第32話 楽しい職場


「行ってきます」


まだ寝ている、二人に小声で挨拶をして会社に向かおうとしたが…


「泰明様迎えに参りました」


玄関から出た所で、声を掛けられた。


「リムジン?」


「はははっ、これ位は当たり前です…これ私の名刺です、タクシー代わりに何時でもお呼び下さい…私は本郷、泰明様専属の運転手でございます」


「運転手? 昨日は電車で行ったんだけど…」


「まぁ、初日なので立地等を知って頂く為でございます」


本郷の運転する車に乗り、会社へと向かった。


「凄いな…」


「此処が地下1階…役員専門の入場口でございます…神代グループの人間でも此処から入れる人間は僅かでございます」


入口は大理石で作られ…絨毯は綺麗な模様が入りフカフカしている。


「凄いとしか言えませんね」


「あの絨毯はペルシャ絨毯…おおよそ10億円の品という噂です…では私は此処まででございます…行ってらっしゃいませ」


本郷に見送られながら…俺はビルに入っていった。


昨日とは違い…エレベーターにはエレベーターガールが居た。


「38階でお願い致します」


「38階でございますね」


昨日も凄いと思ったが…何もかもが違う。


何よりこんな大きなエレベーターなのに使っているのは俺だけだ。


◆◆◆


「遅いぞ!新人」


着いたと同時に白髪にサングラスの中肉中背の男に文句を言われた。


15分前で遅刻はしてない筈だ。


「遅刻はしてないと思うのですが…」

「新人は一番早く来るもんだ」


「あのね…此処は普通の会社じゃないの…上下関係は大切なのよ」


「新人の癖に文句を言うな…」


「ちゃんとしないと助けてやらないぞ…死んじゃうからな」


この人達が上司と同僚なのか?


男3人に女1人…


この人達が昨日聞いた4人か…


「遅れて済まないね、泰明…おや今日は皆来ているね…」


「「「「おはようございます! 神代様」」」」



「新人、頭を下げろ…90度だ」


「泰明は良いんだ...本当は泰明、食事でも行きたいんだが、この後、腹が立つことに大臣と会談なんだ…それじゃ紹介してやろう…そこの生意気そうな男がリチャード、総合企画部の部長だ。解っていると思うが、この部署は、汚れ仕事専門…暴力団や半グレ等との交渉や

会社のスキャンダルの問題の解決をするのが仕事だ…そこの女はリチャードの愛人で元グラビアアイドルのマリア、ダイナマイトボインという名前で写真集を出していた…まぁ仕事には関係ないな、鈴木は金融関係が得意で 佐藤が地上げが得意だ…まぁそんな感じだ…泣きついてきたら助けてやってくれ…」


「助けてやってくれ…こんなガキに? 何を助けて貰うと言うのですか?」


「「…」」


どうやら歓迎されて無いのか?


まぁ当たり前か…


「ハハハッ半端者の君たちが…泰明にマウントでも取りたいのかい? はっきり言おう泰明は駆け出しだが『殺人鬼』だ…既にスポンサー契約もしている『商品』でもある…そしてこれからは君たちの救助役だ…今迄君たちの尻ぬぐいをしていた神9の代わりに入って貰った…死にたくないなら君達が媚を売る事だ…彼は自由に仕事を選べる立場にある、見捨てるも助けるも泰明しだいだ」


「本気ですか」


「リチャード…はははっ彼は、イナダヒメやサクヤヒメと仲が良い、二人を怒らせて、殺されても知らないぞ」


「神9…」


「ラビットファング…そう言えばリチャードなら解るんじゃないかな?」


「散弾銃殺し…」


「それじゃ泰明、また今度…では」


こんなアウェーで働くのか…


うん? マリアが愛人なら1人足りないんじゃないか?


まぁ良いや。


◆◆◆


「あはははっ、困ったら頼りにしているから…寛いでいて良いよ…なんだかゴメンな…」


「泰明様…コーヒーでも入れましょうか?」


「「僕たち考えたら平だったわ…係長頼りにしています…失礼」」


なんだかな…


逞しいな。






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