第8話 神代SIDE スタールーキー
「ほう、珍しい事もある物だ、珍しくウサギが勝った…しかも逃げるのではなく『戦って勝った』珍しい事もあるものだな」
「神代様、ですがKは、戦闘力に置いては只の女…正面から戦えば負ける事もあるでしょう。自分の力を過信した者の末路です」
「ツクヨミ…お前にはこの異常さは理解できないな」
ツクヨミは生まれながらの強者。
だから、この異常さが解らない。
自殺を考えるような人間の多くは『手をあげらえれない』から追い詰められる。
つまり、喧嘩1つ出来ないから虐められ追い詰められる。
だが、あの泰明はなんだ。
山にあるカメラやKのカメラ越しに見た、彼奴は…ウサギじゃない。
冷静に罠に対処しながら進んでいき…K相手にも、頭脳戦を仕掛けていた。
自分は無力で力が無く楽に死にたい、ていを装って接近。
後は拳の滅多打ちだ。
「なぁ、お前等、神9は別だ、太腿にメスを刺されても、スタンガンを使われても、そのまま無視して殴り続けられるものだろうか?」
「それなりの人間なら…」
「それなりの人間なら可笑しくない。だが、それは『狩る側』の人間ならだ…だが彼奴はウサギ側の人間狩られる立場だ…それが、その攻撃を無視して殴り続けた。歯が飛び散り、見た感じでは眼底も砕け、鼻が折れてもな…あれは狩る側の人間でも『惨い』と感じる人間もいるのではないかね?」
「確かに慈悲深いアマテラス辺りなら目を背けるかも知れません」
「よいか? ツクヨミ、お前は強者だから解らないだろうが、普通の弱い人間にはあれは出来ない…もし暴力的な人間であっても歯が飛び散る程の暴力、鼻が折れてからも殴る事はヤクザでも出来ない人間が多い…そして命乞いしている人間の頭を石で潰すなど、そうそう出来んよ」
「確かに…」
「それで、今回は少し趣向を変えようと思う」
「趣向を?」
俺はゲームに公平性を求めている。
だからGPSもつけていない。
そしてルール通り勝者には約束通りの物を与えている。
これは崩してはいけない。
これを崩した時、本来のゲームとはかけ離れた物になる。
俺はこのルールを曲げたことは無かった。
だが、今回俺はそれを曲げても見てみたくなった。
死んでしまった姉さん。
俺を恐怖で縛り…美しくも残酷だった姉さん。
神9ですら『完成品には程遠い』
そう言っていた姉さんの言葉『本物は弱者から生まれる』
その片鱗を泰明に見た気がする。
「ツクヨミ…君は軽蔑するかも知れないが、Sを泰明にぶつける」
「神代様、それは神代様のゲームに反するのではないですか? このツクヨミ神代様がルールを捻じ曲げたのを見た事がありません」
「その通りだ!これは本来絶対にやってはいけない事だ!もう勝利が半分確定した人間に対して酷い仕打ちだ…だが、それでも俺は見てみたいんだ」
「解りました…ですがルールを捻じ曲げるのは良くありません…もし泰明がSと戦い負けが確定した時は私が間に入り止める…それで如何でしょうか?」
「いや、それではあの人間の本当の力が見えない、悪いがそれも止めて欲しい」
「構いませんが、それでは神代様のポリシーに反するのでは?」
「その通りだ!だが、もし泰明が俺の思っているような人材なら、勝った時にはKやSに渡すはずだった権利を渡すつもりだ」
「そこ迄、たかがウサギに」
「それは解らない」
だが、彼奴は少し、いやかなり可笑しい。
『もし、僕達が逃げるだけじゃなく、ハンターを返り討ちにしたら、どうなるんですか?』
恐怖も感じず…自分から条件を付けてきた奴は今まで居なかった。
俺は…
『あははははっ…それは絶対にないな!だけどもし、そんな番狂わせが起こせたなら、そうだ…お金では絶対に買えない非売品の物をやるよ…ちゃんと話をしないで聞いていた、お前だけの特典だ!』
なんて事は無い。
あの時から俺は此奴が何かやるんじゃないか?
そう期待していたんだな。
じゃ無ければ『絶対にない』褒賞の約束など答えない。
彼奴こそが俺が待ち望んだ『スタールーキー』なのかも知れない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます