第11話 第一部完結 ウサギを卒業した日

「おめでとう!泰明くんに陽子くん!ハンター側が2人とも死んでしまったので君たちの勝利だ! まだゲームは続いているとか考えなくて良い!今の時点でゲームは終了、君たちは勝者だ!」


「神代…」


神代が女を2人連れて現れた。


「嫌、いやぁぁぁぁぁーー」


俺は兎も角、陽子は真っ裸だ。


まぁ、悲鳴位はあげるよな…


「悪い、ツクヨミ陽子くんに服をあげてくれ」


「ハッ」


この女、得体が知れない。


確実にKやSより強い。


目が合った瞬間、体が震えだす。


「お前、この段階でこちら側の人間になっているのか?なかなか…」


「ツクヨミ…」


「ハッ、申し訳ございません!」


「まぁ良い…それではまず、陽子くんから表彰だ、無事逃げ切った君には…この『狐』バッジをあげよう…弱者のウサギではなく、頭脳を使い逃げ切った者に本来は与える物だ! 本来は君には相応しく無いが、運も実力のうちと考え与える事にした、ルールはルール、受け取りたまえ」


「はい?」

「副賞は約束通り『今迄の生活が嘘のような生活』をプレゼントだ、ほら受け取れ」


そう言うと神代は陽子にバッジを放り投げた。


「あの…これは」


「君との話は終わりだ…アマテラス送っていきなさい…そうそう、此処でのことは内緒だよ!話したら今迄とは比べ物にならない地獄が待っているからね! 尤も、これから後の幸せな暮らしを考えたらもう話す気も起きないだろうが…さぁ生きたまえ」


「あの…最後に泰明さんにお礼を言わせて貰って良いですか?」


「ああっ構わないが」


「その…ありがとう チュッ…多分もうあわないというから」


「ああっ」


いきなりキスをするとそのまま行ってしまった。


俺はかなり酷い事をしたんだけど…まぁ良いか。


◆◆◆


「さぁ、泰明くん!君の方だが…勝利の狼バッジだ!」


そう言うと神代は俺の方にバッジを放り投げてきた。


陽子のバッジは只の缶バッジだったが俺のバッジは明らかに豪華な物だった。


「約束の『今迄の生活が嘘のような生活』だが、そのバッジを貰った者は更に少し違う」


なんだか嫌な感じがする。


「何が違うのですか…」


「そのバッジは形だけのものだが、本当の意味での安息が約束される…もう警察に捕まる事はない…政治家を殺そうが上場企業の社長を殺そうが、現行犯以外じゃ無罪になる…日本限定だが夢の特典だ」


なんだ、それ…超法規的な話がでたぞ。


「なんだ…」


「どうだ、素晴らしいだろう! 大嫌いな奴は殺し放題! 好きな女も弄び自由にして訴えられたら殺せば良いんだ! まさに夢のパスポートだ…殺人ライセンスを超える、悪魔のパスポートその物だ…」



「これ、欲しくないのですが」


「おや、君は既に人を殺しているだろう? それも無罪になるんだ!嬉しいだろう」


バレているのか…


「両親以外の4人の遺体もこちらで見つけたよ…勿論、かたをつけて置いたから安心してくれたまえ! どうだい、それでもその権利を手放すのかい?」


そうか…俺はもう死ななくても良いんだ…


「ありがとうございます…それだけですか…」


「いや、それだけじゃない! 君は凄い人気者だ! たった1回の戦い、それもウサギ側だったのにスポンサーがついた、これから沢山のお金や品物を貰えるよ、良かったね」


「はぁ…」


「ほら、挨拶がしたいそうだ」


そう言ってタブレットを神代が渡してきた。


『おう~未来泰明くん初めまして…キング&ノーブルニートクラブの代表立花だ…僕たちは君を気に入ったんでスポンサーになる事にしたんだ』


画面には仮面をかぶった大樹を超えるオタクに見えるデブが映っていた。

「はぁ…」


『緊張する事はないぞ! 我々は君のファンであり仲間だ…そうだ、君はAV女優で好きな子は居るかい?』


「アダルトDVDの話ですか?」


『そうだよ、若いんだから抜いているDVD位あるだろう?』


「自分の部屋が無いから見た事無いですが、天使明日香が好みといえば好みですね」


『そうかい、そうかい…なかなか趣味が良いね…それじゃね泰明くん』


そう言うと一方的にオンライン通話は切れた。


「それじゃ名残惜しいが、今はお別れだ…またね泰明くん!」


そう言うと神代は去っていった。


「それじゃ、お送りします」


そう言われて俺は車に乗った。


『またね』


それが頭に響いた。


まぁ良いや…疲れた。


今は眠らせて貰おう。


うたた寝した俺を載せて車は走り出した。


第一部 ウサギ編 完


※閑話が2~4話書きまして、そこから少し休んで第二部がスタートします。


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