5月30日 庭に苗を植えながら、反省会

 七歳の従姉妹に酷く怒ってしまった。

 妹と三人で絵の具で遊んでいた。絵を描いて、色を塗って、笑って、色の配合を学んだりして楽しかった。すると間違いからか、絵の具が私の腕に付いた。あぁ、まあよしとするか、と笑うと、もう一筆。今度はわざと。七歳児の一筆。五歳児も真似をして一筆。いち、に、さん、いち、に、さん、むげんにつづき、笑えなくなっていく。

「やめて」

「やめて!」

「本当にやめて」

 何度言っても止まらなくなっていく。(子どもである。やりたい気持ちもわかる。子どもである。子どもである。子どもである)

「本当にやめてほしい」と再度伝えると、腕にまた絵の具が付いた。妹の筆を取り上げ、同じように腕に塗る。するとぐわぁっと泣きじゃくってしまった。「私も同じようにされて嫌だったから本当にやめてほしい」と伝え、二人をほっとき、絵に戻る。

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 七歳児は別の遊びを考案する。

「本で叩き合う」

という遊びである。

 しょっぱなから叩かれたので、遊び心のある人がするであろうことをする。軽く、叩き返すのである。それがまずかった。エスカートにエスカートを重ね、また私は「やめて」と繰り返した。絵の具とは違い、本は痛い。人が嫌がっていることはしてはいけないし、辞めてと言っていたらなおの事である。子どものやることであっても、限度というものがある。私は菩薩ではない。

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 ここまで書いたんだけど、私は自分への扱いが最悪でもいいのである。それ以上にその子たちを傷付けたくない。きっと怒る私に驚いてしまったと思う。心底どうすればいいのかわからなかった。やめてという以外に方法はある?

 暴力には頼りたくない。感情に任せて泣いて喚いたら七歳児に「泣き虫!」って笑われるのもわかっていた。そばにいた幼馴染のおばあちゃんに頼ったら「告げ口や!」やらなんやら言われるし、残る道は防御のみであった。それはある程度成功したものの、私の胸に湧き上がった怒りを発散させるには無意味であった。

 ここまで怒ったのは久しぶりで、人のたくさんいる場所で泣いてしまったので申し訳ない。母が「泣き出すと周りの人が驚く」のでやめてほしい的なことを言っていたので悲しんだ。驚いているのは彼女だ。いつだってそうだ。パニックを起こすと私以上に母の方が驚いてしまう。私自身は何が原因で、どう治めればいいのかわかっている。なので時間と落ち着くための環境が必要なのである。

 それだけ。

 それだけなんだ。

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