異能さん、いらっしゃい!
りの
第1章
他力本願
他力本願(カッコウ) プロローグ
「アイちゃん」
「はい。
わたしがノートパソコンで仕事をしていると、館の主である
妖艶な
メガネ越しに見たわたしは、この可愛らしさが世の男性達を虜にしているのだろうと改めて思い知る。わたしには手の届かない美しさだ。
でも、
「アイちゃん、今日も順調?」
ウエストはファッションモデルのように細い。住み込みで働いているわたしは
それなのに体型は、わたしの方が太っている。日本女性の平均よりは痩せているかもしれないが、スタイル抜群の
「はい、問題はありません」
「そう。大変だけど頼むわね。アタシはそろそろ仕事の準備するね。今日の予約ってどれくらい?」
「全員で10名です。皆様、最大の2時間のコースでご予約されています」
「まぁ、アタシって人気者ね!」
わたしは返答に困ってしまい「はい」としか言えなかった。
「アイちゃん?」
「はい」
「大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
わたしが動揺してどうする。実際にやるのは
彼女が
「じゃあ、アタシは部屋で待機しているからお客様が来たら、ご案内よろしくね」
「畏まりました。
「何?」
「あの……無理なさらないでくださいね」
わたしは
自分のボキャブラリーの少なさに腹が立つ。主に対してもう少し気の利いたことが言えれば良いのに。
「ありがとう、アタシは大丈夫。もう”五十年”も同じ仕事をしているから。じゃあ、部屋に行くね」
「畏まりました」
ノートパソコンの画面には
「
「おはようございます。
七十代のはずなのに
彼と同年代の老人たちは年齢に甘えて若くしようとする努力を止めている。
それに比べて
白髪のない灰色の髪は思わず色気を感じさせてしまう。メガネを上げ直す姿はとても知的だ。
「おはようございます。今日も良い朝ですね」
声はとても若々しく年齢を感じさせない。
「今日は誰を追っていますか?」
柔らかい物腰で
そのまま別のウェブ画面を立ち上げて
画面上には数十種類のタロットカードをイメージさせる画像が並んでいる。わたしはその中にある一枚の画像をクリックする。
クリックされた画像はゆっくり反転する。
そのカードには五羽以上の茶色の小鳥が住む巣があった。
だが、巣の中心に一羽だけ種類の違う灰色の大きな鳥がいた。茶色の親鳥が小鳥にエサを与えようとするも灰色の鳥が邪魔している。灰色の鳥は茶色の小鳥を押し退けてエサをもらっている。そんな気味の悪い絵が描かれている。
「
わたしが
わたしには彼の姿が童話に現れるずる賢いキツネのように見えた。
そんな
いけない。仕事中なのに思わず興奮してしまった。
こんな恥ずかしいところを
大丈夫かしら。わたしは必死に平静を装うも
「そうですか。
「畏まりました」
「では、今日も仕事を始めましょう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます