第33話 取り立て


部下の鈴木から依頼を受け、今日は『取り立て』の手伝いをしについていく事になった。


「どうして俺が必要なんですか?」


「それが、相手が組関係で…揉めていまして…」


「だけど、鈴木さんは、そう言うのに慣れているんでしょう?」


「確かにそうなんですが、結構質が悪いんですよ」


「どんな風に質が悪いんですか?」


鈴木さんの話だと『鬼の政五郎』という名前の武闘派ヤクザだそうだ。


普通なら上の者と話し圧力をかけるらしいのだが、この政五郎、組の為に何回も懲役になった過去がある為に組長も強く出られないのだそうだ。


「それで政五郎さんに危害を加えて組が出てくる可能性は?」


「それはありません…悪いのは向こうですから、ただ手を貸して貰えない…それだけです。政五郎に何をしても、組は出てきません」


それなら、相手は政五郎1人だけか?


何処から攻める…その前に…


「政五郎さんはお金はあるの?」


「それは間違いなくあります。組から慰労金を沢山貰っているみたいですから」


「そうですか…」


武闘派ヤクザか…仕方ない。


◆◆◆


「なんだ、またお前来たのか? そのうち返すから待っとけ! そう言った筈だぜ!」


わざと脅しの為に入れ墨を見せているな…


ヤクザの上等手段だ。


一軒家で…なんだ家の奥に奥さんと子供が居るのか?


「無いなら考えますが、政五郎さん、貴方お金はある筈ですよ、組から聞きましたから…払って下さいよ」


「無いと言えば無い!お前、儂が嘘をついているとでも…うがぁぁぁぁーー」


俺は話に夢中になっている政五郎の後頭部をカイザーナックルで殴った。


痛がる政五郎に、すかさず持参した手錠を後ろ手に掛け転がす。


「貴様、儂にこんな事して無料で済むと思っているのか…金はもう絶対にむぐうう」


腹が立つからガムテープで口を塞いだ。


「金、払いたく無いんだよな? 良いよ…良いもん見つけたから」


そう言うと俺は奥の部屋に行き、娘を無理やり引っ張ってきた。


「娘、娘だけは、勘弁して下さいーーーっ」


奥さん煩いよ。


「しょうがないじゃん、アンタの旦那が金を踏み倒すんだから」


「ふんふんうううがぁぁぁ」


「いやぁいやぁぁぁぁぁ、お母さん助けてーーーっ」


「ハハハ、なに言ってるのか解らない…あのさぁチャイルドポルノって知っている?このご時世手に入らないから凄く高く売れるんだぜ!『ロリータ絶叫50人に犯される』こんなタイトル作ったら売れると思わない?おっさん、何で泣いているの?」


「ふんふんうぐうぐっ」


「良かったなおっさん、この子を手放すだけで…借金チャラ、凄くラッキーじゃない…鈴木さん、借金の方にこのガキ貰って行こう…それでチャラで良いんじゃない…ガキを抱きたい変態は沢山いるから、朝から晩まで抱かせればDVDと併せて数年で回収できる」


「私が、私が行きます…だから娘は勘弁して下さい…お願いします」


「おばさんじゃ金稼げないでしょう? ガキだから価値があるんだよ…そんな回収に時間は掛けられないんだ悪いな…だけど、そうだ少しチャンスをあげるよ…前に聞いたんだけど、こういう場合はヤクザなら指1本100万で責任を取るらしいからおばさんが指を詰めた分だけ借金から引いてあげる…何本行く?」


「ああっ、そんな…」


「取り敢えず、サービスだ…そら」


俺は人差し指を掴みへしおった。


「うわぁぁぁぁぁ痛いっ痛いっああああっ」


「お母さん、お母さん…」


「これは凄いサービスなんだよ…本来は切断で100万円引き…2本目からは切断だ…その目なに?これは全部お前の旦那が悪い、返せるのに返さないから悪いんだ」


「あんたは鬼だ、鬼だよ…」


「そうかもね…だが俺の彼女は手足が無い…理不尽に奪われたんだよ…指で済むならついていると思うよ? あんた達は理不尽じゃない…借りた物を、暴力で踏み倒そうとしたんだから」


「そうだ…一応聞いてやるか? 政五郎さん、奥さんの指と娘の体で返済で良いかな…」


俺はガムテープをはがした。


「や、やめてくれ…儂が悪かった…隣の部屋の押し入れの奥に金ならある…」


「そう…鈴木さん確かめてきて…」


鈴木さんはすぐに見に行った。


「ありました…」


「ハァハァ、これで良いだろう? お前覚えておけよ、何時か復讐してやる、殺してやる」


「馬鹿だな…その状態で、そんな事いうんだ…じゃぁ怖いから殺しておくね…」


俺はナイフを出し滅多刺しにした。


「やややめろーーっああああああーーぎゅあああああーー」


死んだな…


「貴方、貴方貴方―――っ」


「お父さんーーーん」


此奴らも殺すか?


殺した方が後の事を考えたら良いよな…


だが、少し可哀そうだ…


「なぁどうする…今見た事を忘れて街から出ていくなら命を取らない…」


「煩い黙れーーーっこの鬼が! 子供の前で…えっ…あがっ」


俺は同じく政五郎の妻を滅多刺しにした。


「あんた馬鹿だよ…子供の事考え無いんだな、ただ口外しないで街から出ていくだけで『子供の命は守れた』のに…逆上してそのチャンスを捨てたんだから…お前のせいで子供も死ぬんだぞ」


此処まで来たら仕方がない。


「いや….お母さんーーーお母さん」


「ゴメンね…」


そう言いながら首を狙いかき切った。


「ああっあああーーーっ」


政五郎1人を殺すだけで終わりにしたかったのにこれだ。


世の中上手くいかない。


武闘派ヤクザを相手にするんだ、恨まれる事を考えたら殺すしかない。


そうしないと寝首をかかれる。


奥さんと子供は殺したくはなかったのに…


殺した方が安全なのは確かだが、したく無かったな。


俺はスマホで神代に電話した。


「どうかしたのかい?泰明」


「借金の回収の為に3人殺した…処理を頼む」


「解った、すぐに処理班を向かわせる」


俺が現行犯じゃなくちゃ捕まらない理由の一つにこの処理班の存在がある。


きっと死体の処理から隠ぺいまで全部やるプロなのだろう…


「それじゃ、鈴木さん帰ろうか? 無事お金が回収出来て良かったね」


「は、はい」


顔が青いぞ…鈴木。


◆◆◆


鈴木の運転する車の助手席に座っている。


たかが殺しの現場を見た位で顔を青くするなよな…


「わ、私は…」


「うん? どうした?」


「私は、絶対に泰明係長に逆らいません…」


訳が解らない。


「そう、なら良かった…少し疲れたから寝るわ…会社についたら起こして」


「はい」


まぁ従順になってくれるなら都合は良いな。



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