第37話 エディカ救出計画

「それじゃあエディカ救出計画の作戦を確認する」


 机にはイルマット王国の地図が広げられている。

 俺たちは、デューチャの調査結果を再度聞いたところだ。

 どうやら、どこかで聞いたような特徴の三人が雇われ兵士をしているらしい。本人かどうかは別として、デューチャから見ても一応警戒しておいた方がいいい存在みたいだ。

 エルディーには劣るだろうが、一般的には強力とされる力の持ち主ではあるという評価だった。


 エルディーと比べれば誰でも劣ると思うのだが、俺は戦闘をただの技術でまかなっているから、警戒は必要だろう。


「さて、救出計画は当初の予定通り、エルディーに捕まったことを偽装してイルマット王国へ侵入し、そのままエルディーの妹であるエディカを救出、その後、国を脱出して戻ってくる。ここまでの流れに異論はないな?」


 全員の顔を見て回るが、誰からも異論は出てこない。


「それじゃあ詳細だが、王のもとまではエルディーなら行けるということだから、俺の力も使いつつ一気に王のもとまで行く。何かにはばまれたら、そこからは武力行使もいとわずに進む。そして、当日はこないだかぶったフードを使う。だが、俺だけは顔をさらして国に入る。それでいいよな?」


「私がいれば検査することなく国に入れる。リュウヤたちに関しても国の命といえば問題はないだろう」

「それで? このような粗末なものをリュウヤ様たちにつけさせるので?」

「これは仕方ない。ティシュラさんに河原でも簡単に切れるよう調整してもらった縄だ。捕まえたやつを拘束もしないで、手ぶらで入れるわけにはいかないだろうからな」

「リュウヤ様がそういうのであればいいのですが」


 俺としても色々と誤魔化せたらよかったのだが、何せこの世界の道具に関する知識が少なすぎて大雑把な注文しかできなかった。

 すぐに戦闘に入れるようバラエティグッズみたいなものを作ってもらったが、急にしてはベターだと思う。

 丈夫そうな見た目で罪人を捕まえておくにはよさそうな見た目をしているが、その見た目に反し、女子でも簡単に切れるようにできている。

 相変わらずすごい技術力だと驚かされる。


「つまり、王様のところまで行ってエディカちゃんを助けるってことでいいんだよね?」

「そうだな。エルディーの話通りなら、エディカは王様のすぐ近くにいるってことだし、俺たちのことをひっとらえるのも王様からの直接の命令だろ? そうなれば、俺たち全員で近づいて助けるタイミングを作れるはずだ」

「あの王は私に反抗的なことは何もさせないため、いつも近くにエディカを置いていたからな。これで……」


 見せしめという部分もあるのだろうが、何にせよエルディーだって今日まで助けられずに苦しんでいたはずだ。

 時間がかかってしまった分、すぐに解放してあげよう。


 エルディーにはゴブリンから助けてもらっただけじゃなく、今日まで戦闘できるよう育ててもらった恩もできてしまったしな。


「でも、そううまくいくかな? 王様のところに入れるともわからないんでしょ?」

「フェイラの言う通りだ。だが、その場合も行ける場所は限られている。だろ?」


「ああ。あの王のことだ。私がいると知れば意地でも城からは出まい。そうなると潜伏できる場所は限定的だ。地下や厨房の先といった、隠し通路や隠し部屋ということになる訳だが、どれも調べてある。このような日のためにな。守るためという理由をつけて聞き出した」


「わらわにも調べさせたのであるが?」

「感謝している」

「……素直に言われると、照れるのだ」


「デューちゃんも調べたなら大丈夫なんだね。万全だね」

「ああ」


 本当に必要だったのは王のスキをつく、何か、だけだったんだな。

 だが、俺のこの溺愛の権能なら……。


「あとは魔王ですわよ」


 デューチャの言葉にこれまでイケイケムードだった空気が凍りついた。


「そいつは戦う必要はない。遭遇しないのが一番だが、やむを得なく戦うことになったら」

「私が叩く」

「その時はわらわも助力するのだ」


 魔王であるデューチャと地上最強であるエルディーが握手を交わした。

 それほどまでに警戒すべき相手ということだろう。

 だが、これで鬼に金棒だ。


「全てが終われば、全力で逃げるだけだ」

「なに、エディカを助けることに比べたら造作もない」

「俺も全力で全員の逃走の力になるようにする」

「わらわもリュウヤ様たちが安全な生活をできるように強力しますわ」

「あたしもエディカちゃんを安心させたい」

「これが終わればリュウヤもより愛を知れそうだしね」


 装備は整った。全員の意思も固まった。

 拠点には元から死の山にいた組が残り留守を守ってくれる。

 あとはやるだけだ。


「行くぞ!」

「「「「おお!」」」」

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