって!いくらしたと思ってるんだ!?2万2千832円なんだぞっ!既製品じゃない一点物!オーダーメイドなの!馬鹿なの?阿保なの?お気に入りだったのに!パソコンは壊れても替えがきくけどその服は作者が亡くなってて作って貰えないんだよ!もう注文すらできねーの!分かってんの?」

 絶叫する私に宥子ひろこ

 「ちょっとは私の心配してくれても良いじゃん。」

ぶー垂れた。

 反省の色のない宥子ひろこを一睨みし

 「殺しても死なない宥子ひろこよりもシャツの方が大事だよ。」

キッパリと言い切ったら宥子ひろこは肩を落とした。

 「さっさと風呂に入って来い。」

 しっしと犬を追い払う仕草をすれば宥子ひろこはしょんぼりとした顔で風呂場へ向かって行った。あいつ着替え持って行ってないじゃん。私は宥子ひろこのジャージとバスタオルを脱衣所に置いてリビングに向かった。

 私は夕食の準備をする。対宥子ひろこ用の嫌がらせ飯だ。ナスとピーマンとカブの味噌炒に人参ピーマンツナサラダ、豚しゃぶとピーマンの梅肉添えである。ピーマン尽くしに慄くがいい。

 それにしても服はやっぱり捨てても良いような服にしないと駄目だな。今回みたいに服を台無しにされたら困る。

 宥子ひろこ愛用の草臥れジャージで良いんじゃないか?異世界だと目立つだろうけど、服は宥子ひろこと共用だから捨てても良いやつを着て欲しい。

 夕飯の支度をしている所で宥子ひろこがお風呂から上がって冷蔵庫からビールを出してリビングで飲んでいる。

 「あー美味いわぁ。」

 おっさんがログインしている宥子ひろこはビールを飲みながら半透明のボードを操作していた。

 私はこっそりと宥子ひろこの背後に立ってボードを眺めた。

 半透明のボードはステータスボードのようだ。

 「スキルと言っても色々ある上に、PTポイントも結構かかるんだ。ですよねー! ちくせう」

 ぶつぶつと唸っている宥子ひろこ

 「塩、砂糖、胡椒でも買って来たら?」

 料理が出来るまで時間があるから提案すれば

 「ううぉっ!びっくりしたー黙って背後に立つなよ。RPGでお馴染みのアレかぁ!お金儲け出来るね!」

宥子ひろこはびっくりしつつも財布片手に早速店へ買い物しに行った。

 砂糖、塩、香辛料の三つとガラス瓶だけでもかなりの儲けが出ると思う。宥子ひろこもそれが理解わかっているだろう。宥子ひろこが仕入れしている間に料理を済ませる事にした。

 近くの業務用スーパーで買い出ししたのか、両手いっぱいに砂糖、塩、胡椒を瓶に移し替えている。

 人が料理しているのに部屋いっぱいに砂糖などを広げて作業しないで欲しい。

 「ご飯できたよー」

 「今行く」

 ご飯、ご飯とウキウキしながら食卓についた宥子ひろこは、ピーマン尽くしのご飯を見て崩れ落ちた。

 「酷い!!私が食べられるのお米だけじゃねーかっ!!」

 ギャオウと吠える宥子ひろこ

 「心配させた罰だよ。お残し厳禁だからね。」

残したらご飯作らぬ宣言をしたらボタボタと大粒の涙を流しながら料理に箸をつけた。そこまで嫌か?この苦味が美味しいのに。

 宥子ひろこはキッチンに立つことを禁止している。それは彼女が飯マズを通り越して毒物製造機だからだ。新鮮な物で調理しても何故か食中毒を起こすという才能を持っているからだ。

