第21話 小さな罠


失敗した。


勝者の部屋というだけあって凄く豪華だ。


大きなベッドにソファ…大型テレビまである。


簡単に言うなら豪華なラブホに近い。


しかも、ルームサービスも沢山メニューがあり、性的相手をする女まで呼べるようだ。


だが、肝心な物がない。


あの会場にあった。


戦いを見られるモニターは無い。


運営側に部屋に設置してあるインターホンから連絡をしてみると神代が出た。


「他の大会出場者の戦いをみたいんですが…」


「くくくっ、やはりそうか? いや、面白そうだから俺が態々でたんだが、泰明、君はもう1つミスをしたんだ」


ミス、俺が…


「何が言いたい?」


「いいか、君はこちら運営側がわざと用意した、ミスにつけ込んだつもりだろうが…もう一つの罠にまんまとはまってしまったな」


「罠?」


「いいかい、種明かししよう!なんで1人以上なのか別室待機が任意なのか考えるべきだったな、つまり予選は『敵の戦い方』を知るチャンスだったんだよ。1人殺した後もその場に残り他の出場者の戦い方を学ぶべきだった…それなのに君は残らなかった。『よーいドン』は運営側が用意した罠だ…その証拠にあの中には頭脳が優秀な者も居たが君だけだ…あれを指摘すれば目立つし、そこで安心して別室待機を選ぶ…その結果、情報を得ず本選に進む事になる…貴重な対戦者の情報は、恐怖に負けずその場に残った人間だけが得られる情報だ」


「普通の競技なら、モニターとかで中継されるだろう…」


「普通でないのがこの大会なのだよ」


「そうか…」


今更後悔しても仕方がない。


此方も手札は1枚も切っていない…


今の俺に出来る事は…本選に備え、体を休めるだけだ。

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