第14話
「もう一度聞く。その男子高校生たちに連行されて
「何度か殴られて思うように身体が動けませんでした。相手が刃物も突き出して下手に動いたら殺すと脅されました……」
「笠原さんが彼らに性的暴行を加えられている時も何も身動きが取れなかったと?」
「はい……。叫びながらやめるように促しはしましたが、全く歯も立たなかったんです」
「……今日はまず留置場で待機してもらう。逃走中の三人が確保されるまで大人しくしていなさい」
その後、取調室から留置場に移動して個室の居室に入り七十二時間近くは待つように促された。その後、居室での生活が始まると規則に従った時間に起床し、昼食を挟み、夕食と就寝を繰り返していった。
四十八時間が経過した頃、事件現場から六十キロ先の茅ノ
「今、仮容疑を立てている二人の男子高校生が当時山林の中にいた時に、あなたが笠原さんを強姦して被害を加えたと供述している。本当か?」
「それは違います。私は彼らともう一人の二十歳くらいの男から危害を加えられたんです。」
「それともう一人、笠原志帆さんから……あなたから犯されたと話しているんだが……?」
「犯した?」
「現場検証で鑑識官が笠原志保さんの衣服から採取した指紋の中に、あなたの指紋や血痕も検出されているんです。笠原さんは幼馴染みであなたの教え子だった望月紗奈さんへの腹いせで強姦を要求されたと言っているんだ。犯した時に何度も紗奈の名前を呼んでいたと……。きちんと事実を言いなさい」
「違う……!笠原さんは誤解をしている。それに男たちから身を守る為に落としたナイフを拾って彼らに向けたんです。だから、彼女には手を出していない。それは恐らく幻覚です。信じてください……!」
それから質疑応答は続き、話を繰り返し行なわれているうちに刑事からの
就寝後から数時間が経ち私はある夢を見ていた。当時山林で男たちが笠原を犯した後、一人の男が私も彼女を犯すように促し、嫌がりながらも彼女の身体の上に乗るように下半身のズボンを下げ、自分の性器を突きつけている姿が朧げに目に写った。
私は彼女の荒げる声を聞いて紗奈の名前を呼び続けては性感帯が背筋に渡り感じている浮遊感に漂っていた。
「紗奈……紗奈……」
「先生……やめて……っ!」
──その夢が消えた途端、私はすぐに目を開けて起き上がり辺りは暗い居室の中にいる自分だと察知して、冷や汗をかいては呼吸を乱していた。身体を仰向けにして冷たく低い天井を見つめながら再び浅い眠りについていった。
七時、起床時間の合図が鳴り響き起き上がると同時に警察官から取調室に行くように告げられた。
「平潟さん、今回の事件についてですが、婦女暴行未遂の現行犯としてあなたを容疑としてかける事に決行しました。」
「そんな……」
「刑事裁判が始まるまでの間、これから拘置所に身柄を持って行きます。ご同行願いますか?」
「……」
「供述しなさい」
「分かりました……」
それから私は拘置所へ身柄を拘束され、逮捕状を告げられたのち被疑者として約六か月間計三回にわたる刑事裁判に出廷した。逮捕された三人の男の被告人と併せて原告側の笠原とともに尋問を受け、検察官による終局処分を下したのち私は不起訴となった。
しかし、正式裁判が執り行われると、検察官や弁護人が被告人である三人の男たちに対し証拠を提出し、その証拠を法廷で取り調べられたのち、最終弁論の立証が裁判長から言い渡された。
「三人の被告人に対しては、これらの事件に対し拉致被害及び未成年への極めて凶悪かつ不条理な性的犯行とみなした上で、再出廷の日程において最終弁論にて執行猶予付き判決を求める。また被疑者である平潟昌弘氏に対し、当初曖昧な供述をしているところから十分な検証が成立しなかった為不起訴とみなしたが、裁判官の話し合いのもと鑑識の再検証及び両検察官と弁護人の立証から、笠原志保さんへ殺意を持った
全てが嘘だと叫びたかった。
私の中にいるはずの神は姿を隠して
これから私は希望の見えない硬く凍てつくあの場所へ送り出される。その後出廷したのち拘置所に戻り、検察官から刑務所の収監内容を聞き、再び外に出ると報道陣が多数カメラを回してはフラッシュをたき私に対して複数回声を掛けてきた。
──その僅かな隙間からある女性が一人こちらを見ていた。紗奈だった。彼女は私の子であろう生後二ヶ月ほどの赤ん坊を抱いている。水色のニット帽子をかぶっているところから恐らく男児とみた。そうか、二人とも会いにきてくれたのか。護送車に乗る前に目が合った瞬間、彼女は私に向かって手を挙げてきては、手のひらを返して中指を立てて私に反抗心を出してきた。そして彼女はこう呟いていた。
「裏切り者」と──。
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