 嫌そうにもそもそと食事をする宥子ひろこにステータス確認を促した。

 「宥子ひろこのステータスって今どうなってんの?」

 「ちょっと待って。ステータスオープン!」

 宥子ひろこは私に向かって自分のステータスを見せてくる。こんなに無防備で大丈夫なんだろうか?宥子ひろこのステータスを確認するとスキルの横に0が見えた。

 「PTポイントでスキル取得しても0だと意味なくない?出刃包丁振り回しただけでスキル発生したし、使えないなら意味ないよ。」

 PTポイント無駄になったとばかりにぼやく宥子ひろこに私は

 「PTポイントでスキル取得出来るなら熟練度もPTポイントで取得出来るんじゃない?ちょっとやってみなよ。」

ゲームでお馴染みお裏技を伝授してみた。ダメ元であるけどね。

 宥子ひろこは名案とばかりにステータス画面を操作する。

 宥子ひろこが隠密をタップすると詳細が出てきた。熟練度は0/100と表示されている。

 100PTを熟練度にドロップしたところで、隠密1に変更された。

 「やっぱり思った通りだ。PTを使用することでスキル取得やスキル熟練度を上げることが出来るのよ。」

 私は、パチンと指を鳴らしドヤ顔をすると、宥子ひろこは眉間に皺を寄せている。

 「100PTも消費するなんて酷い。糞ゲーだ!」

 「裏技が通用するだけ良かったと思いなよ。先ずは隠密、隠蔽、索敵はMAXまで上げようね。」

 「え?何で?」

 魔法の熟練度を上げようとしていた宥子ひろこは私の言葉に疑問符を浮かべた。

 「加護持ちだと面倒ごとが舞い込むよ。ステータス偽造しないとね。隠密はあんたのレベルが低いんだから背後からの一撃必殺だよ。索敵魔物から逃げれるようにしたいからね。」

 利点を説明すれば宥子ひろこは私の言葉に納得したようだ。

 多分だがスキルの上限は100じゃないかと思う。確証は無いのでこれは宥子ひろこに告げない。

 「分かった。ご飯食べ終わったらステータス弄るから確認して。」

 「オッケー」

 私達は取り敢えず残りのご飯を食べる事にした。

 


 食事が終わりいよいよステータスを弄るのだ。∞とMAXはどう違うのだろう?

 契約テイムが∞になっている。

 ポチポチとステータス画面を弄っている宥子ひろこの隣で私は彼女のステータスを確認している。途中で熟練度が止まった。どうやらPTポイントが足りないみたいだ。

 「MAXまでは無理かぁ。」

 宥子ひろこの言葉に

 「まぁ、熟練度が上がるのに比例して消費PTポイントも多く消費すると思うよ。上げられる所まで上げておこう。」

と提案して以下のステータスになった。

---------STATUS---------

名前:ヒロコ(琴陵 宥子ことおか ひろこ

種族:人族/異世界人

レベル:30

職業:魔物使いテイマー

年齢:25歳

体力:73/125

魔力:200/200

筋力:85

防御:63

知能:108

速度:60

運 :600

■装備:ジャージ

■スキル:縁結び・契約テイム∞・剣術2・索敵7・隠ぺい7・隠密7・魔力操作1・初級魔法1[全属性]・生活魔法1

■ギフト:全言語能力最適化・アイテムボックス・鑑定・経験値倍化・成長促進

■称号:なし

■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命

■ボーナスポイント:70pt

-------------------------------

 う~ん、あんまり熟練度が上がらなかったわ。

 ステータスを見る限りパーティでの行動は無理だろう。ソロで活動するいは厳し過ぎるステータスに私と宥子ひろこは同時に頭を抱えて唸る。

 「PTポイントも減ったけど、死なないと良いな....」

 切実な宥子ひろこの言葉に同意した。平均の初期のステータスがどのぐらい分からないが、不安が残るのは仕方ない事だと思う。

 宥子ひろこ曰く、邪神が作った世界はMMORPGを模しているとのこと。だったらスキルを磨いて上位互換スキルに進化出来るのではないだろうか?宥子ひろこはその辺を理解しているのかな?阿保だから理解してないかもしれない。

 翌日、作り置きしていたご飯を全て持ってサイエスへ出かけた宥子ひろこに殺意を覚えた。

 私は、刀を入手するべく骨董店へ足を運ぶのであった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る