第13話 謝り倒しデジャブ
◇
「ほーんとにごめんっ! いろいろと考えないといけないのに、軽率でしたっ!」
教室へ戻るなり平謝りする
「いや、別に呼び出しはいつものことだし」
そう言い、気にする必要が無い事を幽玄は告げる。
「それでも、なんかアイツらに隙を与えたというか……」
そんな意味不明な心配を、斑雪は幽玄に対して切実に罪悪感を伝えている。そんな斑雪を見て、幽玄は心の中で笑い転げた。
(そういう解釈もあるのか)
新鮮な視点である。
実際、斑雪は後悔の念からか、一通り心配してから俯き焦っている様子であった。
ここまで来ると、不憫である。
「別に問題はないよ」
そう言い、営業スマイルを展開する。
表情は前髪で読みにくいが、口角が和らぐことで、それを見た斑雪も安心感が生まれた。
「それにしても……」
斑雪は疑問点をぶつけてみる。
「なんであんな路地裏のところで酔いつぶれていたの? 何か犯罪に巻き込まれたのかと思って、見つけた時には焦ったよー」
「いや、塾の帰りだったんだけどな。なんか疲れてたからとか? 帰り際に兄貴迎えに行ったら付き合えって飲まされたのが敗因だよ」
幽玄は思いつく単語を並べ、その場で言い訳を取り繕う。
それに斑雪は納得したのか、「そっかーお兄さんいるんだね。不動くんも色々と大変なんだね」と納得している。
「私にも兄がいるけど、色々と苦労させられているから、滅茶苦茶分かるわ!」
そんな事を言われ手を握られると、ウルウルとした瞳で斑雪から同情される。
別にいいのだが、幽玄はこのクラスメイトの距離感のイカレ具合に、只々呆気に取られてしまった。
元々不良のたまり場的な高校だけあって、女子生徒はそこまで多くない。
少ない女子は皆、学業よりも学生生活を楽しむ方が忙しい。
そんな連中だった。
そんな中、斑雪と言えば、毎日同じ髪型で化粧気は無い。
たまに寝ぐせまで存在するその容姿に不釣合いな制服。
噂では、買うに困って知り合いから譲り受けた為、サイズが違うんだとか。
斑雪の家が貧乏な噂は前々からあったのは、幽玄も知っている。
そして、今朝の事で確定した。
(確かに激貧乏だったな)
感心してしまう程、生活様式が違うのは体験済だ。
袖触れ合うのも何とやら、何故激貧乏なのか不思議になってくる。
幽玄は自分のスマホを取り出すと……メッセージを手早く打ち込み、送信する。
──返答が届くまではそんなに時間はかからなかった。
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