サルノイア - 4(了)

 壁穴から排出されたモンキーのクローンは柿の木を目にしました。


 大きく育った柿の木は培養槽を破壊、地に根を張り、天高く――地下都市シェルターの上部を抜けて地上まで生えているようです。

 

 モンキーはサルですから木があれば登りたいわけで、柿の木に興味を持ち、幹に手を触れました。


 そこにトラブルシューターのクローンが壁穴から排出されました。

 彼らは記憶リストアシステムの手違いで気力値ゼロ、何でもかんでも壊す気満々、周囲の培養槽や赤外インフラレッドの市民に殴り掛かりました。周辺は混乱の極みです。


 壁からクラブのクローンが排出されました。これも正気を失っています。怒りに駆られたクラブはモンキーに駆け出しました。


 クラブの鋭いカニの爪に恐れをなしたモンキーは柿の木を伝って地上へ、アウトサイドへと這い出ました。


 そこは放射性降下物フォールアウトの積乱雲、黄色掛かった塵、不気味な雷の世界。モンキーには耐えられない放射線量がありました。


 モンキーは放射線障害にて死亡しました。

 柿の木が空けた穴から高レベル放射性物質が地下に流入し都市も滅亡です。


 数千年後、地上の支配者となった知性ある巨大ゴキブリが地下都市を発見、由来を調べ、この都市を「サルノイア」と名付けました。

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